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2010年6月 1日

とてもなだらかな阿武隈高地の分水嶺(分水界)

 福島県の阿武隈高地を走る磐越東線は,「ゆうゆうあぶくまライン」の愛称がつけられているが,鉄道ファンには人気のない,非常にマイナーな路線である。
 近年には,並行して走る磐越自動車道に長距離客をほとんど奪われてしまい,列車本数が激減してしまっている。

 そんな磐越東線の唯一の見どころは夏井〜小川郷間の渓谷沿いの車窓だが(個人的には要田−神俣間に続く特徴のない里山の風景が好きだ),実は路線のマイナーさに負けない,マイナーで面白いモノがある。

 まずは磐越東線菅谷(すがや)駅付近の地図を見てほしい。
 実は菅谷駅は母方の実家があるので,結構頻繁に乗り降りした想い出の駅である。

とてもなだらかな阿武隈高地の分水嶺(分水界)
 [国土地理院 地図閲覧サービス2万5千分の1地形図:上大越(福島)]

 地図の中心にあるのが菅谷駅。磐越東線が左上から右下にかけて通っている。

 画面の右上,太子堂付近から菅谷駅方向に流れているのが入水(いりみず)川である。この川は,この地図の右上方向にある入水鍾乳洞から流れ出た水である。入水鍾乳洞の下にはニジマスの釣り堀があって,そこのニジマスが雨が降ったりしたときに少しずつ逃げ出して,この大子堂のあたりでもニジマスが悠然と泳いでいたりする。

 その入水川は,菅谷駅の近くでちょうどT字路のように,二手に分かれている。ここがポイントである。

 T字路を南側(地図上では右下側)に流れる水は,やがて夏井川となり,阿武隈高地の東側に深い渓谷を刻んだ後で太平洋に流れ込んでいる。

 もう一方,菅谷駅前からT字路を北西の沖田,椚塚側に続いている水はどうなっているのだろうか。

 磐越東線の西側に原屋敷という集落があり,その北側に川が集まっている。
 等高線をよく見ると,原屋敷の西側の川は西へ行くほど標高が高くなっており,写真の左側(西側)から水が流れ込んでいることがわかる。
 菅谷駅前から流れた細い水路の水と,原屋敷の西側から流れてきた川が集まり,牧野川となって地図の北側に流れていくのである。この牧野川は船引に入って大滝根川となり,三春町の三春ダムに貯水された後で,阿武隈川へと,ちょうど阿武隈高地の西側の起伏の少ない渓谷を流れて行く。

 つまり,磐越東線菅谷駅前の,なんということはない水路のT字路は,宮城県南部から福島県に広がり,茨城県北部にまたがる大きな阿武隈高地の分水嶺(分水界)になっているのだ。
 ここの分水嶺は,水が少ないときにはほとんどの水は夏井川系に流れ,雨が降ったりなどして水の量が増えると牧野川から阿武隈川に流れる水が増えるという状況だという。

とてもなだらかな阿武隈高地の分水嶺(分水界)
 磐越東線菅谷駅。写真の右側が夏井川に沿って下っており,写真の左側が牧野川方向に下っている。見た目はほぼ平坦だ。

 磐越東線に乗って車窓から川の流れを見ていると,大きな起伏やトンネルがないのに,いつの間にか川の流れが反対向きになる。
 大した話ではないが,実は意外に珍しい話だと思う。

とてもなだらかな阿武隈高地の分水嶺(分水界)
 蛇足ながら磐越東線の磐城常葉駅。ホームに停車する2両編成のキハ110系ディーゼルカーの左側に,とても良い感じの木造駅舎がある。
 駅前の家並みの裏側を牧野川が流れている。

# 写真を2枚追加してみた(6月1日)

# 以下,さらに2枚の写真を追加(6月14日)

とてもなだらかな阿武隈高地の分水嶺(分水界)
 菅谷駅の東側にある仙台平(せんだいひら)からの俯瞰(2000年8月撮影)。
 中心に見える集落が沖田,椚塚あたり。手前に写る木々の上にちらっと見えるのが菅谷駅。撮影している足元に入水鍾乳洞があり,流れ出た水が入水川となって菅谷駅方向に流れ,一部が写真右手の方向の牧野川に流れて行く。

