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2015年4月 4日

特急スーパー白鳥が発煙により青函トンネル内で停止

 青函トンネルで緊急停止 特急から煙 乗客124人、地上避難(2015年4月3日 北海道新聞)

 3日午後5時15分ごろ、渡島管内知内町と本州をつなぐ青函トンネル(全長53・85キロ)内で、函館発新青森行き特急スーパー白鳥34号(6両編成、乗客124人)の車掌が異臭を感じた後、窓の外で火花が飛んでいるのを見つけ、列車をトンネル内で緊急停車させた。車外に出た運転士が2両目床下のモーター付近から煙が出ているのを発見し、消火作業を行った。JR北海道によると、モーターの配線が焦げたのが原因としている。乗客は約1キロ離れた避難用の旧竜飛海底駅から青森県側の地上へ避難した。乗客2人が体調不良を訴え、病院に搬送された。
(中略)
 列車は、トンネル内にある2カ所の緊急避難駅のうち青森側にある旧竜飛海底駅から、青森方面へ1・2キロ進んだ地点で停車。車掌が非常ブレーキをかけた。運転士が消火器で消火作業を行い、約15分後に煙が収まったのを確認した。その間、車掌は乗客を最後尾の車両へ移動させた。

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〔津軽線蟹田駅の789系特急「スーパー白鳥」(2006年8月撮影)〕

 あわや大惨事となるところだった。
 2011年5月27日にJR石勝線の第1ニニウトンネル内で緊急停止し,車体が大きく歪むほどに焼け落ちた特急「スーパーおおぞら14号」のように車体が燃えて大量に発煙してしまったとしたら,トンネル内を約2.4kmも乗客が誘導路を緊急避難駅まで歩いた今回の避難方法では大惨事になっていた可能性があった。消火作業と運の良さもあって,今回は火災が大きくなることはなかったが,今回の緊急停止が正しかったのか,トンネル内を北海道新幹線が通ることになる今後も同じ手順で問題ないのか等,慎重に検討する必要があると考える。

 気になるのは,列車が青函トンネル内に設置された避難・消火の拠点である「竜飛定点」を約1.2kmも通りすぎていたことである。

 1972年に北陸本線の急行「きたぐに」が火災を起こし,北陸トンネル内で緊急停止したことによって脱出が困難となり,多くの死傷者が発生するという大惨事があった。それを教訓にして,長いトンネル内で列車に火災が発生した場合はトンネル内部で緊急停車しないようにマニュアルが改められている。

 実際に,JR北海道が平成23年9月16日に作成した「トンネル内における列車火災時の処置手順(抜粋)」には,“トンネル内走行中に火災を発見、又は通報を受けた場合は、火勢、部位にかかわらず運転を継続し、トンネル、橋梁等を避けて安全な箇所に停止すること”という記載がある。トンネル内で停止しないことが基本である。

 もちろん,今回事故があった青函トンネルは全長が53.9kmもあり,通常の規則をそのまま適用するには無理がある。竜飛定点(旧竜飛海底駅)と吉岡定点(旧吉岡海底駅)に緊急時の避難・消火設備が設置され,トンネル内での緊急停止が可能になっている。今回はそのうち竜飛定点が避難に使用された。

 ところが,どうやら今回,モーターの配線で発生した煙・発火は,トンネル内に設置されていた青函トンネル列車火災検知装置*¹が作動せず,緊急停止すべき竜飛定点を1.2km通りすぎた地点で車掌が列車を停止したようなのだ。

 青函トンネルの全長は53.9kmもあるが,竜飛定点の次の津軽今別駅までは19.5kmである。竜飛定点を1.2kmほど通りすぎた地点から津軽今別駅までは18.3kmとなる。つまり,青函トンネル内では例外的な運用があるとは言え,『長いトンネル内では運転を継続し,トンネル内で停止しない』のが,急行「きたぐに」事故を教訓にして作成された列車火災時の処置手順の基本中の基本である。53.9kmではなく19.5kmのトンネルに1.2kmほど入り込んだ状態で緊急停止した判断は正しかったのだろうか。

 列車の運転を継続し,青函トンネルを抜けて18.3km先にある津軽今別駅まで走行した上で避難するのと,トンネル内に消火設備のない竜飛定点から1.2kmほどの地点で緊急停止し,乗客が列車から降りて約1.2kmの竜飛定点までの誘導路を引き返すことを天秤に掛ける必要があるのではないだろうか。

 これは専門家が慎重に考える必要があるだろう。しかし私の素人考えでは,津軽今別駅までの走行時間はゆっくり走って15分程度,最高速度の140km/hで走行すれば8分程度だ。プラットフォームのないトンネル内で乗客124人全員が列車を降りて約1.2km歩くには少なくとも30分は掛かることを考えれば,津軽今別駅まで運転を継続するのが正しい選択だったのではないかと感じる。地上出口までを往復するケーブルカー「青函トンネル竜飛斜坑線」の定員が20人だったため(もともとトンネル工事時の作業員・物資運搬用だからしかたがない),全員の避難が完了するのに5時間半も掛かったことを考慮するとなおさらである。

 2011年の石勝線の事故で列車が緊急停止したのは,第1ニニウトンネルという長さが700mというやや短いトンネルで,乗客がなんとか避難することができた。それを抜けるとすぐに長大トンネルに入る寸前だった。また今回の青函トンネルでの事故は運良く火災が大きく広がることがなかった。
 どちらの事故も,JR北海道としては運良く大惨事を免れたと言える。ハインリッヒの法則などで言われるような,軽微な事故の積み重ねの上に発生する大惨事が起きないように,事故の分析・対策を徹底的に行っていただくことをJR北海道に期待したい。

*1 青函トンネル列車火災検知装置(独立行政法人 鉄道建設・運輸施設整備支援機構のサイト

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〔青函トンネルの青森側出口にある津軽海峡線の津軽今別駅〕

060814122043
〔津軽海峡線の津軽今別駅と津軽線津軽二股駅を結ぶ階段〕

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