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2012年9月の12件の記事

2012年9月30日

名古屋駅前の象徴「大名古屋ビルヂング」が閉館

 大名古屋ビルヂング:「ヂ」の文字、半世紀…30日に閉館(2012年09月29日 毎日新聞)

 名古屋駅前のランドマークとして半世紀の歴史を歩んだ「大名古屋ビルヂング」(名古屋市中村区)が、老朽化のため30日に閉館する。高度経済成長とともに時を刻み、時代がかった名称を掲げた屋上の看板は多くの市民や観光客に親しまれてきた。15年秋に高層ビルに生まれ変わる予定だが、市民らから「名称を残してほしい」との声が寄せられている。

大名古屋ビルヂング
[名古屋駅前の大名古屋ビルヂング(2010年1月3日撮影)]

大名古屋ビルヂング
[大名古屋ビルヂング屋上の2代目球体広告はコカコーラ社(2007年1月1日撮影)]
 奥にはライトアップされた名古屋テレビ塔が見える。

 名古屋の駅ビルが巨大化してJRセントラルタワーズになろうが,名古屋駅前のシンボルはやっぱり「大名古屋ビルヂング」だった。東京の丸ビルみたいなもんだ。
 その大名古屋ビルヂングが30日に閉館し,2015年に高層ビルに生まれ変わることになった。なんとなく寂しい。名古屋に行くたびに撮影していたけど,でも,一度気合いを入れて撮っておきたかった。残念。

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2012年9月27日

秩父鉄道パレオエクスプレス復旧は来年3月か

 秩父鉄道8月脱線事故のSL 整備に半年(2012年09月24日 朝日新聞)

 8月に脱線事故を起こした秩父鉄道(本社・熊谷市)のSL「パレオエクスプレス」が、年内に運行再開できないことになった。事故後、電気機関車が客車を引く特別列車を運行させているが、秋の行楽シーズンを控え、秩父観光への影響も出そうだ。
 秩父鉄道によると、蒸気機関車各部の点検整備と組み立てに半年程度かかるため、来年3月下旬の運行再開を目指す。

パレオエクスプレス C58復活25周年
[C58機関車が牽くパレオエクスプレス]

 熊谷市大麻生の秩父鉄道広瀬川原熊谷工場で起きた脱線事故は,ポイントを切り替える際の係員の確認不足が原因とか。これは残念。
 SLの修理はJR大宮総合車両センターに依頼するが,別のSLの修理が先に決まっていたため,パレオエクスプレスの修理をすぐに行うことは困難で,今年の秋の行楽シーズンには間に合わないようだ。

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京急線脱線,車両搬出に難航して復旧未定

 京急脱線、損傷激しく車両搬出難航…復旧は未定(2012年9月26日 読売新聞)

 神奈川県横須賀市で24日深夜に起きた京急線の特急電車脱線事故で、運転を見合わせている金沢八景―逸見駅間は26日も終日不通が続いた。

 車輪の台車が客車から外れるなど脱線車両の損傷が激しく、トンネル内での搬出作業が難航しているため。京浜急行電鉄は、復旧は未定としている。

 同社などによると、トンネル内で脱線した3両目までの車両のうち、26日午前10時過ぎに3両目が、その8時間後の午後6時過ぎに2両目がそれぞれ搬出された。残る1両目は、線路から約1・5メートル外れているなどほかの車両より撤去が難しく、27日未明も作業が続けられた。

京急田浦駅から追浜駅方を見る
[事故のあった京急田浦〜追浜間のトンネルは,田浦駅に近い]

 京急線が金沢八景駅を出て横須賀市の追浜駅を過ぎると,線路は海岸近くまで三浦丘陵の崖が迫る縁を縫うように走り始める。トンネルも多くなる。三浦丘陵の崖の多くは住宅地になっているため,傾斜のある住宅地の中を,トンネルで電車が抜ける光景は,京急線ならではの車窓だと思う。

 事故のNHKのニュースは事故現場が,大雨時の速度規制区間になっておらず,通常と同じ75km/hで土砂に突っ込んだことに問題を見出そうとしているように見えた。

 事故の全貌は後々にわかってくるだろうが,推測だけでいえば,京急線がすべての編成で先頭車両と最後尾に重量のあるモーター付き車両を配置していること(京急線のポリシー)が,今回の事故では車両の横転を免れるなどの功を奏しているように思われる。下手をして,先頭車両が脱線して横転,トンネルポーターに激突してしまうと,後続車が折り重なって先頭車両に乗り上げるという,大惨事も考えられた事故である。
 できるだけ早い復旧と,詳しい事故の状況報告を待ちたい。

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2012年9月26日

近鉄内部・八王子線はなくなるの?

