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2011年6月13日

三春町の3月15日のヨウ素剤配布を断固支持する

 ヨウ素剤を住民に配布=福島原発事故で三春町(2011年3月16日 時事通信)

 東京電力福島第1原発から30キロ圏外の福島県三春町が、被ばくによる甲状腺がんの予防に効果がある安定ヨウ素剤を希望する町民に配布していたことが、16日分かった。
 本来、国の指示が出てから配布することになっているが、同町保健福祉課の工藤浩之課長は「原発事故の不安を和らげるために決断した」と話している。
 同町によると、15日午後1時から同6時までの間、希望する40歳未満の多数の住民に計約1万3000錠を配布した。多くの住民はすぐに服用していたという。

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 県、安定ヨウ素剤の回収指示 三春町ではすでに服用(2011/03/18 福島民放)

 福島県は17日までに、放射能の健康被害を防ぐ内服薬「安定ヨウ素剤」を住民に配った三春町に対して回収を指示した。安定ヨウ素剤は原子力災害対策特別措置法に基づき、国の指示が出てから住民に配布する。町は「住民はすでに服用しており、回収できない」としている。県によると、安定ヨウ素剤配布の国からの指示は出ていない。現段階では、県は一部の自治体に備蓄用として配っている。
 町は14日に県から安定ヨウ素剤を入手。福島第一原発の爆発事故などを受け、専門家の意見を聞いた上で15日に配った。町は「県が放射能の測定調査の数値を公表していない段階だった。放射能の状況が分からない中、町民の命を守るために配布を決断した」としている。

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 ヨウ素剤配布で混乱、誤った服用指示も(2011年3月21日 読売新聞)

 東京電力福島第一原子力発電所の事故で、各地で比較的高い放射線が観測されていることから、福島県内では国の指示を待たずに住民に安定ヨウ素剤を配布する自治体が出始めていることが、読売新聞社の調査で分かった。
 各地で観測されている放射線レベルでは健康には問題がないが、国と自治体の方針が一致せず、混乱が広がっている。
(中略)
 独自判断で安定ヨウ素剤を配布していたのは、同原発の20キロ・メートル圏内で避難指示が出ている富岡町、20~30キロ・メートル圏内で屋内退避になっているいわき市、圏外に位置する三春町。これら3自治体では、少なくとも15万7000人分を配布。三春町では住民の服用も求めていた。

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 [三春町大町の裏を流れる桜川 - 1996年撮影]

 以上のような記事に書かれている通り,我が故郷である福島県三春町では,福島第一原発の事故の直後の3月15日に県から安定ヨウ素剤を入手し,希望する40歳未満の多数の住民に安定ヨウ素剤を配布し,多くの住民はすぐに服用したという。

 国や県の発表では,その時点で各地で観測されている放射線レベルは「今すぐ健康に影響を及ぼすものではない(今年の流行語大賞候補かな)」というものであったから,各種メディアの記事は,何にもわかっていない小さな自治体(三春町)では安定ヨウ素剤を配ってしまったたらしいよ,しかも国や県の指示がないのに飲ませちゃったらしい……という三春町をバカにしたニュアンスが見て取れる。

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 [三春小学校の校門(旧藩校明徳堂の門) - 1996年撮影]

 報道はやや穏やかだったかもしれないが,三春町自体へは強い批判の声があったに違いない。

 しかし,その後になって,福島県内各地の放射線量が明らかになってくると,県内のほとんどに降り注いだ放射性物質は,3月15日に一気に拡散し,その後の新たな拡散はほとんど無く,最初に拡散して地面や屋根や草木に積もった放射性物質の影響が残るだけになっていることがわかる。

 最後に載せる放射線量の推移のグラフを見れば,3月15日に安定ヨウ素剤を配って飲ませたことは,決して間違った判断ではなかったと思う。いや,国や県の指示がないのに,三春町独自に判断したことは,大英断だったとしか言えない。

 三春町は小さな町なので,町役場では私の同級生や知り合いがたくさん働いている。私の記憶の中では,彼らはまだ中学生だった頃の姿のままだが,年齢的に言えば,役場内の各部署で中心的な存在となって働いていることだろう。
 そんな三春町が,国や県が迅速な対応ができない中で下した住民第一の判断を,私はスタンディングオベーションで讃えたい。

