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2015年8月22日

ピンク・レディーとAKB48を比較してみた

Akb482

 ピンク・レディーは社会現象だった。私は質実剛健がモットーの男子校の高校生だったが,文化祭では机を並べたステージの上で男子も市内の女子高生も,振り付けをまねて踊り狂った。幼い子供までもが踊った。

 シングル9作連続オリコン1位,10曲連続ミリオンセラー。こんな爆発的な熱狂は二度と起こらないだろうと思った。

 今ではAKB48が26作連続オリコン1位,20曲連続ミリオンセラーなのだとか。こりゃ,開いた口がふさがらないほど凄い。この数値だけを見れば,ピンク・レディーを見たこともない人が,まるで比較にならないと思うのは無理もない。

 だが,AKB48は社会現象になっているだろうか? 一部の熱狂的なクラスターが盛り上がっているだけで,その外にいる人にはリーチしていないのではないだろうか。AKB48の人気が,ピンク・レディーのような圧倒的な社会現象になっている,私にはそんな感じがしない。なぜだろう?

 その原因を探るため,ピンク・レディーとAKB48のオリコン週間シングルランキングの推移をグラフにしてみた。

ピンク・レディーとAKB48のオリコン順位の推移

 青がピンク・レディー,赤がAKB48である。
 横軸が週単位の時間軸(年月週),縦軸がオリコンランキングで上が1位〜下が20位となっている。活動時期が異なっているので,両者が初めてオリコンランキング1位となった週を一致させている。

 グラフを見て,どのように感じるだろうか。

 ピンク・レディーの活動期間がわずか5年弱,オリコンランキングにチャートインしていたのが約3年と短かったのに対して,AKB48の人気が5年以上も続いているのは凄いことだと感じる。
 AKB48のグラフを見ると,20位にも入っていない期間がずいぶん長いことが目につく。ベスト10に入っている期間は,全体の3分の1の週しかない。それに対して,ピンク・レディーはほぼ毎週のようにベスト10に入っていたことがわかる。

 こんなことを言っている人がいた。“昔の「ザ・ベストテン」のような番組があったら,今は毎週AKB48か嵐が1位になって面白くないね”。
 どうやらそれは間違っているようだ。「ザ・ベストテン」が今も続いているとしたら,AKB48が10位以内にランキングされて番組に登場するのは,月に1回か2回ということになる。約2か月に1度,新曲が“初登場1位”として登場し,3週間程度ベスト10圏内に留まると,その後は当分出場なし……というペースだ。

 それでは1977年と2014年のオリコン週間シングルランキングがどのように違っているのかを見てみたい。1977年と2014年の4月〜5月末の期間に,オリコン週間シングルランキング10位以内に入った曲の推移をグラフにしてみた。横軸が週単位の時間軸,縦軸は上が1位〜下が20位である。
 Googleスプレッドシートの制限で,ラインの数が多くなりすぎて右半分がモノクロになって見づらいが,勘弁していただきたい。

1977年4月〜5月のオリコン順位の推移
〔1977年4月〜5月のオリコンランキング順位の推移〕

 1977年4月〜5月のオリコンランキング1位争いの熾烈さが見て取れる。ピンク・レディーの『カルメン'77』が前月から1位を連続していたが,4月中盤から急激に順位を上げてきた清水健太郎の『帰らない』が5月になって4位から一気に逆転して1位を奪取し,2週連続1位。その間,ずっと2位に甘んじていた山口百恵の『夢先案内人』が5月中頃にやっと1位になるも,翌週は4月からじっくり順位を上げてきたさだまさしの『雨やどり』がとうとう1位となり6月まで連続1位を続ける……
 ベスト10以内に上り詰め,数週間はベスト10を維持したものの上位陣に跳ね返され,そのままランキングを下げていってしまう曲も多い。この時代の「オリコン1位」の壁は厚いのだ。

 以前にも書いたが,“誰もが知っているヒット曲”となるには,グラフの中でランキングを上っていく右上がりのカーブがとても重要だと考えている。新曲がランキングの下のほうに登場し,徐々にランキングを上っていくとともに,世の中でどんどん聴かれるようになる。そして,多くの人が“これいい曲だな”と感じるようになった曲がランキング1位になる。誰もが知っていて,誰もが口ずさめるような曲には,このプロセスが必要なのだ。

2014年4月〜5月のオリコン順位の推移
〔2014年4月〜5月のオリコンランキング順位の推移〕

 2014年4月〜5月のオリコンランキング順位である。
 横軸がほぼ同じスケールだとは思えないほど,1977年とはグラフのかたちが異なっている。

 各週のランキング1位曲はすべて“初登場1位”だ。1位曲だけじゃない。ベスト10登場曲の多くが初登場である。ベスト10の全曲が初登場の週もある。かつて“初登場1位”はめったにない快挙だったが,現在はほぼすべてのランキング1位曲は初登場1位である。
 初登場でベスト10に入った曲のほとんどが,翌週には20位以下に消えてゆく。抜きつ抜かれつのランキング争いはない。ランキング1位になった曲が,翌週はやっとベスト10に残る程度。3週連続でベスト10に入り続けている曲は,これだけたくさんの曲がベスト10にあるのに,この期間わずか4曲しかない。AKB48と嵐しか出られなくなるから「ザ・ベストテン」が続けられないのではなく,毎週初登場曲ばかりで,しかも翌週には登場しなくなるから「ザ・ベストテン」のようなランキング番組が成立しないのである。

 この9週間の初登場1位曲は,『高嶺の林檎』,『気づいたら片想い』,『Yes we are/ココカラ』,『時空を超え 宇宙を超え/Password is 0』,『ええじゃないか』,『GUTS!』,『泣いてもいいんだよ』,『King&Queen&Joker』,『ラブラドール・レトリバー』である。正直なところ,私は一曲も知らない。

 さて,話をピンク・レディーとAKB48に戻そう。

 ピンク・レディーがオリコン週間シングルランキング1位になったのは9曲,AKB48は26曲である。AKB48のほうが圧倒的に多い。しかし,最初に示したオリコン週間シングルランキングの推移のグラフは,ピンク・レディーを示す青い色のほうが抜きん出ているようにも見える。なぜだろうか?