 近鉄内部・八王子線はなくなるの?(2012年09月18日 朝日新聞)

 えび蔵 四日市市の近鉄内部(うつべ)・八王子線がなくなるかもしれないと聞いたよ。本当なの?
 A まだ決まっていないよ。同線の赤字は毎年約3億円にのぼるんだ。近鉄側は赤字を行政が負担してくれれば、鉄道を維持する選択肢もあるとしている。

 この新聞記事を見て,真っ先にこれを思い出した人も多かっただろう。30歳過ぎの方は覚えているに違いない。

ベータマックスはなくなるの?
 [ベータマックスはなくなるの?……答えは、もちろん「ノー」。]

 VHS・βのビデオ戦争でVHSの優勢が明確になった1984年,ソニーが4日連続で新聞に出した広告である。
 当時まだ私は貧乏学生。貧乏だったけれど,アパートの外階段を上ってくる新聞配達&集金のおじさんに脅えながらも取っていた新聞。集金には居留守を使うことも多かったが,基本的には部屋にカギを掛けていなかったので,居留守のタイミングが難しかったんだ……(遠い目)
 貧乏学生には,VHSもβも高嶺の花で,どちらのビデオデッキも持っていなかった。が,その広告は衝撃的な内容だった。
 研究室のOBの就職先は電機メーカーか自動車メーカーが多かったため,いつもは雑談や趣味の話で盛り上がるOB達が,仕事に戻って社会人になると,このような巨大な戦争を行っている戦士の一人なのだと感じ取れ,甘い学生生活から社会人になることに身震いを感じた。
(ひとつ付け加えると,就職は翌年だった。就職先としてSONYはやめておこうと思ったことは確かだ)

 と,ヨタ話が長くなってしまった。

近鉄内部・八王子線
[内部線と八王子線が分岐する日永駅(2007年1月撮影)]

近鉄内部・八王子線
[南日永駅のホームに日永行き電車が入ってくる(2007年1月撮影)]

近鉄内部・八王子線
[泊駅で列車交換(2007年1月撮影)]

近鉄内部・八王子線
[内部駅を出た電車。左端のビルは内部駅横の山中胃腸科病院(2000年5月撮影)]

 それにしても,この朝日新聞の記事は,BRTでせっかくクリチバの名前を出したのだから,クリチバのバス高速輸送システムと「かしてつバス」やJR気仙沼線跡のBRTの違いを説明してほしかったところだ。

 それと,ここまできても,近鉄が「来年の夏までに、市がBRTを検討して方針を決めてほしい」と言っているのに対して,四日市市が「BRTについては、まだ協議の場についていない」との立場なのは情けない。
 車両更新費用の補助を行って,やっとこさ鉄道は残るはずだったのに,いきなり近鉄からBRTの話をされて,怒り心頭なのはわかるが,四日市市の交通行政を司っているのは四日市市自身。もっと真剣に考えてほしい気がする。

 車両更新の問題がどうにもならず,専用バス路線化案に頼った場合のことを考えてみても,たとえば一般道との踏切はどうするのか,バスの運行会社はどうするのか。
 ここで,市が率先して市民の利便を図るかどうかが重要になる。そのまま近鉄系列の三重交通にバスを運行させると,バスは鉄道と同じ近鉄四日市駅止まりになるはず。近鉄が,みすみすJRに客を奪われるようなことはしないだろう。しかし,近鉄よりも安価な運賃(JR460円,近鉄610円)で名古屋駅までの乗客奪還に力を入れているJRを使いたい四日市市民も多いはずだ。専用バス路線を近鉄四日市経由でJR四日市駅まで延ばせば,利用客を増やすことさえ可能かもしれない。

