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2015年11月17日

杭打ちデータ改竄の先にある問題の本質

 杭打ち 業界全体調査へ データ改ざんで国交省が方針(2015/11/17 日経新聞)

 杭(くい)打ちデータの改ざんが相次いで発覚したことを受け、国土交通省は16日、杭打ち業界全体の実態を調査する方針を固めた。旭化成建材(東京・千代田)とジャパンパイル(東京・中央)でデータ流用が見つかり、2社以外にもないか調べる必要があると判断した。調査方法などは今後詰める。

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 杭打ちデータ改竄問題が変な方向に行っているような気がする。

 横浜市都筑区の分譲マンション「パークシティLaLa横浜」に傾きが生じたことから,杭の長さ不足(強固な地盤まで達していないこと)が判明,杭打ちデータの改竄が問題となった。

 一部の杭の長さ不足がマンションの傾きの原因なのか,それとも当該マンションにおける杭打ち工法の(設計段階での)選択が間違いだったのか,施行に不具合があったのか,問題を切り分けて検証しなければならないはずだ。

 それなのに,データ改竄の有無の調査にばかり追求の矛先が向かっており,違和感を感じる。

 なぜ杭打ちデータの改竄が必要だったのだろうか。データの記録忘れ,記録用紙の紛失……等々,その可能性はあるだろう。しかし,一般的に行われている杭打ち工法そのものに問題はないのだろうか?

 土木建築に素人の私が知る範囲で,杭打ち工法は大きく2種類に分類される。

 ひとつは,場所打ち杭といって,掘削した穴の中に鉄筋を組み,そこにコンクリートを流し込む工法だ。この場合,強固な地盤までの深さが想定と違っていても,その分だけ深く掘削して施工現場で鉄筋を長めに組むだけで済む。

 もうひとつは,建築現場とは異なる杭工場で作った杭を施工現場に運び込み,ボーリングした穴に圧入したり叩き込んだりする既製杭工法である。横浜市都筑区のマンションはこちらの工法だった。

 この工法では,あらかじめ設計者が地質調査の結果などから既製杭の長さを決定することになる。強固な地盤までの深さは,杭打ちの本数全数分ボーリングして調査すれば明確になるだろうが,そんなに手間を掛けることはできない。地盤が平坦で均一であれば問題は少ないが,傾いていたり,部分的に深くなっているところには対処しにくい。
 ともあれ,杭工場では数週間かけて設計通りの長さに杭を作り上げる。

 さて,施工現場に設計通りに作られた既製杭が運び込まれ,杭打ち工事が始まる。まずは杭打ち用の穴の掘削が行われる。既製杭工法では掘削力の変化で地盤に達したかどうかのデータ記録が必要だ。地盤の深さが想定通りならば,データの記録忘れがなければ問題ない。

 ところが,あれっ? 想定の深さを過ぎても地盤に達しないぞ……という事態が起こりうる。上に書いた場所打ち杭ならば問題ないが,既製杭の場合は困ったことになる。既に杭が所定の長さで出来上がっているからだ(戸建て住宅用の鋼管杭などではジョイントで継ぎ足せる杭もあるようだ)。

 コンプライアンスが徹底していれば,すぐに修正版の既製杭が発注され,同時に工期の調整も行われるだろう。しかし,施工業者が元請け/下請け/孫請け構造になっているから複雑だ。杭打ち施工業者の作業員が「杭の長さが不足している」という声を上げたとしても,それをかき消す力が働かないとも限らない。

 コンクリートは圧縮に強く引張に弱いという特徴がある。そのため,圧縮には弱いが引張に強い鉄筋と組み合わせて鉄筋コンクリートとして使用される。既製杭のように専用工場で鉄筋コンクリートを作る際には,あらかじめ鉄筋を引っ張った状態でコンクリートと固めることによって,コンクリートに圧縮応力がかかったままの状態にすることができる。これをプレストレスト・コンクリートといい,鉄筋を組んだあとでコンクリートを流し込むだけの鉄筋コンクリートよりも高強度になる。

 単純に強度を比較すれば,場所打ち杭より既製杭のほうが杭自体は高強度だろう。杭打ち工事の前,あるいは平行して杭を製造できることから,長さ不足等の問題が生じなければ工期の短縮効果も期待できる。

 しかし,横浜市都筑区の現場のような地盤に傾斜がある場所で,既製杭を採用したことに問題はなかったのかどうか,(設計ミスにより)既製杭の長さが足りなかったときのリカバリー方法は確立しているのかどうか,記録データ改竄の先にある問題の本質にも目を向けてほしい。

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