 AKB48のオリコン1位曲は26曲だが,すべて次の週に1位から陥落しており,ランキング1位の期間は26週ということになる。
 それに対してピンク・レディーは,『渚のシンドバッド』が8週,『ウォンテッド(指名手配)』が12週,『UFO』が10週,『サウスポー』が9週,『モンスター』が8週などと,何週も続けて週間ランキング1位にため,1位になっている週の合計は63週にもなる。ピンク・レディーの活動期間は短いが,ランキング1位となっていた期間はAKB48の2倍以上になるのである。

 1年は52週(しかもオリコンは2010年頃まで1月はじめの1週と2週をまとめていたので,1年間は51週だった)なので,ピンク・レディーは丸々1年2か月という途方もなく長い期間,ずっとランキング1位であり続けたことになる。

エアコンと電子レンジの使用電力の推移

 朝から晩まで動かし続けたエアコン(朝晩は200W〜日中は400W)と,朝昼晩の3回1500Wの電子レンジを動かしたときの,時間と電力のグラフを適当に描いてみた。実際はエアコンが一気に動いたときの電力はもっと大きいが,動かしっぱなしにしたときの電力は300W前後だろうし,電子レンジを1時間も動かすことはないから,あくまで参考としてみてほしい。

 電気代に影響するのはエアコンか電子レンジか?
 W[Wh] = ∫ P[W]・dt
 電気代は使用電力量[W×時間(Wh)]によって決まる。つまり,青いところの面積と赤いところの面積の合計が使用電力量であり,エアコンと電子レンジのどちらが電気代に影響するかを比べるには,青と赤の面積を比較すれば良い。
 この例では,エアコンの青は5300[Wh],電子レンジの赤は4500[Wh]となり,エアコンのほうが使用電力量が大きいことになる(厳密には不適当なところはあるが)。

 ピンク・レディーの全盛期は今となっては短い期間だったが,なぜ社会現象にまでなったのか。オリコン1位曲数の比較,オリコン連続1位回数の比較では,そのすごさが説明不十分なのはなぜか?

 それは大電力の電子レンジを一日に何回使おうが,それでブレーカーが落ちようが,電気代に大きく影響をするのは長時間動かし続ける電気機器のほうであるのと同様に,比較すべきは電力(=オリコンの順位)ではなく電力推移グラフの面積,つまり電力量(=オリコンの順位×期間)だからである。

ピンク・レディーとAKB48のオリコン順位の推移

 ブログが長くなってしまい,うっかりここまで読んでしまった方の画面で最初のグラフはスクロールしてしまっただろうから,もう一度同じグラフを示した。
 なぜ電力量の話をしたかというと,横軸に期間,縦軸にオリコンランキングを示したグラフにおいて,グラフの面積こそが「時代への影響力」を示すのではないかと言いたいがためである。

 時代への影響力 = ∫オリコンランキング×dt

 オリコンランキングを数値化するために,1位を20ポイント,2位を19ポイント…20位を1ポイントとする。20位以下はポイント無し。
 以上の条件で,ピンク・レディーの青とAKB48の赤の面積を算出すると,

 青(ピンク・レディー):2457[ポイント・週]
 赤(AKB48):     2013 2068[ポイント・週]

 私が想像していたほどの差にはならなかったが,2015年の現時点までの「時代への影響力」は,AKB48よりもピンク・レディーのほうが大きかったと言えるのではないだろうか。


山口百恵と松田聖子・AKB48を比較する』に続く……

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コメント

AKBの30年も前におニャン子クラブというのがありましたね。まさにこのAKBようなランキング変化をやっていたような気がします。
TV局へのリクエストの組織票、付録つき(といっても当時はかわいいものでしたが)レコード、さらに番組を通した購入時期の指定等々、「大人」が作った音楽ランキング番組を無意味なものにしてしまった功罪はありました。

今のAKBの曲の様相は、悪い言い方をすれば、耳触りのよいフレーズを散りばめた麻薬のようなものだろうと思うのです。恋愛コストの上昇に疲れちゃった中高生はおろか、阻害されたまま中年を迎えた者への「アラムート山」のような感覚に覚えます。AKBに対する継続性への執着
は、私自身嫌悪感があります。

ピンクレディーはある意味、時代が大きく変わるときに「お祭り」ととらえると、急速に終焉を迎えたのは然るべきものだったのでしょう。

投稿: ねこあたま | 2015年8月25日 14時42分

 そうですか,おニャン子クラブは購入時期の指定とかもやってたんですね。
 1979年までは10年間でわずか4曲だった「オリコン初登場1位」曲が,1983年頃から急激に増えて,おニャン子クラブばかりだった1986年は43曲,1987年は42曲もあります。実に,オリコン1位曲の95%が初登場1位です。どうも,この時期にレコード発売時期の調整などの手法が確立したんじゃないかと思っています。

投稿: 三日画師 | 2015年8月26日 06時41分

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