 四日市市民のために,市は真剣になってほしい。

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2012年9月25日

ゴミ置き場のトラブル

 KT町は市を代表する商店街で人通りも多い。町のどこかにゴミ置き場は必要だけど,店の前がゴミ置き場になるのは困る。それはどこの家も同じ考えだ。

 農業が盛んなTH町の農家FSさんの家は,ちょうどKT町に隣接していて空き地もあったので,KT町では長年FSさんの家にゴミ置き場を置かせてもらっていた。もちろん,KT町町内会としてときどき菓子折を持っていったり,感謝の意は欠かさなかった。
 ゴミの捨て方や,ハエや悪臭など,ゴミ置き場につきものの問題はあったものの,ずっとそれで丸く収まっていた。

 ところがある日,市のゴミ回収業務が滞り,生ゴミが腐敗,ハエやウジが大量発生。臭いもひどいことになってしまった。あまりにもひどい状況で,FSさん家族は家に入れず,とりあえず他の家に仮住まいすることになった。

 まずは家に戻れるように,ハエやウジの死骸を処分したいが,FSさんの家族だけでは手に負えない量だ。悪臭もこびりつき,壁に水を掛けたぐらいではどうにもならない。
 KT町のみんなに手伝ってくれるように声を掛けたが,仕事が忙しいとかなんとかで誰も相手にしてくれない。それどころか,KT町では「うちにもハエが1匹飛んできた。うちも被害者だ」「風向きが変わるとKT町も臭くてたまらない」「近づくな。臭いがうつる」「原因となったゴミ置き場が悪い」「ゴミ置き場をなくせ!」というデモ行進まで始まった。

 KT町のゴミが原因なんだから,まずはみんなで協力してFSさんの家をきれいにして,ハエやウジの死骸はKT町で分担して処分しようという小さな声は,「ゴミ置き場絶対反対!」「FS家のハエや臭いを拡散するな」という声にかき消されてしまった。
 ゴミ置き場がなかったら困るという声も,「ゴミを有効活用すれば,ゴミ置き場はいらない」「ゴミゼロ社会を目指そう!」「ゴミ置き場利権の御用学者」という声をあげる人たちには通じない。

 ……
 おらげの(自分の家の)ゴミが原因じゃねえのになぁ。助けっぺど思って(善意のつもりで)隣のKT町のゴミ置き場を引き受けだのに,こだごとになるなんて……。

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2012年9月18日

JR北海道内で貨物列車がまた脱線

 貨物列車が脱線 江差線(2012年9月12日:朝日新聞)

 11日午後7時半ごろ、木古内町橋呉のJR江差線泉沢―札苅間で、札幌発仙台行き貨物列車(20両編成)が脱線した。男性運転士2人にけがはなかった。
 JR貨物北海道支社や木古内署によると、運転士が異変に気づき緊急停車したところ、8両目の4本ある車軸の後方2本が線路から外れていたという。
 (中略)
 道内では今年2月に石勝線東追分駅で貨物列車が、函館線八雲駅近くで普通列車がそれぞれ脱線。3月には留萌線で普通列車が、4月にも江差線で貨物列車が脱線している。

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 JR北海道内でのJR貨物の事故は,今年になってから2月の石勝線東追分駅,4月に江差線で,そして9月の今回にも江差線で起きた。路線名はローカル線のように読めてしまうので,気がつきにくいかもしれないが,いずれも貨物列車も高規格路線を走る高速貨物列車である。

 昔の貨物列車のように,いろいろな会社所有の貨車が連結され,ときには客車までぶら下がって,のんびり走っているような,そのような貨物列車ではない。名前は石勝線や江差線だが,貨物の大動脈である。大事故が起こる前に,早く原因を追及してほしい。

