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2015年4月24日

放射能の不安をあおるマスコミ

 池袋の公園で高線量検出…2時間で年間被ばく限度(2015年4月23日 毎日新聞)

 東京都豊島区は23日、同区池袋本町4の区立「池袋本町電車の見える公園」で、滑り台付近の地表から最大で毎時480マイクロシーベルトの極めて高い放射線量が検出されたと発表した。国の除染基準値(0.23マイクロシーベルト)を大幅に超え、一般人の年間被ばく線量限度(1000マイクロシーベルト)に2時間強で達するレベル。何らかの放射性物質が地下に埋まっているとみられる。区は同日夜、公園を立ち入り禁止とし、池袋保健所に健康相談窓口を設ける一方、原子力規制委員会に助言を求め対策を講じる。

080601174535

 記事を読んで,なんだか不安をあおるような記事で悪質だな〜と思った。不安をあおる意図がないとしたら,逆に記者の知識不足・配慮不足が心配になる。

 毎日新聞の記事には,「数メートル離れると0.07μSV/hに下がる」という情報が書かれていない。一応「何らかの放射性物質が地下に埋まっているとみられる」とは書いてあるが,さらっと読むと,福島第一原発事故の影響じゃないかと心配する人が出てきそうな内容だ。雨樋や排水溝,すべり台の下は,雨水で流された放射性物質がたまりやすく,関東地方でも放射線量の高いホットスポットとして騒がれたという経緯もある。

 数メートル離れると0.07μSV/hに下がる,という情報があれば,「小さな放射線源が埋まっている」ことがわかり,福島第一原発事故の影響ではないことは明らかになる。放射線源は,医療用のものか非破壊検査等の工業用のものか,それはわからなくても,同じ公園で毎日遊んでいたからといって,子供たちに放射線による影響はなさそうだと安心することはできる。たとえでいえば,公園の片隅でいつもたき火をする人がいたとして,子供たちがたき火に接触しなければ火傷はしないし,公園で遊び回っているだけではたき火の暖かさを感じることはできないだろうと類推もできる。

 放射線源からはあらゆる方向に放射線が飛び出る。線量計は,放射線源が放出した放射線を受け取ることによって,放射線源の強さを算出している。放射線源と線量計のセンサー面が向き合う角度・距離・面積・表面形状によって,線量計が受け取る放射線量が変わるのだが,線量計を近づけたり,離したりして変化するのは(大ざっぱに)距離だけになる。空気などによる減衰を無視すれば,線量計との距離によって変わるのは,放射線源と線量計センサーの“形態係数”である。形態係数は,2つの面が幾何学的にどの程度の割合で向かい合っているかを示す数値で,まったく無関係な場合が0,2つの面が平行で無限に大きい場合や,完全に囲まれている場合が1になる。

 放射線源の形状を単純な半径 a の円とした場合,それと h だけ離れて平行に向かい合った微小面との形態係数は,

 f = a² / ( a² + h² )

で表される。放射線源の半径 a が無限大ならば f = 1,あるいは線量計の距離が 0 でも f = 1 となる(大ざっぱに)。距離 h を大きくすれば,f はどんどん 0 に近づく。

 線量計に示される数値は次のような式で表される。

 [線量計の数値]= f × k ×[放射線源の放射エネルギー量](kは定数)

 福島県内の放射線量が高めな地域では,線量計を地面に近づけても,地面から遠ざけても数値があまり変わらないのは,放射線源の半径 a が非常に大きいため,線量計の高さ h を変化させても形態係数 f ≒ 1 となるからである(もちろん,厳密には空気による減衰などの影響がある)。

 関東地方のように放射能汚染の少ないところのホットスポットで,地面に置いた線量計の数値が高く,地面から遠ざけると数値が大きく下がるのは,放射線源の半径 a が小さいためである。
 たとえば,地面から1メートル離したときに,線量計の数値が10分の1(0.1倍)になったとすれば,

 0.1 = a² / ( a² + 1.0² ) から,a = 0.33…となり,放射線源の大きさはおおよそ半径30cmだということがわかる。

 池袋の公園での計測値にこれを当てはめると,地表面での放射線量が480μSV/h,たとえば1メートル離れたところで0.07μSV/hという情報があれば,放射線源の大ざっぱな大きさが計算できる。

 ( 0.07 / 480 ) = a² / ( a² + 1.0² ) から,a ≒ 0.012。放射線源が円形であれば,半径1cm程度の小さなものだということがわかる。

 大ざっぱな計算だが,池袋の公園に埋まっている放射線源は,医療用のものか非破壊検査等の工業用のものかはわからないが,一円玉程度の小さなものだろう。明らかに福島第一原発事故で拡散した放射能ではない。

 関東地方やそれよりさらに西の地域でも,福島第一原発事故による放射能汚染が気になって気になってしかたがない人々は多い。必要以上に心配することによる風評被害がなくなる気配もない。政府や東電が情報を隠蔽していると強く批判していたマスコミが,示すべき情報を出さずに,読者の不安をあおるような記事を書いてどうするんだ……と言いたい。

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