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2010年12月22日

柳の下のドジョウは厚かましく居直った

「棄景」丸田祥三

 廃墟写真の先覚者である丸田祥三氏が,メディアファクトリーの『廃墟遊戯』『廃墟漂流』などで丸田氏の写真と酷似した写真を発表し続ける小林伸一郎氏を訴えた,「盗作かもしれない」裁判の判決が12月21日に東京地裁であった。裁判長は請求を棄却した。

 まずは,裁判の結果を報じた各社の記事を抜粋した。

 「廃虚写真」の丸田氏敗訴 地裁、類似本差し止め認めず(2010年12月21日 朝日新聞)

 大鷹一郎裁判長は「被写体の選択はアイデアであって表現自体ではない。写真全体から受ける印象は大きく異なる」として請求を棄却した。


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 廃虚写真の著作権侵害、原告の請求棄却(2010年12月22日 読売新聞)

 大鷹一郎裁判長は「同じ被写体でも色合いなどの違いがあり、全体の印象は大きく異なる」と述べ、請求を棄却した。

 丸田さんは昨年1月、小林さんの写真集に掲載された旧変電所や鉱山跡地の廃屋など5点の写真が自分の作品と似ているとして提訴。訴訟で「廃虚を見つけるには多大な時間や費用がかかるのに、自ら発掘したように発表された」と主張したが、判決は「廃虚の撮影に制約はなく、最初に発見して取り上げても法的保護には値しない」と判断した。


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 「廃虚」写真家の請求棄却=作品集差し止め訴訟-東京地裁(2010/12/21 時事ドットコム)

 大鷹裁判長は、丸田氏側が被写体や構図をまねされたとする作品5点について、「被写体の選択はアイデアであって、表現それ自体ではない」と指摘。「白黒とカラーといった違いがある。写真全体の印象は大きく異なる」と述べた。
 丸田氏側は「それぞれの廃虚を作品で取り扱った先駆者として、営業上の利益を保護されるべきだ」とも主張したが、大鷹裁判長は「被写体発見に多大な労力を要したとしても、他者の撮影を制限することはできない」と退けた。


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 廃虚写真の著作権侵害認めず 東京地裁、請求を棄却(2010/12/21 日経新聞)

 大鷹裁判長は「被告の写真が原告の写真の翻案とは認められない」と判断。廃虚を撮影するのに最初に撮影・発表した人の許諾は不要とした。

裁判長の言葉を簡単にまとめると,次のようになる。

・被写体の選択はアイデアであって,表現それ自体ではない
・白黒とカラーといった違いがあり,写真全体の印象が大きく異なる
・廃墟の発見に多大な労力を要したとしても,他者の撮影を制限することはできない

 大変残念なことだが,これは,過去の著作権侵害裁判の判例に則った判決なのかもしれないと思った(判決の言い渡し日が何度か延期されたことから,画期的な判断がなされるかもしれないという期待を持ったが,そうはならなかった)。
 また,アイデアは表現ではないので著作権で保護されないというのは,恥ずかしながら今回初めて知ったことだ。いわゆる『みずみずしい西瓜事件』の高裁判決では,被写体のスイカの切り方や配置等においてアイデア以上の創作的な表現があるという判断がなされたことは,今回の裁判で有利にはたらくのではないかと期待したが,被写体である廃墟に対して何らかの創作を加えたものではないというふうに受け取られてしまったようだ。

 前回のブログの記事の最後に書いた,判決の前に感じていた不安,「裁判所に,同じ富士山を撮ったらパクリなのか,というような短絡的な考え方をされると,ひょっとしたら不幸な判決になってしまうかもしれないという怖さがある」が現実になった感じだ。
 丸田氏自身が,その点を危惧し,“同じ場所で後から撮ってはいけない”と言っているわけではないのだとブログなどで繰り返し強調なさっていたのだが,うまく伝わらなかったかもしれない。

 さて,次はどうすればいいのか。上告するのか,しないのか。私にはよくわからない。小林氏側が,勝訴を背景に,小林氏側が出してきた和解案のように,丸田氏本人のブログだけではなく,USTREAMのログや第三者のブログまでも削除させる(なんと傲慢な和解案なんだろう)方向に動いてくるのを防ぐために,まずは上告するという選択はあるのかもしれない。しかし,費用的な問題も,また,裁判が続くことによって丸田氏の次の作品制作にあたえる損失も少なくない。

 そもそも(という表現って,すごく嫌われているけど),この問題自体が裁判になじまない感じがあるのと,勝訴して得るものはそれほど大きくない(丸田さんごめんなさい)ように思うのだ。裁判に勝っても,嘆かわしい現在の写真界(日本カメラとかアサヒカメラとか,写真評論家,写真家……)が変わらなければ,ひょっとしたら何も解決しない可能性もある。

 昨晩のUSTREAMに登場されていた,枡野浩一氏,切通理作氏,中村うさぎ氏……その他の方たちの協力で,何か良いアイデアが出ることを期待したい。

 最後に,丸田祥三氏が昨晩TwitPicにアップしてくださった,来年予定の廃道写真集用の新作へのリンクを貼り付けて終わりたい。上越国境に遺る廃橋だそうで,見事な下曲弦トラスの廃橋写真だ。新作もまた期待できそうだ。

(リンク切れ)
(2010年 丸田祥三氏撮影)

# 以下は12月28日に追加……
 控訴して勝訴しても得られるものは大きくないように思う,などと書いてしまったが,裁判で丸田正三氏が要求しているのは,かたちあるものというよりは,義とか礼といったものであり,私はかなり不遜な書き方をしてしまっていたかもしれない。

 その後,12月26日の丸田氏のブログに,知的財産高等裁判所(知財高裁)へ控訴する方向で動き出したことが書かれている。裁判によって創作活動が制限されるのが辛いことなのは,丸田氏御自身が一番わかっているはず。陰ながらしか応援できない状況だが,控訴という判断を支持し,最後まで応援していきたい。
 http://blogs.yahoo.co.jp/marumaru1964kikei/folder/557842.html

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