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 [三春中学校(旧)体育館横の田村高校に続く坂道 - 1996年撮影]

 三春町は,昔から周囲の動向やお上からの指示に安易に従わず,ちゃんと自分たちの頭で考えて判断する人たちが多い土地柄なのかもしれない。

 戊辰戦争の時,東北列藩同盟にありながら,三春藩は途中で寝返り三春を無血開城(会津や二本松からは「三春狐」と揶揄された)。土佐の板垣退助などの影響を受けた三春藩出身の河野広中らが福島県を東北の自由民権運動の中心にしていった。
 近年では,町の教育長を公募したり,教育改革のさきがけてとして,教室間の仕切りや始業・終業ベルのない学校を多く作ったり,とにかくいろいろやっている。
 なにごとにも,ちゃんと自分の頭で考えている役人がいる町は,やっぱり何があっても対応は早いし,その対応も的確だ。間違ったときにはちゃんと責任をとれば良いだけだ。

 三春町やいわき市以外の町では,県から回収指示のあった安定ヨウ素剤を使用せず,黙って返却するのだろうか。福島県の細かいニュースは首都圏にはなかなか入ってこないのだが,福島県の対応には(もちろん国の対応も)いろいろ疑問を感じることが多い。そんな県の指示に無条件に従って,それって大丈夫?

(リンク切れ)
 (@hayano【グラフ更新 全国の放射線レベル】4/18まで)

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雑記」カテゴリの記事

コメント

三春町に ノ

投稿: もりあき | 2011年6月13日 20時35分

 ネット用語に疎くて「ノ」が……(涙)
 賛成!的なイメージと思って良いでしょうか。それとも「ノー」?

 この記事,最後のリンクも早々と切れてるし,ちょっと改修が必要かもしれませんね。

投稿: 三日画師 | 2011年6月14日 00時44分

福島県知事自体が原発推進側ですし、風評被害を少なくするために、実際の検出データを隠蔽している程です。また、福島県の「放射線健康リスク管理アドバイザー」とやらが、長崎大学の山下某という御用学者ですので、県の指示に従っていたら、それこそ被曝人体実験の献体に成り兼ねません。そういう点で、町が独自の判断で行動していることは、心強いことと思います。

NHK教育で6月5日に放送されたETV特集『続報 放射能汚染地図』で、三春町での土壌検査において「テクネチウム99m」という放射性物質が検出された旨のグラフが出ました。これは、とても比重が大きい物質だそうで、プルトニウムも同様に拡散された可能性があるそうです。

相双地区や飯館村、福島市、郡山市程に汚染されなかったのは、地形や風向きが幸いしているのかもしれませんが、それでも農業で生計を建てている方々にとってはたいへんな死活問題であろうと思います。

原発事故は、終息に向かうどころか、まったく先が見えない状態であり、この先更なる被害が生まれることも懸念されますが、近い将来、必ず以前の平穏な三春町に戻ってくれることを願って止みません。

投稿: ポンタ | 2011年6月14日 22時07分

 佐藤栄佐久元知事が東電の事故隠しを厳しく追及しようとしている矢先に,不思議な汚職事件で逮捕されて,その後にちゃっかりと知事になってた感じの方ですから,困ったもんですね。

 三春町がしっかりとした行動をとっていることは,本当に心強いです。

 長崎大学の山下教授の件,100mSv以下なら安全と断言したことはまずいかもしれませんが,誤解を恐れずに言えば,今までの調査結果で年間100mSvぐらいの低線量被曝では有意な差異を示すデータは得られていない,というところではないでしょうか(乳児・幼児の甲状腺がんは別)。

 ただ,影響はよくわからないけど,少しでも被曝量を減らすため,詳細な放射線量の調査と,線量の高いところでは校庭の表土を取り去る等の対策が一刻も早く必要な状況だと思っています。

