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2011年6月 1日

JR石勝線トンネル内事故の疑問点…

 特急脱線、整備不良が原因か…JR北海道本社など捜索(2011年5月31日 読売新聞)

 北海道占冠村のJR石勝線・第1ニニウトンネルで特急「スーパーおおぞら14号」(6両編成)が脱線炎上した事故で、北海道警は31日午前、JR北海道本社(札幌市中央区)など数か所で、業務上過失傷害容疑での捜索を始めた。JR北海道の調べでは、推進軸とつながった減速機を、車両底部に固定する金属製のピンが外れたことで、推進軸周辺の部品が落下した可能性がある。道警は、整備不良の疑いもあるとみて、同社のマニュアルや、整備点検記録などを押収する方針。

帯広駅付近
 帯広駅付近を走るキハ283系気動車

 いくつかのニュースサイトをチェックしているが,捜査・調査の方針が,当初感じた疑問とは違う方向に向かっている気がしてならない。その疑問とは,「なぜ,トンネル内で停車したのか」である。

 もちろん,部品脱落の原因を追及することは重要だと思う。整備不良が原因かもしれないし,設計に問題があったのかもしれない。同じ事態が生じないように同じ部品や,同様な設計になっている箇所のチェックも必要だろう。

 しかし,別の部品にトラブルが生じる可能性や,乗客が持ち込んだ可燃物が煙を上げる(そこから車両火災になる)可能性だってあるのだ。そんなときに,またトンネル内で停車することはないのか。そこが第1ニニウトンネルよりも長大なトンネルだったらどうなるんだろう……。

 一昨日の「第二の北陸トンネル事故になりかねなかった石勝線事故」でも書いたように,北陸トンネルの火災事故の教訓(皮肉なことに,今回の事故があった石勝線に近い狩勝実験線で車両の燃焼試験も行われた)から,列車で火災が起きたときにはいかなる場合もトンネル内では停車せず,トンネルを脱出することがマニュアル化されていたはずだった。

北陸本線のトンネル(新疋田)
 北陸本線のトンネル(火災事故があった北陸トンネルではない)

 なぜ,トンネル内で停車したんだろう……と,モヤモヤした気分だったが,Web上に次のような記事を見つけた。

占冠村の特急事故:乗員対応、手順書通り 出火気付かず避難誘導なし(2011年5月31日 毎日新聞)

 事故直後に取材に応じた「スーパーおおぞら14号」の男性車掌(60)によると、車掌は占冠村の「第1ニニウトンネル」に入る直前に異音を耳にし、男性運転士(26)に車内電話で緊急停止を要請した。異常時手順書の「異常を感じたら、ただちに列車を停止すること」との指示に沿った対応だった。
 止まったのは、トンネルから約200メートル入った地点。トンネル内の処置手順は、火災発生時はトンネル内にとどまらず外に出るよう求めている。運転士は火災は把握していなかったが、煙があったため前進を試みた。だがギアが切り替わらず、車両は動かなかった。

 なるほど,「火災が起きたときには,まずトンネル脱出」との整合性に疑問はあるものの,「異常発生時には,ただちに列車を停止」はマニュアル通りらしい。不幸なことに,再び列車が動くことはなかった。この対応で,若い運転士を責めることはできない。

 マニュアルでは,火災は煙ではなく「炎を目視する」ことで確認することになっていたそうで,これもマニュアルの見直しが必要だと思う。不完全燃焼で煙が発生していた場合,バックドラフトで爆発的に燃え上がることもあり得ないわけではないからだ。

 また,今回事故を起こした車両は「電車」ではなく,1両でも(運転台があれば)運転が可能な「ディーゼルカー」であり,編成の変更も自由にできる電気連結器付き密着連結器が付いているタイプだった。脱線して煙を上げている車両を切り離して,たとえば先頭の3両だけでトンネルを脱出することができた可能性もある(当然ながら無理だった可能性もある)。
 車掌の指示ではなく,乗客が独自の判断で非常コックを開けてトンネル内を避難したことは,奇跡的に全員が助かった最大の要因ではあるが,もし先頭の3両だけでトンネルを脱出しようとした場合には,トンネル内を逃げる乗客の存在がそれを妨げる要因になる可能性もある(これでもって乗客が非常コックを開けたことを責めるつもりはない)。
 列車が停止した第1ニニウトンネルは,長大トンネルが続く石勝線の中では全長約700mと比較的短いトンネルだったため,煙の中を歩いて逃げることができたが,これが次の新登川トンネル(全長約6km)だったとしたら……ちょっと寒気がしてくる。

 今回は,乗客の判断によって大事故になるのを防ぐことができた。しかし,それはあくまで幸運が重なった結果だったように思う。臨機応変な対応のできない鉄道員が多いように感じられるのも,やっぱり気になる。安全管理体制の問題を乗務員マニュアルの不備の修正だけに矮小化しないでほしいと,切に願いたい。

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