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2016年8月 1日

コンパクトシティは撤退戦である

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  拙ブログの管理ページでは,GoogleやYahoo!といった検索サイトからどのような検索キーワードでアクセスしてきたかのランキングを見ることができる。SSLを適用した検索結果ページのキーワードは表示されずに「not provided」となるので,検索キーワードがわかるのは全体の10%前後しかないが,おおよその傾向は把握できる。

 ずっと気になっているのは,「コンパクトシティ_富山_失敗」とか「コンパクトシティ_アウガ_失敗」「コンパクトシティ_失敗例」という検索キーワードでのアクセス数が非常に多い件である。
 いかにもコンパクトシティ施策が失敗してほしいかのような意図を感じてしまう。

 2015年1月30日の拙ブログ記事『富山市の「コンパクトなまちづくり」は失敗したのか』,および2015年2月3日の『富山市の「コンパクトなまちづくり」は失敗したのか ── その2〔参考資料編〕』では,富山や青森がコンパクトシティ政策を進めているのは,郊外まで広がった市街地のインフラ(道路,電気,ガス,上下水道)に関して,将来的に更新・維持管理費用を捻出することができなくなるのが確実な状況であり,このままだと財政破綻まっしぐらであるから,「コンパクトシティ」を進めるしかない状況になっていると書いた。

 なぜか日本のコンパクトシティ施策は,衰退した中心商店街・中心市街地の活性化を核にして語られることが多い印象がある。地方都市の中心商店街の衰退とバブル経済崩壊後の財政難が,ほぼ同時に地方都市を襲ったため,藁をもつかむ思いで「コンパクトシティ」に飛びついてしまったのかもしれない。

 もともとのコンパクトシティの概念は,将来にわたって持続可能な都市開発という考え方に基づいている。中心商店街の活性化を意図したものではなく,地球温暖化のような環境問題を端緒にした,都市のあり方についての概念である。青森の「アウガ」の失敗がコンパクトシティの失敗を意味するわけではないのである。

 たとえば,郊外にまで路線を延ばしてきた鉄道事業者が,人口減少社会がより一層進展することを予想して,さらなる郊外への延伸計画を白紙に戻し,不採算路線を徐々に廃止,主要路線の車両を省エネ車両に置き換えていこうとする施策,それこそがコンパクトシティの概念なのである。

 下図は,福島県白河市の公共下水道事業計画図である。同様の事業計画図は各市町村が公開しているはずなので,それを見てほしい。

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〔「福島県白河市公共下水道のページ」より〕

 灰色のエリアは既に整備が完了している第1〜5期事業区域,赤色は2017年度(平成29年度)までに下水道整備を完了させる区域,黄色のエリアは将来的に下水道を整備しようと計画している区域である。
 つまり,中心市街地ではほぼ下水道の整備が完了し,その後は重要な区域から順番に整備している段階にある。計画エリアはまだまだ広いので,黄色いエリアがたくさん残っている。

 この白河市も,今後はより一層の人口減少社会となる。1980年頃から整備し始めた中心市街地の下水道は,既に老朽化が進み,補修・維持費用は増加し始めているだろう。人口が減少して財源・予算が少なくなり,維持・整備費用が増大する中で,このまま黄色の区域の下水道新設工事を進めていけば,早々に財政破綻するのは目に見えている。

 過去の計画で,将来的に市街地が黄色の区域まで大きく広がることを想定していたとしても,都市のあり方を見直して,黄色の部分で事業の縮小を図る。必要であれば,既に下水道事業が完了した灰色の区域であっても,維持費用を徐々に減らし,いずれは廃止することも考える。撤退するのである。これがコンパクトシティ施策だ。

 下水道事業以外でもまったく同じである。

 また,「コンパクトなまちづくり」を進めている富山市が,郊外に三井アウトレットパークを出店させず,三井アウトレットパークは富山市ではなく小矢部市にオープンしたことも話題になった。

 富山市がどのような判断で三井アウトレットパークの出店を断ったのかは不明である。出店場所によっては(土地が格安の場所ではなおさら),新たに道路拡幅・道路新設やガス,上下水道の整備が必要になる。そのようなインフラについては,三井アウトレットパーク側は費用負担してくれない。それらインフラの維持管理費用は富山市にとって新たな負担となる。

 コンパクトシティの概念と郊外のショッピングモールは相反しない。富山地鉄市内軌道線の富山大学五福キャンパス内延伸にあわせて,たとえば下野地区にショッピングモールを整備し,市内軌道線をモール内に引き込むのもありではないかと思う。富山市は,今後の都市のあり方と照らし合わせて,出店を認めないという判断を下したのだろう。

 ずいぶん前のBLOGOSに興味深い記事があった。2015年2月27日の『「コンパクトシティ」議論のボタンのかけ違い――「コンパクトシティ」は都市問題ではなく農業問題である』という記事だ。コンパクトシティは都市問題ではなく農業問題であるという視点が興味深い。

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BLOGOS『「コンパクトシティ」議論のボタンのかけ違い――「コンパクトシティ」は都市問題ではなく農業問題である』より〕

同じ位置で振り返るとこんな感じ。奥に集落が見える。というか、コンパクトシティによってこんな道路を廃止にして、本当に道路の維持管理費の削減につながるのだろうか。

 前述の福島県白河市の公共下水道事業計画図で黄色に塗られているのが,このような田園地帯の集落である。白河市に限らず,このような田園地帯の集落も都市計画区域に含まれていて,将来的に下水道や都市ガスの整備が計画されているところが多い。

 BLOGOSの記事には,『コンパクトシティによってこんな道路を廃止にして、本当に道路の維持管理費の削減につながるのだろうか』とある。大きな勘違いがあるようだ。農業のために道路は必要に決まっている。廃止するのは,このような地域における下水道や都市ガスの整備計画である。

 既に下水道や都市ガスが整備されている場合は別途考えるとして,このような集落では下水道の代わりに合併浄化槽,そしてプロパンガス(LPガス)を将来的にも使い続けていただくこととする。下水道や都市ガスといった都市インフラがこのような農村集落にまで拡大することを阻止し,遠い将来,個別に撤退が始まったときに,無用なインフラ維持・整備コストが生じ続けることを避ける。

 コンパクトシティは撤退戦である。「アウガ」や「総曲輪フェリオ」「なかいち」が失敗したからといって,立ち止まるわけにはいかないのだ。

【関連記事】
2015年1月30日:富山市の「コンパクトなまちづくり」は失敗したのか
2015年2月3日:富山市の「コンパクトなまちづくり」は失敗したのか ── その2〔参考資料編〕

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