 プルトニウムは(原子量に比べれば)比較的軽いのであちこち拡散しているのかもしれません。核実験の結果,世界中にばらまかれたプルトニウムも残ってますので,それに比べてどのぐらいの量なのかを調べる必要があると思いますが,よくわかりません。重いテクネチウム99mが三春町で検出されたという話ですが,素人の推測ではありますが,避難する車の屋根やタイヤ,あるいは野鳥などに付着したものが,車や野鳥とともに三春まではるばるやってきた後で雨などで地面に落ちたものではないかと思います(ETV特集の続報のほうは見てないので,どういう内容だったかは不明ですが)。

 どうやって飛んできたかは別に,農業やその他いろいろへの影響はあると思います。

 原発は本当に先が見えない状態なので,悩ましいですね。

投稿: 三日画師 | 2011年6月14日 23時44分

すみません。眠い時間に書き込んだもんで、ついネット語使いました。

もちろん、肯定です。

投稿: もりあき | 2011年6月22日 07時33分

今、8月ですが、3月の時点では分からなかったいろいろなデータが出てくるにつけ、三春町の判断は大正解であった、と私も思います。 

投稿: しゃく | 2011年8月 6日 22時24分

 各地の放射線量の推移を見れば,既にヨウ素131は半減期を大きく過ぎ,セシウム137+セシウム134の影響ばかりになり,線量はほとんど減少しなくなってしまいました。広域への新たな拡散は起こっていないことがわかります。ここ数年,雨などで流れる分と,セシウム134が半減する分で、放射線量はトータルでは半分ぐらいにはなると思われます。長いつきあいになりそうです。

 とにかく,ヨウ素剤配布は三春町役場だけの判断ではなく,専門家の意見を聞いた上での配布ですから,これは本当に大正解ですね。

投稿: 三日画師 | 2011年8月 7日 02時04分

三春町に敬意を表します。24時間以内が理想的なのですが、チェルノブイリの時のポーランドの対応ですら3日かかったのですから。
ところで、3月21日の日テレニュースに経産省の安全保安院が3月16日に福島県などに投与を文書で指示したとあります。ネット上には大方が、「国の指示もなくいわき市などが配付した」と非難めいた記事・文書ばかりですが、この安全保安院からの文書はどこに消えたのでしょうか。

投稿: タケちゃん | 2011年9月 5日 12時11分

 経産省が出した「安定ヨウ素剤投与指示」については,日本核医学会のページにも書かれていますね。

被災者の皆様、とくにお子さんをお持ちの被災者の皆様へ(日本核医学会)
http://www.jsnm.org/japanese/11-03-18

> 16日、原子力災害対策現地本部から、「避難区域(半径20km)からの
> 避難時における安定ヨウ素剤投与の指示」を県知事及び市町村(富岡町、
> 双葉町、大熊町、浪江町、川内村、楢葉町、南相馬市、田村市、葛尾村、
> 広野町、いわき市、飯館村)宛に発出した

 避難区域から避難する際には安定ヨウ素剤を飲むようにというこの指示に対して,県は「安定ヨウ素剤投与が必要な避難地区残留者はいない」と判断したと聞きます。文書が消えちゃったとしたら,このへんでしょうね。

 安定ヨウ素剤の副作用の問題もあり,日本核医学会ですら

> 今の段階では安定ヨウ素剤による甲状腺保護処置は不要です。むしろ危険
> なことがありますので、避けてください。

というコメントを出す中では迅速な判断など出来ず(安定ヨウ素剤で健康被害などが起きたら,それこそ逆に批難されることになるでしょうし),判断が他人まかせになってしまったのではないでしょうか。

投稿: 三日画師 | 2011年9月 7日 21時26分

以前よりこのページをブックマークし、三春の人たちのしたことはまちがいのないことだと思っていました。
最近、このことについての特集記事が朝日新聞(プロメテウスの罠、吹き流しの町、2012年7/7~7/27)に掲載されました。読むうちに目頭が熱くなってきます。こんな素晴らしい人たちの住む町、故郷を誇りに思います。

投稿: ひげ | 2012年7月28日 16時48分

 ひげさん,コメントありがとうございます。
 朝日新聞の連載「プロメテウスの罠」に三春町の話が載っていることを職場の同僚に教えてもらいまして,全部読むことができました。どちらかというと好意的な取り上げ方をしてもらって,ありがたいことだと思いました。

投稿: 三日画師 | 2012年8月 5日 04時46分

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