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2015年6月12日

『完全版 山口百恵は菩薩である』買ったよ

 序文 酔狂な価格
 平岡正明は山口百恵を〈菩薩〉であると言う。かつて〈大菩薩峠〉が大衆のアナーキーな殺気をはらんだ脱欧入亜の斜坑であったとすれば、〈少女菩薩歌手〉の背後に見え隠れするものは、新たな講談社の編集者と四方田犬彦との包囲線の中に組織された押しの強さと4320円という強気な価格である。異論を持つ者にこそ、彼の一冊は有効だ。この酔狂な価格。

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 山口百恵,そして歌謡曲の終焉を語ろうとすると,この本は避けて通れない。平岡正明著の『山口百恵は菩薩である』だ。その『山口百恵は菩薩である』が,四方田犬彦氏編集による完全版として復刊した。

 1979年10月の平岡正明の原著出版当時,山口百恵は「第5回百恵ちゃんまつり(ライブ盤未発売)」でクレオパトラを演じ,大スターの雰囲気をまといつつある時期であり,この本はインパクトのある装丁もあってかなり話題になったが,アクが濃すぎたのか一般人にはあまり売れなかったと記憶している。

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 原著である『山口百恵は菩薩である』と,山口百恵が引退を発表した後に追加出版された『菩薩のリタイア』,そして引退後の1983年にそれらをまとめて文庫本化した『文庫版 山口百恵は菩薩である』がある。本書は,1983年以降に平岡正明が山口百恵について書いた文章や対談を,四方田犬彦氏が編集して収め,完全版としたものだ。
 私の手元にある本でいうと,『歌謡曲見えたっ』『大歌謡論』『歌の情勢はすばらしい』『美空ひばりの芸術』『女優山口百恵』あたりの本の一部が追記されている可能性がある。

 とはいえ,大ざっぱには,巻末8ページの「解説 歴史を歌う稀有な作業」という四方田犬彦氏の解説文が文庫版『山口百恵は菩薩である』にプラスされているだけとも言える。それで価格は4320円。原著や文庫版の古本価格がAmazonでも高騰していたから,かなり強気な値付けをしたのだろう。

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 多少は迷ったけど,買ったよ,私は。

 原著の表紙イラストが小乗仏教的なら,完全版は大乗仏教的か。篠山紀信は写真の使用にOKを出したのに,ホリプロが写真の使用を認めなかったため,原著では各所にイラストが使われていて,それがなかなか印象的だったのだが,本書の底本は文庫版であるため,それらのイラストはない。原著の強烈なインパクトが薄れており残念だ。

 平岡正明は1979年に本著の中で,“空間的に,美空ひばり以上に山口百恵が上回るだろう可能性は,彼女が大陸中国にも現れるだろうという予測の中にある”と予言のようなことを書いた。
 1980年に百恵が引退し,その後,中国でドラマ「赤いシリーズ」が大人気になり,今でも山口百恵は中国や東南アジアで人気があるという。中国を代表する女優コン・リーは,幼い頃「山口百恵に似ているから女優になりなさい」と周りから言われたため女優を目指したという。

 奇才平岡正明の妄想力,恐るべし。

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山口百恵」カテゴリの記事

コメント

「美空ひばり以上に山口百恵が上回るだろう可能性は,彼女が大陸中国にも現れるだろうという予測の中にある」
この予言はすごいですね。実際美空ひばりは大陸では未だに知名度が上がらず、山口百恵の人気は未だに不滅です。

投稿: タカ | 2015年9月 6日 23時45分

 平岡正明氏は語り口が独特なので嫌う人も多いですが,普通は見えない何かが見えていた人だったと思います。

 山口百恵に関する知識の総量において,たぶん日本全体よりも中国のほうが大きいですね。

投稿: 三日画師 | 2015年9月 9日 08時04分

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