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2015年2月 3日

富山市の「コンパクトなまちづくり」は失敗したのか ── その2〔参考資料編〕

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〔3月の北陸新幹線金沢延伸にあわせて高架化工事が進む富山駅〕

 1月30日のエントリー『富山市の「コンパクトなまちづくり」は失敗したのか』では,以前からの趣味である“街歩き”で見て回った各都市の印象を元に,いろいろ見聞きした話で肉付けして,“富山市はコンパクトシティには適していない都市構造だが,やむを得ず「コンパクトなまちづくり」に舵を切った。成功するか失敗するかはわからない”と書いた。

 具体的な数字が何もなく,ただ印象だけで結論づけてしまうという,(腐ってしまったとはいえ)エンジニアらしからぬ文章だった。
 本エントリーでは,後付けにはなってしまうが,根拠となる数値をできる範囲で提示していこうと思う。

 まずはこの部分……

 富山市は平成の大合併で巨大な面積となったが,それ以前から,都市人口に比べて比較的市街地が大きく(富山地鉄と路面電車の影響が大きいかも),市街地の人口密度は低かった。北陸地方は持ち家志向が非常に高く,しかも世帯当たりの自家用車台数も多い。もともと富山市はコンパクトシティとは正反対の都市構造を持っていたと言える。

 まず,都道府県別の持ち家比率・一戸建て比率のデータである。
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 富山県の持ち家比率・一戸建て比率は秋田県・福井県に続いて全国第3位である。神奈川県・大阪府・東京都が下位に並ぶ。持ち家比率の全国平均は61.1[%],一戸建て比率の全国平均は55.3[%]であるから,上位3県の高さは際立っている。北陸地方は持ち家志向が非常に高い地域であることがわかる。

 次に,世帯当たりの自家用車台数[台/世帯]のデータである。
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 富山県の世帯当たりの自家用車台数は1.709台で,福井県に次いで全国第2位になっている。

 最後に,「富山市は都市人口に比べて比較的市街地が大きく,市街地の人口密度は低かった」の根拠である。この部分に関しては,全国各地の都市を自分で歩いてみての印象に,Mapionのように家屋の密集具合がわかる地図を見ての印象を加えて,私の頭の中に出来上がったイメージだった。特に具体的な数値があるわけではなかった。

 ありがたいことに,Wikipediaの『人口集中地区』の項に,“東京都区部及び主な市の人口集中地区人口・面積・人口密度等(平成17年国勢調査による)”のデータがあり,ここに人口集中地区(=DID)の人口密度データを見つけることができた。このデータを比較すれば,市街地≒人口集中地区の人口密度がわかる。

 人口集中地区=DIDは,市区町村の区域内で人口密度が4,000人/km²以上の基本単位区が互いに隣接して人口が5,000人以上となる地区として定義される。空港、港湾、工業地帯、公園など都市的傾向の強い基本単位区はDIDに含まれるため,巨大な港湾や工業地帯,大きな公園のある都市は,DID人口密度を比較するときに,やや不利になることがわかっている。

 政令指定都市等を除く主な都市の平成17年の都市のDID人口密度[人/km²]は,次の表の通りである。
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 上位の都市(西宮市〜町田市・八王子市・藤沢市あたり)は明らかに東京都市圏・大阪都市圏の衛星都市(ベッドタウン)なので,あまり参考にならないだろう。

 都市のDID人口密度ランキング一覧を見ると,非常に興味深いことに,『「コンパクトシティ」政策の成功例ではないが,地形的な制約によって都市の郊外化が阻害され,結果として都市人口のわりにコンパクトで高密度な市街地を持ち,現在でも比較的市街地に賑わいが感じられる街』の例として挙げた長崎市と高知市は,DID人口密度がかなり高い都市であることがわかる。

 逆に,富山市よりも先に衰退している都市の例として,あくまで個人的に街を歩いたときの印象であるとことわりつつ列挙した前橋・秋田・福島・郡山・津・岐阜・和歌山が,ことごとくDID人口密度の低いとしてランキングされていることがわかった。この結果には,一覧表を作りながら少し鳥肌が立ってしまった。

 富山市は下から4番目であり,市街地の人口密度が低いことがこれで裏付けられた。富山市がもともと「コンパクトシティ」とは正反対の構造を持った都市だったことが示せたと思う。

 以上のことを踏まえた上で,市街地が郊外に薄く広く拡散している都市としての富山市・前橋市・郡山市と,地形的な制約によって都市の郊外化が阻害され,結果として賑わいのあるコンパクトシティと言える長崎市と富山市の地図を並べてみる。

Toyama
[富山市:人口約42万人 DID人口密度4030.2人/km²]

Maebashi
[前橋市:人口約32万人 DID人口密度4425.1人/km²]

Koriyama
[郡山市:人口約34万人 DID人口密度5183.3人/km²]

Kochi
[高知市:人口約35万人 DID人口密度6358.0人/km²]

Nagasaki
[長崎市:人口約46万人 DID人口密度7456.5人/km²]

 長崎の街は南北の方が比較的長いので,横長の地図で比較するのは不適当とも言えるが,実際に縦にしてみても印象はそれほど変わらない。

 平坦な都市は際限なく郊外に広がりやすいようだ。どの都市でも,市街化調整区域の設定によって無秩序に都市が郊外に広がっていくことを抑制しようとしてきたはずだが……

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