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2010年8月31日

長崎新幹線の着工条件は厳しいけど

 整備新幹線、区間別の着工条件を明示 前原国交相(2010年8月27日 朝日新聞)

 前原誠司国土交通相は27日、北海道、北陸、九州新幹線の未着工3区間についてそれぞれ着工に必要な具体的な条件を示した。今年度中にも着工できる予算措置はしてあるが、条件はどれも厳しく、早期着工は困難とみられる。

(中略)

 九州は(1)軌間可変電車(フリーゲージトレイン)の開発(2)肥前山口—武雄温泉間の単線区間のあり方の2点を挙げ、これらの課題の解決策を示すことを着工条件とした。

 あ〜あ,やっぱり……という感じだ。前原国土交通相が示した条件は,九州新幹線長崎ルートにとっては,非常にハードルが高い。これらの解決策を示せなければ,着工は先送りと言うことになるらしい。

 そしてもう一つ。記事には書かれていないが,軌間可変電車(フリーゲージトレイン)の開発という最大の課題が解決したとしても,JR西日本は,山陽新幹線へのフリーゲージトレインの乗り入れを認めていないのだ。非常に高いハードルの向こう側には,ハードルじゃなくてコンクリートの壁がある。

 仮にフリーゲージトレインの開発が上手く行くと,博多駅からフリーゲージトレインを使った長崎新幹線に乗り換えることになる。この長崎新幹線は,博多駅からどこを走るのだろうか?

 現在出回っている資料では,フリーゲージトレインを使った長崎新幹線は,博多から新鳥栖までは九州新幹線鹿児島ルートを走り,新鳥栖でゲージを変更して,在来線の長崎本線に乗り入れることになっている(Wikipediaでは「博多−新鳥栖間は鹿児島ルートと共用」という表現)。

 Googleマップで新鳥栖駅予定地を見てみる。
Shintosu2
 航空写真の中心部分が九州新幹線新鳥栖駅予定地。南北に通る巨大な建造物が九州新幹線,東西に走るのが長崎本線で,交点に新鳥栖駅が予定されている。
 Googleマップを見てわかるように,新鳥栖駅は長崎本線(在来線)の鳥栖駅と肥前麓駅の中間付近に設けられる。

 これは以前もブログの記事にしたが,既に建設が始まっている新鳥栖駅の構造は,九州新幹線鹿児島ルートと在来線長崎本線がほぼ直行しており,新幹線の車両が在来線の線路に乗り入れられるようにはなっていないのだ。「列車は直角には曲がれない」のは小学生にだってわかる。

 もし,この地図に九州新幹線鹿児島ルートと長崎本線の短絡ルートを造ろうとすると,九州新幹線鹿児島ルートを博多から(写真上方向から)走ってきたフリーゲージトレインは,写真の一番上のあたりで写真左側に大きくカーブして原古賀の街を横断し,写真の左端のあたりで長崎本線に接するような急カーブが必要になる。長崎本線に接する付近の西側は,新鳥栖駅というよりも肥前麓駅のほうが近いぐらいだ。

 つまり,たとえ長崎新幹線をフリーゲージトレインで走らせるにしても,博多から既存の長崎本線で鳥栖−佐賀−……と走ることになるのを前提として,新鳥栖駅は作られているようにしか見えない。
 そして,博多から長崎まで,フリーゲージトレインが在来線と同じ狭軌ゲージのまま走り続けるとしたら,それは現行の特急「かもめ」と何が違うんだということになる。カーブでレールに加わる横荷重の大きさが問題となったフリーゲージトレインより,現行の特急「かもめ」のほうが速く走ってしまう可能性だってないことはない。

 日本のどこを走らせるとメリットがあるのかがよくわからないフリーゲージトレインより,現行の特急「かもめ」の車両や路盤の改良にお金を掛けたほうが良いんじゃないのかと思いたい,今日この頃である。

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コメント

博多~鳥栖って、僅か30km弱の営業キロの区間ですよね?

当面、鳥栖以遠の区間は、終点長崎まで狭軌走行区間(既存在来線と新線区間を走行)という計画前提になっている長崎新幹線。言い換えれば、たった30kmを標準軌で走行させるために、巨費を投じて専用のフリーゲージトレインを開発・投入しようとしている、って事です。

30kmなんて、京浜東北線の川崎から赤羽までくらいですよ!

