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2016年8月19日

山口百恵は過大評価されているのか?

Momoe

 1980年の引退から35年以上経っても,いまだにメディアに取り上げられる百恵ちゃん。1990年代のCDバブル期でさえ山口百恵のCDが盛大に復刻することはなく,熱烈なファン以外の人々の記憶の中からは,そのまま消えてしまうかと思われていたのに,ここ5年ぐらいについて言えば,むしろメディアに取り上げられる回数が増加している印象さえある。ずっと百恵ちゃんのファンをやっていても驚くばかりである。

 YouTubeをはじめとするネット動画(もちろんその多くは厳密に言えば違法動画)の普及により,現役当時の映像が誰にでも簡単に見られることが,山口百恵の人気復活の引き金になっていることは言うまでもない。

 私は今まで『山口百恵と松田聖子・AKB48を比較する』『ピンク・レディーとAKB48を比較してみた』『オリコン1位が4曲・山口百恵はホントに凄かったの?』などの記事で,当時の山口百恵の人気が,世の中にたくさん存在する「○○曲連続オリコンチャート1位のアーティストたち」と比べても遜色がないばかりか,上回ってさえいるということを書いてきた。

 客観的な数値を元にした比較に徹して,主観に偏らず比較しているつもりではあるが,ブログ記事に「山口百恵は過大評価だ」「オリコンチャートで上位であっても実際の人気は別」というコメントが付いたり,YouTubeで『松本人志「山口百恵はそれほどでもない」 』という動画(音声のみだが)を見たりすると,反論したくなってしまう。

 そこで今回取り上げるのは,集英社の芸能誌『明星』である。ライバル誌だった『平凡』とともに,1970年代には売上げ部数が100万部を越えていた。その『明星』が毎年行っていた人気投票のランキングを比較してみる。人気投票なので,なかなかレコードを買えなかった当時の中高生の人気を反映したランキングになっていると思われる。

10_1978

『明星』誌 紅白人気投票ベストテン推移
〔『明星』の人気投票ランキング(クリックすると拡大)〕

 雑誌『明星』が人気投票を復活したのは1972年で,そこから1980年までのベスト10を抜き出した。Googleで検索したところ,1964年のデータと1982年の中間発表データが見つかったので,それを追記している。
 誌面ではランキング30位まで発表されていて,それがなかなか興味深いのだが(オリビア・ニュートン・ジョンやスージー・クアトロ,キッスが入っている),煩雑になるのでベスト10に限定した。
 ちなみに,山口百恵がデビューした1973年の順位は11位で,惜しくもベスト10に入っていない。

 1972年から1980年までの主なアイドルの人気投票ランキングをグラフ化してみた。

Photo

 雑誌『明星』の人気投票ランキングから言えることを箇条書きする。

・山口百恵の人気はダントツ
・レコードが爆発的に売れたピンク・レディーも2位止まり
 子供に人気=財布を持っている親がレコード購入か
・山口百恵が過大評価というより,桜田淳子が過小評価
・1975年に淳子が百恵を抜くのはオリコン順位と一致
・榊原郁恵と石野真子の人気は(個人的には)予想外
・キャンディーズの人気は安定していた
 「微笑がえし」だけが爆発的に売れたわけではない
・白組の新御三家の人気は盤石(特に郷ひろみ)
・三浦友和の順位が高いことにびっくり
 1975年から18位→4位→2位→7位→13位→16位

■ 結論

 山口百恵は1980年の引退時点でレコードを一番多く売った歌手であるだけでなく,現役当時からアイドル的な人気も高かった。引退を発表して人気が盛り上がったのでもなく,引退後にメディアに登場しないから神格化されているのでもない。

 ブログにコメントをいただいたように,1970年代の人気はオリコンランキングだけで測ることはできない。当時はレコードが高価で中高生が気楽に買えるものではなかった。だからみんなラジオの音楽番組で好きな曲を必死でエアーチェックし,カセットテープに録音して繰り返し聴いた。

 レコードやカセットテープを聴くためにはレコードプレーヤーやカセットデッキが必要で,歌謡曲は室内で聴くものだったし,テレビで見るものだった。テレビでは生バンドによる生演奏で歌手が歌う姿を見ることができたし,贅沢なことに当時は生放送も多かったので,ライブと同様の臨場感や緊張感も感じることができた。ミュージックDVDを買ったりしなくても,テレビでそれを楽しめたのである。

 ソニーが初代ウォークマンを発売したのは1979年であり,レコードの音楽をカセットテープに入れて外で聴くことが一般的になったのは,1980年代になってからである。街に貸しレコード店が一気に増え,1982年にはCDが登場。カセットテープにダビングして聴く環境が整ったことで,レコードやCDの売上げは爆発的に増加した。そんな時代と1970年代をレコードの売上げ枚数で比較することはできない。

 雑誌の人気投票ランキングで当時の人気がすべて判断できるわけではない。しかし,当時のデータを少しでも多く集めれば,忘れられつつある当時の様子が少しずつ見えてくることもまた確かである。

10_1979

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コメント

百恵さんが映画・ドラマ・歌とすべての分野で
70年代のトップスターだったことは疑いのない事実ですし、
天地真理やピンクレディーのような人気の浮き沈みも
なく、非常に人気基盤が安定していたことも間違いないと思います。

ただし、明星の人気投票では青年男性や児童など
読者層と異なる世代の傾向を把握できなかったり、
組織票に左右されたりという問題もありました。

例えば、
・キャンディーズの順位が低めに出ている
・青年誌でトップレベルの人気だった木之内みどりが入っていない
・アイドルとしての賞味期限切れの70年代後半にも
アグネス・チャンがランクインしている
・沢田研二の順位が異常に低い
・新御三家では常にひろみ>秀樹だが、
実際のチャートでは秀樹が上回った年も多い
・渋谷哲平・川崎麻世が一度もランクインしていない
・アイドル売りではない水前寺清子・渡辺真知子・和田アキ子・アリスがランクインしている

投稿: BOY | 2016年8月21日 14時35分

 コメントありがとうございます。

 本記事は,以前ブログへのコメントにあった,「レコードセールスには反映されない中高生の人気(意訳してます)」に対応するものですので,あえて青年男性や児童の傾向が把握されないものを選んでいますので,おっしゃるような疑問は考慮外です。

 本文中に,

> 雑誌の人気投票ランキングで当時の人気がすべて判断できるわけ
> ではない。しかし,当時のデータを少しでも多く集めれば,
> 忘れられつつある当時の様子が少しずつ見えてくることも
> また確かである。

と書いた通りで,当時の人気をそれひとつで一律に決められる指標はないのではないかと考えています。

 沢田研二の順位が低いのは,ジュリーのアイドルとしての人気がザ・タイガース時代がピークで,1970年中盤以降は既に「大スター」だったからではないかと推測しています。

 また,水前寺清子や和田アキ子がランクインしているのは『明星』の人気投票が復活した直後の1972年と1973年ですので,『明星』がアイドル誌に強く転換する前なのではないかと思われます。

 木之内みどりは,たぶんグラビア誌で人気の手塚さとみ,桂木文,アグネス・ラム,夏目雅子,古手川祐子,紺野美沙子あたりとファン層が重なるように思いますが,トップレベルだったかどうかはよくわかりません。

投稿: 三日画師 | 2016年8月23日 23時30分

郷ひろみさんが、そんなに祭り上げられてますか?
ってことじゃないでしょうか?

投稿: ち | 2016年11月26日 21時22分

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