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2009年12月 3日

銀山温泉の賑わいは「つばさ」新庄延伸の効果か?

 新幹線つばさ 新庄延伸10年(朝日新聞)

 ……
 そんな中で、新庄駅から車で20〜30分の大石田駅が新幹線停車駅になった。効果は絶大だった。東京から銀山まで4時間かからない。マスコミの取材には「遠いようで近い」というキャッチフレーズを使った。尾花沢市によると、銀山温泉の08年度の観光客は31万6千人余で延伸直前の98年度より9%増えた。宿泊者数は08年度約9万5千人で7%ほど減ったが、景気低迷の長さを思えば健闘ともいえる数字だろう。

 10年がたった今、「延伸効果は銀山の一人勝ち」との言葉が温泉関係者から聞かれる。

 対照的なのは、大蔵村の肘折温泉だ。村によると、98年度約17万5千人だった観光客は、10年間で約2割減の約14万人に。そのうち県外客は約3万5千人で約17%落ち込んだ。
 ……

 山形新幹線の「つばさ」が新庄まで延伸されてから10年になる。当初から,在来線の線路をズタズタにする新幹線延伸(そもそも厳密には「新幹線」ですらないけど)だと個人的には思っていたが,それでも,山形県北部の人達の期待を背負った新幹線延伸だった。

 「企業や観光客の誘致に一定の成果はあった」「わずかではあっても,新幹線で観光客が増えたのは事実」と書かれているが,本当にそうなのだろうか。その分析は甘すぎやしないだろうか。

 Wikipediaに,山形新幹線が延伸されてからの新庄駅の乗車人員の推移が載っている。

  新庄駅乗車人員推移
  年度  一日平均乗車人員
  2000  2,373
  2001  2,345
  2002  2,290
  2003  2,213
  2004  2,044
  2005  1,960
  2006  1,881
  2007  1,810
  2008  1,752

 2000年以降,新庄駅の乗車人員は減り続けている。新幹線による観光客が増えているようには思えない。山形駅の乗車人員が2000年以降も11,000人前後で,ほぼ横ばいなのとは対照的である。
 新庄市や周辺自治体の人口減少の影響も大きいと思われるが,新庄駅を通る山形新幹線・奥羽本線・陸羽東線・陸羽西線の交通機関としての魅力が低下しているのは確実だ。

 また,「一人勝ち」の銀山温泉に人気があるのは,本当に大石田駅が新幹線停車駅になったことの成果なのだろうか。
 2006年の夏,銀山温泉を訪れたときの印象はだいぶ違っている。

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 [2006年8月10日]大石田駅バス停の時刻表。
 新幹線「つばさ」の停車駅である大石田駅のバス停から銀山温泉へのバスは一日に4本しかない。わずか4本である。Web等で銀山温泉への行き方を調べて大石田駅前に降りたった観光客は,このバス停の時刻表を見てびっくりするに違いない。

 大石田駅から銀山温泉まではバスで約40分。もちろん渋滞などはない。気楽にタクシーを使える距離ではないと思われる。

 銀山温泉は有名な温泉地なので,4本しかないバスはさぞかし混雑するだろうと思っていたら,このときに大石田駅からバスに乗ったのは,私のほかにもう一人だけだった。途中の尾花沢の前後では結構な乗降客があったものの,終点の銀山温泉のバス停まで乗り続けた乗客は大石田駅で乗った二人だけだった。

 バスの車内では,ひょっとしたら銀山温泉はものすごく寂れた温泉地なのではないかという不安を感じるほどだった。

 しかし,終点のバス停で下車したところで,すぐにそれは間違いだとわかった。銀山温泉から少し離れたところにある駐車場から歩いている人や,本来は指定されたクルマしか入れない温泉地までの細道に連なるクルマが,ハンパじゃなく多かったからだ。

 そう,銀山温泉の利用客のほとんどは,新幹線〜バスという公共交通機関ではなく,自動車で直接乗り入れているのだ。

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 [2006年8月10日]銀山温泉と銀山川

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 [2006年8月10日]銀山川の両岸に大小の温泉旅館が建ち並ぶ

 負け組と書かれている肘折温泉への交通アクセスはどうだろうか。肘折温泉へのバスは,山形新幹線の終点,新庄駅から出ている。新庄駅発の本数は,土日祝日で4本,平日6本で,銀山温泉とほぼ同じ。所要時間は約60分で銀山温泉よりも少し長いが,それほど大きな差とは思えない。

 となると,銀山温泉と肘折温泉の利用客の増減が,新幹線の効果の有無にある言うことはできない。想像だが,銀山温泉が載った印象的なポスターが人の目を惹いたとか,どこかのテレビ番組で人気タレントが銀山温泉を取り上げたとか,そういうことの影響が大きいのではないだろうか。

 新幹線関連事業への巨額の負担が自治体の財政を圧迫したことから,新幹線の効果を否定的に考えたくない気持ちはよくわかる。また,新庄以南の線路に在来線の線路を戻して(三線軌条にして),陸羽西線や奥羽本線の横手・湯沢からの列車が山形まで乗り入れるのを復活するのは難しいだろう。

 実際に新庄市に住んでいるわけではないので,まったく見当外れのことを書いているかもしれない。しかし,新幹線関連事業による地域活性化という希望が,カッコいいデザインではあるが,こんなに立派な必要があるのかと思われるほどの駅舎を作り,「つばさ」を走らせるために新庄や山形で在来線の線路を分断してしまったことを,多少は振り返ってみる必要があるのではないだろうか。

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 [2006年8月9日]新庄駅

060809164857
 [2006年8月9日]新庄駅

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