今のご時勢、こんな馬鹿げた無駄公共事業が、具体的な所を市民に一切伏せたまま、静かに進行しているというこの現実。全く信じられません。

投稿: もりあき | 2010年8月31日 20時47分

 本当に変な話ですよね。意図的にぐちゃぐちゃになってる感じで,実態を知ろうと佐賀県や長崎県のWebサイトを見ても,ストレスが溜まるばかりです。

 交通相が示したのは,一見すると「(条件を満たさなければ)着工を止める」ということになっているけど,「(使えるかどうかは不明だが)フリーゲージトレインにはお金を出します」宣言としか読めないです。

 ホントにどうなっちゃってるんでしょうね。

投稿: 三日画師 | 2010年8月31日 23時57分

三日画師さんご指摘の通り、九州新幹線の新鳥栖駅は、現行の長崎本線と直交する線形になっています。

この新駅の退避側線を延長して、佐賀方向に分岐させるのが、長崎新幹線のルートになる訳ですが、この新幹線を、最初の停車駅になるであろう佐賀駅よりも手前で現在の長崎本線に合流(もちろん合流地点にゲージ変換基地を併設)させようとすると、線形の関係から、限りなく佐賀駅に近いポイントでの合流となります。

この結果、新線(標準軌)建設区間は、約50km程になりそうです。

まあ、30kmが50kmになったくらいでは、大して変わり映えはしません。問題は、この合流点から、既に着工区間となっている武雄温泉~諫早の、武雄温泉駅までの距離です。

途中に佐賀駅を挟んで、その予想距離は、たったの40km!

つまり、武雄温泉~諫早の長い山岳区間さえ出来上がってしまえば、フリーゲージトレインがどうなろうが、後は佐賀平野を走る平坦で工事の楽な40km区間と、諫早~長崎の25km程度のトンネル区間さえ仕上げてしまえば、あっという間に全線フル規格の長崎新幹線が一丁上がり!となる訳です。

これはもう、明らかにフリーゲージトレインなんてものは、「方便」という以外の何者でもなさそうです。

投稿: もりあき | 2010年9月 1日 01時38分

 そうそう,そうなんですよ。

 スーパー特急方式(これが怪しさ臭ぷんぷん)として高架線が着工されている武雄温泉〜諫早の新線区間ができてしまえば,あとは,ちょいちょいと工事して,いつ線路をフル規格に変更するかどうかって話になるだけです。
 某久間氏の笑顔が浮かんできます。

 でも,そういう話は正式な文書のどこにも見あたらないですね。

投稿: 三日画師 | 2010年9月 1日 05時35分

あくまで私の勝手な推測ですが、あと数年して、武雄温泉~諫早の土木工事が完成に近づいた(レール敷設の直前)頃、長崎新幹線全線を山形・秋田新幹線同様の「ミニ新幹線方式」に切り替える、という話が出てくるんじゃないかと睨んでます。

新在合流点~佐賀~肥前山口は、既存の複線区間を利用して新在の単線並列に、肥前山口~武雄温泉~佐世保と、諫早~長崎(現川新線)は標準軌に改軌、という具合に落着させる訳です。

こうすれば、JR西日本の山陽新幹線区間への乗り入れも、博多から山陽区間はミニ区間専用の標準軌車両とN700系の併結運転で、問題無く実現出来ますし(山陽区間での停止位置見直しやホームドア改良は必要ですが…)、おまけに佐世保までへも新幹線車両を乗り入れさせる事が出来る、という一石二鳥が実現するからです。

武雄温泉~諫早の新線建設が早々に決定した背景には、スーパー特急、ミニ新幹線、どちらにどう転んでもいいけど、「結局は全線整備するんだよ」という方向に話を持って行こう、という意思が強力に作用している、としか思えませんね。

投稿: もりあき | 2010年9月 1日 11時58分

 ミニ新幹線方式への変更ですか。確かに,そういうこともありそうですね。もう何があってもおかしくない,という覚悟が必要かもしれません。

 ずいぶん前に,「まずは着工することが重要。着工してしまえばどうにでもなる」というような発言を聞いた記憶があって,まさにそういう方向になってますね。

投稿: 三日画師 | 2010年9月 1日 23時42分

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