« 特急スーパー白鳥が発煙により青函トンネル内で停止 | トップページ | 放射能の不安をあおるマスコミ »

2015年4月23日

福島第一原発2号機で異常温度上昇?

 Twitterを見ていたら,福島第一原発の2号機の温度が20℃から80℃以上に急上昇していて,何か異常事態が発生しているのではないかという話題があった。私は放射能や原発関連に詳しい方を多くフォローしているのだが,それらの方は特にその件をツイートしておらず,あまり詳しいとは思えない方のツイートなどがリツイートされているので,懐疑的なスタンスで見守っていたが,続報が入ってこない。

 しかたないので,ちょっと調べてみたら,特に原子炉の温度が急上昇していることもなく,毎度毎度のお騒がせな方々が,ちゃんと調べもせずに大騒ぎしているだけだった。

 まず,情報源は『【ヤバイ】福島第一原発で緊急事態か!?2号機の温度が20度から80度以上に急上昇中!放射能測定データでも線量が急激に上昇!(真実を探すブログ)』というブログらしい。

2
 問題とされる福島第一原発2号機の温度データである。黄緑色のデータが「SUPPLY AIR D/W COOLER HVH2-16E(TE-16-114K#1)」の温度,シアン(青)のデータが「SUPPLY AIR D/W COOLER HVH2-16D(TE-16-114J#1)」の温度(いずれも単位は℃)である。

 たしかに,2015年4月3日頃から黄緑色のTE-16-114K#1の値が急上昇して,90℃近くに達していることがわかる。D/Wはドライウェル(原子炉格納容器)だろうから,TE-16-114K#1・TE-16-114J#1はその空調機の供給空気温度だろうと推測される。原子炉圧力容器内ではなく,その外側の格納容器の温度である。この温度が正しければ,もっと大騒ぎになるはず。

 このグラフは,福島第一原発のプラントパラメータを自動取得し,グラフによる可視化をしている『ふくいちプラントパラメータモニタ Fukushima Daiichi Nuclear Plant Parameters Monitor.』というサイトによるグラフである。このサイトはとても素晴らしいので,福島第一原発で計測されている各種プラントパラメータ(温度・水位・圧力など)の状況を知りたい方は,一度見ておいた方がいいと思う。

 理工系の方だと,測定物の各部に熱電対などを貼り付けて,温度変化を測定したことがあると思う。そこでこのような急激な温度変化があったとすると,たぶんほとんどの人は,熱電対の異常もしくは貼り付けていた熱電対が剥がれた,浮き上がった……などと要因を考えるだろう。物体には熱容量があるので,このような温度上昇カーブにはならない。
 それでは何が原因なのだろう?

 福島第一原発の原子炉内の温度計の信頼性評価については,事故の翌年の2012年に東京電力が提出した『福島第一原子力発電所第1号機、第2号機及び第3号機の 原子炉内温度計並びに原子炉格納容器内温度計の信頼性評価について』という資料があるので,それを見てみる。ググればすぐに見つかる。

 まず,問題となっている温度計(いわゆる「T熱電対」の銅−コンスタンタン熱電対)の位置は次のように示されている。

25

 TE-16-114J#1が64番(青字),問題のTE-16-114K#1が66番(緑字)である。
 青字の熱電対は正常で,評価対象(監視に使用可能),緑字の熱電対は評価対象ではあるが参考使用,赤字は事故後に故障したものを表している。つまり,90℃近くまで達した温度計は,正しそうな温度を示したり,異常な温度を示したりするため,参考程度にしか使用できないものなのだ。

 温度計(熱電対)の信頼性評価対象および評価結果の表から,TE-16-114K#1前後の評価結果を抜き出してみた。

23_01

 2012年2月末から3月にかけての温度トレンドも発表されているので,それ(『1F-2 保安規定関連温度計(PCV)』を見てみる。

24__01

 青い細線が問題のTE-16-114K#1の温度である。青緑の太線が正常なTE-16-114J#1。

 少し小さなグラフなので見づらいが,なんのことはない,2012年からTE-16-114K#1(SUPPLY AIR D/W COOLER HVH2-16E)の温度は正しそうな値を示したり,80℃前後に跳ね上がったりを繰り返しているのである。