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2012年9月16日

気温25℃の朝が暑かったり涼しかったりする理由

 熱帯夜を明けた朝の気温が25℃もある。良くあることだ。
 真夏の朝の25℃はとても暑く感じた。朝っぱらから暑い……と思った。

 9月に入り,朝晩はめっきり涼しくなったという声が聞こえてくるし,自分でもそんな気がする。
 しかし,9月に入ってからも熱帯夜は比較的続いていて,最低気温が25℃を下回って,熱帯夜を回避できた日のほうが少ないぐらいだ。

 でも,同じ気温25℃の朝でも,なんとなく真夏とは違うように感じる。
 それはなぜだろうかと考えてみた。

 9月になったという言葉のイメージのせい? それは大きいかもしれない。
 夏は朝っぱらからアブラゼミやミンミンゼミが鳴いていたけど,少し秋の虫が鳴き出したから……。もちろんそれもありそう。

 でもあまり科学的じゃない気がする。

 人間の皮膚は,外部環境との熱のやりとりを,空気との熱伝導,熱伝達(対流),発汗(気化熱),そして輻射で行っている。でも,同じ25℃ならば,熱伝導や熱伝達(対流)は変わらないはず。

 となると,輻射の違いが気になってくる。気温は同じでも,周囲の道路やコンクリートの温度が違っていれば,身体の周囲にある物質との輻射熱が違ってきて,それが体感の差になるんじゃないだろうか……と考えてみる。

120905071511

 夏は日中の太陽光も強く,周囲の道路やコンクリートがたくさん熱を吸収し,夜が明けた後の朝も,まだ熱を持っていて26℃あると仮定する。
 9月になると,太陽光は徐々に弱まり,朝の道路や周囲のコンクリートが少し冷えて24℃になっていると仮定する。この場合,周囲とやりとりする輻射熱がどのぐらい違うのか,簡単に計算してみる。

 まず計算が簡単になるように,人間の身体を単純な形状,球と見なす。
 人間の身体の表面積は,1.6m^2あるから,
 球の表面積 S=4*pi*r^2 に入力して,WolframAlphaに計算をお願いすると,

Photo

 球の半径 r=0.36[m]と出てきた。こんな簡単な算数にもWolframAlphaを使いたくなるのは,エンジニアとしてどうなんだろうという気はするが,Twitterの自己紹介にも書いているように,私はダメ社会人なので,楽できるときには楽をする主義なのである。
 半径0.36[m],つまり直径72[cm]の球体は,人間の身体と同じ表面積をもつことになる。まぁ,だいたいそのぐらいだろう。

 人間の身体の発熱量Qは,いろいろな計算方法があるけど,一般的には一人 100[W]と見積もられている。
 そこで人間の身体を,100[W]の発熱量をもつ直径72[cm]の完全黒体とする。

 とりあえず,まったくの無風でも身体の周囲に発生する自然対流の計算はとても難しいので,とりあえず空気との熱のやりとりは置いといて,シュテファン=ボルツマンの法則を持ってくる(強引?)。

 Q = ε1* ε2 * S * σ * f * (T1^4 - T2^4)
  ε1,ε2:物質表面の赤外放射率
  S:表面積
  σ:シュテファン=ボルツマン係数=5.67 * 10^-8
  f:形態係数(ある面からある面が見える割合)
 真空中で向かい合うT1[K(ケルビン)]とT2[K]の物体の間では,Q[W]の熱がやりとりされるという式である。

 さて,周囲の温度がt=25℃,赤外放射率ε=0.9,の空間に形態係数(ある面からある面が見える割合)f=0.8ぐらいで置かれているとすると,

 100 = 0.9 * 4 * pi * 0.36 ^2 * 5.67 * 10^-8 * 0.8 * ((t+273.15)^4 - (25.0+273.15)^4), t>0

Photo_2

 WolframAlphaに計算をお願いすると,人間を模した完全黒体の温度は t=38.3℃となった。

 人間の普通の体温は36.5℃ぐらいなので,そこそこ近い値になった。

 実際には風がまったく無くても,身体の発熱によって対流が生じるわけで,身体の表面から空気への熱伝導,熱伝達(対流)によって熱が出入りするけどそれは置いといて,仮の値0.8とした形態係数を修正してみる。

