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2012年1月13日

利用しない和田岬線廃止して住民は費用負担するのかね?

 平清盛で街おこし、難関は在来線 JR和田岬線廃線論議(2012年1月5日 朝日新聞)

 120年余にわたってミナト神戸の発展を支えてきたJR和田岬線(通称名、2・7キロ)が、ほかならぬ地元から「廃線」を突きつけられている。背景にあるのは、8日から放映が始まるNHK大河ドラマ「平清盛」が高めた街おこしの機運。「線路が地域を分断している」との声を受け、神戸市は新年度にも、路線廃止を視野に入れた地域活性化策をまとめる方針だ。

 1890年開業の同線はJR山陽線の支線で、兵庫駅から南へ枝分かれし、一つ先の和田岬駅で行き止まる。沿線には川崎重工業兵庫工場や三菱重工業神戸造船所の工場群が立ち並び、従業員の通勤路線として利用されてきた。JR西日本によると、1日の乗降客数は平均1万人で、「れっきとした黒字路線。こちらから廃止を求める理由は全くない」という。

 まったくアホらしい話が続いている。正月早々,「東京の震災はチャンス」をモットーにした県知事が,大河ドラマの映像が汚くて兵庫県のPRにならないとか言い出してるらしく,ここの知事は相変わらずだなという印象を強くしたわけだが,今度は大河ドラマの機運を受けて和田岬線を廃止しようという話も出てきているようだ。

和田岬線
 和田岬線和田岬駅(1999年6月)

 和田岬線は,朝と晩に兵庫駅と和田岬駅の間を電車が往復し(途中駅はない),和田岬駅周辺の大工場群の従業員を輸送するための路線である。1日の乗降客数は平均1万人。日中は運転しない。そりゃ,沿線住民と言っても,和田岬線を利用する環境にはないのだ。沿線住民とは言え,和田岬線があろうが無かろうが,ほとんど何の影響も受けない人たちばかりなのである。

 和田岬線から乗客を奪えなくて,困っているのが神戸市の市営地下鉄海岸線(とその関係者)。

 前の記事にも書いたが,和田岬線と神戸市営地下鉄海岸線の和田岬駅の利用者数推移が,驚くべき数値なのである。地下鉄ができたら廃線かと思われていて,朝と晩しか走らない,古い数両の電車が往復するだけの和田岬線の利用客が大健闘なのである(特にカッコ内の定期券利用者)。
 日中は運転がなく,ゆったり座る座席がなく,荷物車のような扱い,人を人と思わないような酷い扱いの,和田岬線のほうが定期券利用者が多いのだ。神戸市営地下鉄がよほど嫌われているとしか思えない状況だ。

年間乗車人数は次の通り。
JR和田岬線(山陽本線)
▪ 1999年度:2,894千人(2,759千人)
▪ 2000年度:2,804千人(2,671千人)
▪ 2001年度:2,458千人(2,344千人)
▪ 2002年度:2,196千人(2,116千人)
▪ 2003年度:1,975千人(1,883千人)
▪ 2004年度:1,829千人(1,732千人)
▪ 2005年度:1,751千人(1,664千人)
▪ 2006年度:1,688千人(1,596千人)
神戸市営地下鉄 海岸線
海岸線各駅の中では新長田駅の次に多い。
▪ 2001年度:1,931千人(828千人)
▪ 2002年度:2,306千人(1,175千人)
▪ 2003年度:2,618千人(1,540千人)
▪ 2004年度:2,593千人(1,494千人)
▪ 2005年度:2,569千人(1,474千人)
▪ 2006年度:2,680千人(1,492千人)
カッコ内は定期利用者の再掲
「神戸市統計書」(神戸市企画調整局総合計画課・編)による

 さて,この和田岬線を廃止して,その利用客を神戸市営地下鉄に呼び込めれば,ウッホウッホと乗客が増加し,儲けられるだろうか。
 私も,最初はそれが神戸市の狙いなのかと思ったが,そう簡単にはいかない。

 和田岬線の乗客は,朝と夕の通勤ラッシュのみの利用客なのだ。その利用客が市営地下鉄海岸線に移動すれば,朝の列車の本数は増やさなければならない。ピーク時間帯の輸送量が2倍以上になるのだからしかたがない。
 朝のピークに必要な電車の本数が,鉄道会社が抱え込む必要のある電車の本数であるから,神戸市営地下鉄はかなり大規模な設備投資をしなければならない。駅のホームも同様だ。乗換駅となる新長田駅・和田岬駅・神戸駅(ハーバーランド駅)は大改修しなければならないだろう。
 ピークの客をさばくためにはしかたがない。運転士の数や駅員の数もかなり増やさなければならないだろう。

 さあ,ピークが過ぎれば,後は今まで通り,あまり多くない旅客を運ぶだけになる。和田岬線は日中は走っていなかったから,和田岬線が無くなったからといって,市営地下鉄の乗客が増えることはない。増設した車両は車庫で休む。車両が増えたので車庫を増やさなければ泊めておく場所が無くなるかもしれない。運転士も駅員も,夕方まではどこかで休むことになる。もちろん人員削減で無人駅が多くなっているはずだから,駅の施設に運転士や駅員が休んでいるところは無い違いない。忙しいときだけのパート契約になるのかな……。

 というわけで,朝夕しか運行していない鉄道(ある意味ではそれが成立していたのが奇蹟)の利用客を引き受けるということは,鉄道会社にとっては費用ばかり掛かって,もうけがほとんど増えない最悪のプレゼントと言えるんじゃないだろうか。
 軽い調子で和田岬線を廃止してしまい,それでなくても回っていない市営地下鉄海岸線の首が,まったく回らなくなってしまってしまうという危惧を感じざるを得ない,2012年の正月なのであった。

【参考】
2011年2月20日:実はすごく怪しい「和田岬線の廃止検討要望」

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コメント

鋭い指摘だと思いました

投稿: なっくす | 2012年1月17日 22時50分

 ラッシュ時にはたくさんの通勤通学客が乗っているのに日中ガラガラで赤字額が増え続ける神戸電鉄,という典型的な悪い見本があるのに,そのまんま二の舞を演じようとしているふうに見えてしまいます。

投稿: 三日画師 | 2012年1月22日 23時58分

地元住民です。住民の総意のような報道のされ方が残念です。
歴史ある路線がなくなるなんて和田岬民の一体誰が望んでいると言うのでしょうか?清盛ブームなんてせいぜい1年です。
何十年と頑張ってきた路線を廃止するなんて・・・・・・。先日は廃止に反対する署名運動が行なわれていました。
地下鉄は確かに昼間はガラガラですが朝夕通勤時のあの混雑様を思えば、おっしゃるように本数の増加は必須でしょう。

幼い頃、車両の入口付近にはみ出して乗っている人に踏み切りから手を降ってました。大概の人が手を振り返してくれたのを覚えています。

投稿: さお | 2012年2月10日 22時05分

 さおさん,コメントありがとうございます。
 和田岬線の廃止に反対する地元の方の署名運動も行われているんですね。少し安心しました。
 この廃線の動きにはよくわからない点が多くて,部外者ながら気になってしまいます。

投稿: 三日画師 | 2012年3月 6日 19時33分

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