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2015年6月20日

映画『ラブホテル』のラストシーン……

 にっかつロマンポルノの『ラブホテル』は相米慎二監督による映画である。脚本石井隆による名美と村木のシリーズで,挿入歌として山口百恵「夜へ…」ともんた&ブラザーズ「赤いアンブレラ」が効果的に使われていることで知られている。ポルノ映画として見に行った客は驚いたであろう,とても切ない映画なのである。低予算・短納期ではあるが,とりあえず裸さえ出てくれば内容は自由に作ることができたという,にっかつロマンポルノらしい傑作だと思う。

映画「ラブホテル」波止場での再会
「赤いアンブレラ」が美しく流れる波止場での再会のシーン。名美が持っているのは,村木がプレゼントした山口百恵のアルバム『A Face in a Vision』。タクシーの中で,ラジオから流れてきた山口百恵の「夜へ…」がB面最後の曲として収められているアルバムだ。
(見覚えのあるこのレコード袋,これ新星堂の袋だね。懐かしい〜)

映画「ラブホテル」 切れた電話
 村木からもらったレコード『A Face in a Vision』の曲「夜へ…」を掛け,不倫相手に電話。切れた電話に向かって語り続ける名美。相米慎二得意の長回しとともに「夜へ…」が印象的に流れ続ける……

『夜へ…(作詞:阿木燿子,作曲:宇崎竜童)』
 修羅 修羅 阿修羅 修羅
 慕情 嫉妬 化身
 許して… 行かせて…
 繻子 繻子 数珠 繻子
 襦袢 朱色 邪心
 許して… 行かせて…
 妖しく 甘やかな 夜へ…
 優しく 柔らかな 夜へ…
 シュル シュル シュルル シュル
 夜へ… 夜へ… 夜へ…

映画「ラブホテル」遠近ツーショット

 さて,問題のラストシーンである。

 名美と村木がラブホテルで抱き合った翌朝,村木が消えていた。買い物袋を抱えて,いそいそと村木のアパートへの階段を下る名美。しかし,村木はアパートを既に引き払っていた。

 そこに階段を下ってくる村木の妻。“赤い靴 はいてた 女の子 異人さんに つれられて 行っちゃった”と「赤い靴」を口ずさんでいる。

映画「ラブホテル」階段ですれ違う女二人

 階段の途中で村木の妻と名美がすれ違う。そして,お互いに振り返る。「赤いアンブレラ」と「赤い靴」もすれ違う。“すれ違い”はこの映画のテーマだ。

映画「ラブホテル」花びらが舞う階段の踊場
〔画像はすべて日本映画専門チャンネルの「ラブホテルR-15版」より〕

 問題の階段での幻想的な桜吹雪のシーン。階段で遊ぶ子供たちと桜吹雪。うっかりドサっと大量に桜吹雪を落としてしまった失敗シーンのように見える不自然さが話題になった。

 花びらの下・階段の踊り場・子供たちが遊んでいる……,山口百恵のアルバム『A Face in a Vision』を聴いたことのある方なら,ここでドキッとするはずだ。映画の中でアルバム最後の曲「夜へ…」が使われているからではない。同じアルバムのA面一曲目「マホガニー・モーニング」を思い出すからである。

 映画の中にも,小道具としてアルバム『A Face in a Vision』が出てくることから,スタッフ達はこのアルバムの「夜へ…」以外の曲も聴いているに違いない。ひょっとしたら……いや,当然「マホガニー・モーニング」を意識したんじゃなかろうか。

「マホガニー・モーニング」の歌詞は次の通りである。
(作詞:阿木燿子,作曲:芳野藤丸)

 はらはらと散ってゆく花びらの下で
 年老いたその人は 一日座ってる
 起きたまま見る夢を 当ててみましょうか
(中略)
 階段の踊り場では 子供が遊んでいる
 褐色の肌の色
 そっと そっとしてあげて
 マホガニー・モーニング

 念のため書いておくと,私は映画『ラブホテル』を映画館でリアルタイムに見たわけではない。ずいぶん前に真夜中のテレビでやっているのを偶然見て感動し,当時使っていたβマックスのビデオやDVDが出るのを長年待ち続け,念願叶って10年ぐらい前にやっとDVDを購入したのである。

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