 形態係数を変数にして,体温を36.5℃と置き,再びWolframAlphaに計算をお願いすると,
 100 = 0.9 * 4 * pi * 0.36 ^2 * 5.67 * 10^-8 * x * ((36.5+273.15)^4 - (25.0+273.15)^4)

Photo_3

x=0.93となった。もちろん形態係数は0.93とする。

 そこで,まず周囲が26.0℃道路やコンクリートで囲まれていた場合に,周囲とやりとりする熱量をqとして,人間の発熱量100[W]に加えてやり,再びWolframAlphaに問いかける。

 100 + q = 0.9 * 4 * pi * 0.36 ^2 * 5.67 * 10^-8 * 0.93 * ((36.5+273.15)^4 - (26.0+273.15)^4)

84w365

 q=-8.4[W]と出た。8.4[W]ほど周囲に逃げていく熱量が少ないことになる。

 8.4[W]の熱が逃げていかないとすると,体温36.5℃が維持できなくなる。

 100 = 0.9 * 4 * pi * 0.36 ^2 * 5.67 * 10^-8 * 0.93 * ((t+273.15)^4 - (26.0+273.15)^4)
 t=37.4℃
と体温が上がってしまうのだ。

 同様に計算すると,周囲が24.0℃の場合は,q=8.0[W]となり,マイナス記号は付かない。8.0[W]も逃げていく熱量が多くなる。

 8.0[W]余分に逃げていく分を補わないと,

 100 = 0.9 * 4 * pi * 0.36 ^2 * 5.67 * 10^-8 * 0.93 * ((t+273.15)^4 - (24.0+273.15)^4)
 t=35.6℃
と体温が下がってしまう。

 実際は,人間の身体が発汗量を調整したりして体温を一定に調節してくれるし,それが難しそうなときは,服装を変えたり,シャツのボタン外したりして調整するので,体温が変わることはない。また,風が吹いているか,止まっているかの影響は,たぶん輻射熱なんかよりも大きく感じるだろう。

 しかし,同じ25℃という気温でも,その周囲のアスファルトやコンクリートや植物の温度が26℃なのか,24℃なのかでは,体感温度に10[W]弱の輻射熱の変化があるとしたら,人間はその違いに気付くに違いない……というのをここでの結論としたい。


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2012年9月 9日

江口君は菩薩である

 グループ社員全員に毎月配布される某広報誌に「美の巡礼」というコーナーがあって,8月号では円山応挙の『江口君図(えぐちのきみず)』が紹介されていた。『見立江口の君図』は寛政6年(1794年),円山応挙最晩年の作品である。

「江口の君は菩薩である」
 銀の打ち掛け,金の帯,若柳の裾模様の白い着物を着て,微笑みをたたえる江口君(えぐちのきみ)。

「江口の君は菩薩である」
 江口の君は,白い象の背中に腰を掛けた姿で描かれている。江口の君は普賢菩薩の化身なのだ。

 摂津国江口は大阪府東淀川区の淀川から神崎川が分流するあたりの地名で,水上交通の要衝だったところ。江口の君はそこの遊女「妙」である。

 新古今和歌集の巻第十羇旅歌に西行法師と遊女妙の問答歌が収録されている。

 西行法師が天王寺詣でで江口を通りかかった折りに雨に降られ,一夜の宿を遊女妙の家に借りようとして断られ,

  世の中を厭うまでこそ難からめ かりの宿りを惜しむ君かな(西行法師)

という歌を詠んだところ,遊女の妙から,

  世を厭う人とし聞けば 仮の宿に心止むなと思ふばかりぞ(遊女妙)

という歌が返ってきた。

 遊女ごときが出家するのは難しいだろうけどさ,一晩ぐらい泊まらせてくれたって良いじゃないか,という西行法師の遊女を蔑んだ捨て台詞に対して,この世を厭って出家までしたお方なのに,たかが一晩の宿に執着しちゃってるの?……と軽妙洒脱な遊女妙の返し。結局,二人は意気投合して一晩語り明かしたという。