 計測器との接続方法にもよるだろうが,熱電対は回路のどこかで断線する・断線しかける(=抵抗が上昇する)と異常高温を示す。正しそうな温度と異常高温を瞬時に行き来する場合は,回路のどこかに接触不良がある可能性が高い。

 過去にも同様の表示値変動を繰り返している温度計の値を,今まで温度計のデータを見たことのない人が初めて見たことによって,大騒ぎが始まったことになる。

 神奈川県では,晴れた日の夕方の西の空に輝く火球のようなものがよく見える。羽田空港から西に向かう飛行機と飛行機雲を,沈みかけた太陽が下から照らすことによって輝くのだが,誰かが「UFOだ」というのを聞いて,普段から空を見ていない人がそれを見て「これはなんだ?」「異常だ」と騒ぎになることが,数年おきに発生する。

040128170402edit_2
 新百合ヶ丘から見えた夕空の飛行機雲。小さいものを含めると4機の飛行機が見える。

120620190727_29

 綺麗でドラマチックな夕焼けに感動して,思わず写真を撮ってTwitterにアップする。いつも空を見て,綺麗な雲の写真を撮ったり,夕焼けや一番星を楽しみにしていると,このような写真もただただ感動的なばかりだし,だいたい同時刻に別の場所で同じを空を見ている人から,どんどん夕焼けの写真がアップされることになる。ああ,みんなやっぱり美しい空が好きなんだなと嬉しくなる。

 ところが,そんな美しい雲の写真が数多くアップされているときに,『地震雲』でTwitterを検索すると興味深いことがわかる。「怖い!地震雲だ」「不気味な地震雲。関東ヤバイ」「あの地震の前にもこんな雲だったんだけど」……。驚くことに,地震雲のような不明確な,非科学的なものを信じている人が結構いらっしゃるのである。

 いつも空を見ていれば,山の影響による笠雲やレンズ雲,つるし雲,交差する飛行機雲,放射状の巻雲,波打つような波状雲やいわし雲など,雲にはいろいろな種類があって,気象状態によって変化し,とても表情豊かで楽しいものだということがわかる。

 日本およびその周辺域は世界でも地震の多い地域で,M4.0以上の地震はひと月に平均73回,M5.0以上の地震はひと月に9回,M6.0以上の地震はひと月に1.4回も起こっている。2011年3月11日以降はさらに活発になっている。毎日,空には何かしらの雲が出ていて,毎日どこかで地震は起こっている。「地震雲」とやらが出てから数日後までに地震が発生することには相関などない。逆に言えば,何かしらの雲が出ていたら,その後に何かしらの地震が起こるということを確実にこじつけることができる。これを一般的には「意味がない」という。

 話がだいぶ逸れてしまった。何かの現象に自分が望んでいるような意味を見いだそうとすると,とんでもない結論になってしまうので注意しましょう,ということで。

|

« 特急スーパー白鳥が発煙により青函トンネル内で停止 | トップページ | 放射能の不安をあおるマスコミ »

雑記」カテゴリの記事

科学・技術」カテゴリの記事

コメント

更新が途絶えていたので心配しました。お元気なようで何よりです。

投稿: 魚籃坂 | 2015年7月18日 19時27分

 心配をおかけして申し訳ありません。ゴールデンウィーク後に体調を壊したのと,もう一つのブログの更新で手一杯になり,アクセスが滞っておりました。

投稿: 三日画師 | 2015年7月18日 23時18分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 福島第一原発2号機で異常温度上昇?:

« 特急スーパー白鳥が発煙により青函トンネル内で停止 | トップページ | 放射能の不安をあおるマスコミ »