« 富山市の「コンパクトなまちづくり」は失敗したのか ── その2〔参考資料編〕 | トップページ | PENTAX 35mm判フルサイズ機の開発を発表 »

2015年2月 5日

「電子辞書」という文化の終焉……


 電子辞書ビジネスからの撤退について(セイコーインスツル株式会社 2014/10/7)

 セイコーインスツル株式会社(略称:SII、社長:村上 斉、本社:千葉県千葉市)は、2015年3月末をもちまして、電子辞書ビジネスから撤退することといたしましたのでお知らせいたします。

 当社は、1987年より電子辞書ビジネスを開始。1992年には、業界で初めて英和・和英中辞典の文字情報を全て収録したフルコンテンツタイプの電子辞書「TR700」を発売し、紙の辞書と同じ内容をキーボードからすばやく検索するという新たな価値を提供してまいりました。その後も学生、ビジネスマン、医療関係者など、それぞれのニーズにあった電子辞書を発売し、ビジネス実務や語学学習をサポートしてまいりました。

 しかしながら市場の成熟に伴い、電子辞書市場が縮小していることや、スマートフォン、タブレットなどスマートデバイスの普及により、電子辞書の需要の伸びが期待できないことなどから、2015年3月31日をもって、製造、販売を終了することにいたしました。長い間、セイコーインスツルの電子辞書製品をご愛顧いただき、心よりお礼申し上げます。

081105212354
〔電子辞書マニアだった私が最後に買ったSIIのSR-G6000M〕

 とうとう「電子辞書」文化が終わることになる。もちろん,携帯電話で調べる文化に置き換わるのだ。

 私は「電子辞書マニア」だった。長年「辞書」を持って歩いていた。わからない言葉があったときには,即座に調べないと気持ち悪いからだ。もちろん,紙の辞書は重いし,かさばるので,持って歩いていたのはいわゆる「電子辞書」だった。

 最初に「電子辞書」を持ち歩き始めたのはノートPCだ。具体的には,内蔵HDDを大容量のものに換装することができたApple PowerBook100からだった。それ以前には,モデム内蔵のワープロWordBankNOTE2を持ち歩いたり,初代DynaBook J-3100 SS001でMS-DOSをRAMディスクに入れて持ち歩いていたりしたが,まだ電子辞書を持ち歩けるほどのストレージ量はなかった(FEPの日本語変換辞書は入ってたけど)。

 1991年にAppleから発売されたPowerBook100(同時に発売されたPowerBook140と170はサイズが大きい上に,非常に高くて手が出ず)では,内蔵の20MB HDDを340MBに換装した。当時はこれでも海のように広いエリアだと感じた。

 PowerBook100で持ち歩いた電子辞書は,当時ソニーが電子ブックプレーヤー「DATA Discman」用として販売を開始した「電子ブックEB」だった。この「電子ブック」は現在電子書籍を意味するようになりつつあるが,当時はDATA Discmanに辞書・百科事典類の「電子ブックEB」を入れて,キーワード検索するという製品だった。

Dd
〔DATA Discmanと電子ブックEB〕

 DATA Discman用の電子ブックは,カートリッジの中に8cm CD-ROMが収められていて,8cmCDシングル用のCDアダプターにはめ込むと,パソコンでもデータを読むことができた。
 また,「電子ブックEB」のフォーマットは,富士通のワープロOASYS用の辞書として策定されたEPWINGフォーマットだったため,EPWING対応の検索ソフトで検索することが可能だった。

 このDATA Discman用の電子ブックEBを購入して(DATA Discman本体は買ったことがない),それをPowerBook100のHDDにコピーすることによって,PowerBook100は「紙の辞書よりも軽くて小さい電子辞書」となったのである。340MBのHDDには入らない辞書の大きさだが,当時はDisk Doubler(やRAM Doubler)という常駐ツールがあって,非常に重宝したことを覚えている。

 私は毎日PowerBook100を持ち歩き,会社でも(2005年頃から職場のセキュリティが厳しくなって,ノートPCは持ち込めなくなったが)通勤の電車の中でも,気になる言葉やわからない言葉があったときには,PowerBook100を開いて調べるという生活をしていた。その後はPowerBook Duo250,Duo280,PowerBook 2400cと新しい機種になっても,同じ辞書データを使い続けた。
 このときの辞書データは,新しいMacBookを買うたびに環境をそっくり引き継ぐため,ストレージがHDDからSSDになった今でも,片隅に入ったままになっている。

Photo

 これが現在使っているMacBook Pro RetinaのSSDの電子辞書のディレクトリである。フォルダーの日付はフォルダーをシンクロするときに変わってしまっているが,まごうことなきPowerBook100時代の電子辞書だ。使用頻度は少なくなったが,現在電子辞書検索に使用しているアプリケーションでは,Web上の辞書サイトのほかにローカルディスクのEPWING辞書も同時検索可能なため,いまだに使い続けていることになる。

081007213510
〔ソニーのIC電子辞書DD-IC2050とiPhone 3G〕

 その後重宝するようになったのが,IC電子辞書である。ソニーのDD-IC2050という機種で,名刺ケースサイズで「広辞苑」「百科事典マイペディア」「新英和・和英中辞典」「漢字辞典」などが収録されていた。ポケットに入れておけるので,PowerBookをカバンから引っ張り出す手間もない。「百科事典マイペディア」には,全国の市町村の成り立ちや特産品,人口や面積などの情報があり,iPhoneやGoogleマップがない時代に事前情報なしで旅をして歩くときに本当に便利だった。

 そして近年,iPhoneを使うようになって,IC電子辞書のROMに書かれた辞書は内容の新鮮度において,iPhoneの検索結果に見劣りするようになった。
 2008年のある日,愛用していたソニーDD-IC2050の液晶が壊れてしまった。その後継機を探して家電量販店をハシゴして知った事実……ソニーは採算の取れない電子辞書市場から撤退していた。常時ポケットに入れて持ち歩けるような百科事典搭載機はなくなり,シャープ「電子辞書パピルス」やカシオ「エクスワード」のようにキーボードと液晶が大きく,入力しやすさ,見やすさがウリの製品ばかりになっていた

 iPhoneでWeb検索すれば十分じゃないかと思いつつ,悩みながら購入したのが,冒頭のSIIのSR-G6000Mだった。これが2008年の11月。でも,使用頻度は低かった。iPhoneは常時尻ポケットに入っているし,iPhoneに比べると大きすぎるし……

 そして,とうとうSIIの電子辞書ビジネスからの撤退宣言。「電子ブック」という言葉でDATA Discmanを思い出す人はいなくなった。
 もうiPhoneだけで十分だ。ノートPCのように大きく見やすくなってゆくカシオの電子辞書を買うことはないだろう。たとえ何かの間違いで「Suica並の薄さの電子辞書」が発売されたとしても,それをiPhoneとともにポケットに入れて持ち歩く面倒さを考えたら,iPhoneだけで十分だと思うだろう。

 いつの間にか「電子辞書マニア」から足を洗っていた自分に気付いた。

|

« 富山市の「コンパクトなまちづくり」は失敗したのか ── その2〔参考資料編〕 | トップページ | PENTAX 35mm判フルサイズ機の開発を発表 »

Gadget」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「電子辞書」という文化の終焉……:

« 富山市の「コンパクトなまちづくり」は失敗したのか ── その2〔参考資料編〕 | トップページ | PENTAX 35mm判フルサイズ機の開発を発表 »