 謡曲「江口」は,その西行法師と江口の遊女との和歌のやりとりを元に作られており,遊女が普賢菩薩(ちなみに普賢菩薩は男)となり白象に乗って西方浄土に去っていくという話である。つまり,円山応挙の江口の君は,この菩薩の化身としての遊女を描いたものである。

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 菩薩と言えば,平岡正明著「山口百恵は菩薩である」。
 謡曲「江口」の話は,「山口百恵は菩薩である」を呼び起こす。

 平岡正明は,「山口百恵は菩薩である」の冒頭「菩薩テーゼあわせて108」で,こう書いている。

自分の煩悩を歌に昇華させた山口百恵は,他人の煩悩にも鋭敏に反応するだろう。他人の煩悩を自分の悲劇に繰り込んで山口百恵はさらに大きくなるだろう。すなわち菩薩である。

 あの平岡正明である。江口の君の話が下地にあったのは間違いない。

 遊女=芸能人・流行歌手というアナロジーもあるだろう。遊女=遊郭の女性,売春婦と読み取ることはありがちだが,近世以前,観阿弥・世阿弥が「江口」を描いた当時の遊女は少し違っているようで,当時は,遊女とは一種の巫女であり,白拍子であり,歌舞などの芸能を職とする存在だった。

「江口の君は菩薩である」
 篠山紀信撮影の山口百恵。

 そういえば,今NHKの大河ドラマで「平清盛」をやっているが,その平清盛の寵愛を集めた白拍子に仏御前(ほとけごぜん)がいる。
 仏御前は加賀国生まれで,14歳で京都に上京して白拍子となり,平清盛の前で即興で今様を詠み,それを歌って舞を見せたという。17歳で清盛の元を離れて出家し,数え年21歳で故郷の加賀国で没したそうで,あれっ,山口百恵は14歳でデビューして17歳で千家・都倉の元を離れて宇崎・阿木の歌に出会い,21歳で引退……。偶然というのはとても面白い。

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2012年9月 8日

JR九州がキハ66・67形「急行日田」ツアー

 レトロ列車「急行日田」で行く門司港の旅(ツアー)(鉄道コム)

 JR九州は、門司港駅改修記念「レトロ列車『急行日田』で行く門司港の旅」(ツアー)を実施。
(中略)旅行日は2012年9月16日(日)。行程は、かもめ6号で長崎(7:30発)から鳥栖(9:01着)まで移動し、急行「日田」(貸切)で鳥栖(9:30発)から門司港(12:15着)まで、筑豊本線~後藤寺線~日田彦山線~日豊本線を経由し移動。門司港駅到着後、昼食・フリータイム。急行「日田」で門司港(15:27発)から鳥栖(18:26着)まで鹿児島本線を経由し移動。

長崎から電車に乗って上熊本へ
〔長崎駅に停車するキハ66・67形(2012年5月)〕

長崎から電車に乗って上熊本へ
〔長崎駅に停車するキハ66・67形(2012年5月)〕

 今年のゴールデンウィークに九州を旅したときに見かけたキハ66・67型ディーゼルカー。JR九州に,国鉄急行色のキハ66・67型が現役で残っていることを知らなかったため,偶然見かけたときは飛び上がるほど嬉しかった。

 引退間際に国鉄色に戻したりするのは,実はあまり好きではなかったけど,でもやっぱりこの塗色は子供の頃から記憶の中に刷り込まれているので,おっさんの胸を揺さぶるんだよなぁ。

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広島電鉄がLRT整備のために値上げ検討

 路面電車、値上げ検討 広島電鉄、20~30円想定(2012年8月25日 朝日新聞)

 広島電鉄(広島市中区)は24日、路面電車の運賃引き上げを検討していることを明らかにした。現在150円の市内線をはじめ、全路線で20~30円の値上げ幅を想定しており、宮島線を含めた均一運賃にすることも視野に検討中だ。

 新しい低床車両の導入や電停を改修する費用を確保するのが狙い。新運賃は来年にも中国運輸局に申請する方針。認められれば、市内線を130円から150円にした1997年以来の値上げになる。

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〔広島駅前を走る5100形 Green mover max(2009年1月)〕