とてもなだらかな阿武隈高地の分水嶺(分水界)
 仙台平から南に視線を移すと,神俣(田村市滝根町)の集落が見える。入水川の流れのもう一方は夏井川となって,神俣の集落の中を通り,写真の奥の太平洋へと流れて行く。

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コメント

昔の話ですが、2度ほどオートバイで福島県南部から宮城県南部まで、阿武隈高地を縦断した事がありました。この高地は、本当に長閑な山里風景がどこまでも続く、素敵な所ですね。

細い道、なだらかな峠、高みから望む田圃や畑、和牛の放牧地や家畜小屋、そして遠くに聳える大滝根山。湯岐や志保の湯、母畑などの温泉を訪ねながら、ゆったりとした気分で2~3日を過しました。いいリフレッシュでした。

なだらかな山塊とは対照的に、意外な程急峻な崖を伴った渓谷が多いのも、阿武隈高地の特徴の一つではないでしょうか。

いわき市周辺には所用でたまに出かけますが、件の磐越東線沿線の夏井川渓谷や、これに続く支流の背戸画廊、いわき中央インター近くの好間川の渓谷など、実に多くの急峻な渓谷を見る事が出来ます。

太古の昔、テーブル状の台地地形だった阿武隈高地が、幾多の河川争奪の繰り返しの末、深く刻み込まれていった名残かもしれません。侵食の末の残丘といわれる赤井嶽(閼伽井嶽)を見上げる度に、そんなロマンを感じます。

磐越東線は、個人的には磐越西線以上に、沿線風景にSL列車が似合う区間ではないか、と思っているのですが、沿線に会津若松の様なメジャー級観光地が無いせいか、そういった復活運転の計画を全くと言っていいほど耳にしません。少々残念であります。

投稿: もりあき | 2010年6月 2日 07時42分

 オートバイの旅は気持ち良さそうですね(季節にもよりますが)。

 阿武隈高地の太平洋側は,おっしゃる通り渓谷になっているところが多いですね。大地の部分(岩盤)が地上に出てから長期間(日本列島の誕生当初から地上に出っぱなしだったと思います)晒されて,浸食が進んでいるのだと思います。

 SLを走らせるにも目玉となる観光地がないんですよね。それに転車台が残っていないのも残念です。

投稿: 三日画師 | 2010年6月 2日 08時57分

こんにちは
2回目の訪問です。
今、三春ダムの流域界を探していたら、菅谷駅のところで迷ってしまいました。最初は牧野川から導水してるのかな?と思って、調べていたらここにたどり着きました。いやー素晴らしいです。
助かりました。見解どおり山中ではかなり珍しいと思います。で、地形なんですが大中小の起伏山地と起伏のある田園がとても特徴的と思います。
ぜひ現地へ行ってみたいです。

投稿: ちゅうちゅう | 2012年11月10日 14時37分

 ちゅうちゅうさん,コメントありがとうございます。
 三春ダムの流域界をみると,全体的には田園風景ですけど,田村市全体の排水が三春ダムに流れ込んでいて,流域界にこれだけ集落の多いところも珍しいのではないかと思います。

 現地は母の実家のあるところで,とてものんびりしたところです。のんびりするのが苦にならない方でしたらお薦めです。

投稿: 三日画師 | 2012年11月15日 02時34分

三日画師さん、こんにちは
この界隈の流域界を探すのに本当に苦心しております。
私の田舎はもっとのんびりしております。
なんせ、線路がありませんから。
その分自然が手つかずでいいですけど。
いつ行けるかな?

投稿: ちゅうちゅう | 2012年11月16日 09時38分

 阿武隈高地は,昔から山奥というものは多くなく,ほとんどが人の手の入った田舎ですから。
 谷戸には田んぼがありますので,流域界を詳細に調べようとすると,田んぼに水を引く地図には載っていない水路まで調べざるをえなくなりますね。
 うっかりすると,隣同士の田んぼが大滝根川水系と夏井川水系,移川水系に別れているなどということもありそうで,なさそうで,悩ましいですね。

投稿: 三日画師 | 2012年11月23日 06時06分

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