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2010年2月 2日

「アタシ」と「わたし」を歌い分ける山口百恵の凄さ

Momoe0051

 (このエントリーは,1月17日につぶやいたことに,多少肉付けしてまとめたものである)

 1月17日は阪神淡路大震災の日であるとともに,山口百恵生誕の日である。この日は山口百恵の音楽や映像に浸って過ごすのが一番だ。

 山口百恵の歌・言葉の使い方・表現・表情を見ていると,そのレベルの高さに衝撃を受けることがある。普段気づかずに聴いていると何気ないところなのだが,一度聴いてその裏側を見てしまったり,その凄さを知ってしまうと,この女性がわずか21歳で引退してしまったことが,日本の歌謡界にとっていかに大きな損失だったかを思わずにいられない。

■ 「アタシ」「わたし」の使い分け

 まずは,山口百恵の最後のライブ盤『伝説から神話へ Budokan…At Last』から,「プレイバック Part1」を聴いていただきたい。
 この伝説となったライブ盤『伝説から神話へ Budokan…At Last』は,引退後も最後のマイクを置くシーンなど,つまみ食い的に何度も放映されていて,見たことのある人も多いことだろう。

 百恵ファンの心情としては,このライブは最後の公演が続いていたこともあって声は荒れてガラガラ,緊張感からか例外的に音程も不安定なところが多いので,このアルバムを聴いて山口百恵を語ってほしくないという気持ちは強い。
 とはいうものの,残念ながらテレビの歌番組での歌唱は,時間短縮のために一部がカットされていたりして完全ではないので,『伝説から神話へ Budokan…At Last』から,「プレイバック Part1」をリンクさせていていただく。


◎ プレイバックPart1  《詞:阿木燿子,曲・編:馬飼野康》

 曲の内容は,あのとき彼に素直に抱かれれば良かった……と過去を後悔している歌である。

 驚くべきことに,曲の中で山口百恵は「私」という歌詞を,「アタシ」「わたし」と歌い分けている。歌詞を細かく咀嚼し,そこにドラマを見つけて表現した歌手を山口百恵以降ただ一人も見たことがない。

 「私」が出てくるのは以下の5カ所。

♪ 涼しいそぶりで私(アタシ)は嘘をついたの

♪あの夜が初めてだったの私(わたし)……

♪続きを聞きたい? 私(アタシ)と彼のその後ね

♪馬鹿だわ,私(アタシ)今も待ち続けているの

♪今度こそは素直な心で「Play Backしたいの」彼に言うわ私(わたし)……

 どうだろうか。
 嘘をついている自分,飾っている自分……「アタシ」
 素直な自分,純粋な自分……「わたし」
 こういうふうに歌い分けているのは明らかだ。

 このように,一曲の中にドラマを作ることが出来る歌手が少なくなっている。残念なことである。
 ちなみに,スタジオ録音版の「プレイバック Part1」では,また別の歌い分けになっていて興味深い。

 さらに,蛇足ながらこの「プレイバック Part1」は,「プレイバック Part2」の後のアルバム用に後付で作られた曲だと思われるのだが(正しくは,2011年出版の音楽制作ディレクター川瀬泰雄氏の『プレイバック 制作ディレクター回想記』に,シングル候補曲として同時に作られた楽曲であることが書かれている),そのアルバム『THE BEST プレイバック』は,ベスト盤の形式ながら,「プレイバック Part1」の他に「たそがれ祭り」というすごくいい曲が入っていて,地味に貴重品である。

Momoe0048

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