 日本一の路面電車の街,広島の軌道事業・バス事業を手がける広島電鉄。第三セクターのアストラムラインを延伸したりして地下鉄を作る計画もあったが,街全体が三角州の上に形成されている都市なので,膨大な建設費用がかかることや,「人と環境に優しい先進的な交通機関」としてLRTが世間に認められてきつつある風の変化もあって,広島の街は広島電鉄活用の道を選んだ。

 LRT化には積極的に取り組んでいるように見え,世界に誇れる路面電車の街になっている。

 まだまだ古い電車も走っており,(原子爆弾で焼けて全半壊した)被曝電車もまだまだ現役である。しかし,新しく便利な電車との差はいかんともしがたく,高齢化社会がさらに進む今後にもふさわしい公共交通機関への変貌を急ぐための運賃値上げだと思われる。実際の利用者の反応はどうなのだろう。

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2012年9月 1日

仰天! 滋賀県知事が「新幹線新駅必要」

 新幹線新駅「リニア開通なら必要」 滋賀知事発言に波紋(2012年8月20日 朝日新聞)

 県内に東海道新幹線の新駅は不要としていた滋賀県の嘉田由紀子知事が今月、「リニア中央新幹線が開通すれば新駅が必要になる」と発言し、波紋を呼んでいる。新駅計画を知事に中止させられた栗東市が反発し、嘉田知事は20日午前、野村昌弘市長に発言の経緯を説明する事態となった。

東海道本線(琵琶湖線)の草津駅
 東海道本線(琵琶湖線)草津駅。
(計画が中止にならなければ2012年に完成する予定だった「南びわ湖駅(仮称)」に近い)

 知事選で新幹線新駅の建設凍結を主張して当選し,着任後に着工した新駅工事を凍結した知事さんが,リニア中央新幹線が開通すればとの前提付きとはいえ新幹線新駅が必要だと言い出すとは,こりゃまたびっくり。ああ,某政党のお方か……。

 既に発生していた工事費用,多くの人たちが費やした時間,苦労。ああ,もったいない,もったいない。あれっ,「もったいない」って誰かのキャッチフレーズだったかも?

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こまちの運転士の体調不良の原因……

 運転士、体調不良で交代 秋田新幹線に遅れ・運休(2012年8月19日 朝日新聞)

 19日午後1時10分ごろ、秋田発東京行きの秋田新幹線こまちの運転士が体調不良を訴えた。JR東日本によると、本来は停車しない和田駅(秋田市)で運転士が代わり、運転を再開。帰省ラッシュで混み合う中、この新幹線が1時間遅れたほか、後続の1本が運休、2本が最大約70分遅れ、乗客約1300人に影響が出た。

疾走する特急「こまち」
 疾走する「こまち」(2003年8月撮影)

 この朝日新聞の記事を読んで,運転士自身の体調管理やそれ発見できない体制が問題だとは思った。体調不良の原因を新聞が深く追求しないのは,まあ,大ごとになってしまって反省もしてるだろうし,それなりに事情もあるんだろうと……。

 が,次の記事を読むと,印象がガラッと変わってくる。

 運転士の体調不良は熱中症原因 こまち、冷房に不備?(2012年8月20日 秋田魁新報)

JR秋田新幹線こまちを運転中、体調不良となった50代の男性運転士は熱中症だったことが20日、分かった。JR秋田支社によると、運転室の空調設備が故障、出発前に運転室内へ代替の冷房装置を設置したが、運転室内が十分に冷やされず、熱中症となった可能性もあるとみて調べている。
(中略)
 同支社では車両の使用を見合わせ、現在、秋田市楢山の秋田車両センターで空調設備を修理中。こまちの運転士が運転中に熱中症となり、緊急停車したのは前例がないという。

 最初に本件がニュースになったときに,運転室の空調設備が故障していたことを,なぜ発表しなかったんだろう。明らかに異常事態だったようにも読める。ひょっとしたら,運転士は被害者の可能性がある。

 乗務員と運転指令所が列車無線でどのような会話をしたのも含めて,気になるのは,JR東日本がなぜ最初に空調設備の故障のことに言及しなかったかに尽きる,かな。

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