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2015年1月30日

富山市の「コンパクトなまちづくり」は失敗したのか

 TwitterまとめサイトのTogetterで『コンパクトシティ富山市は自滅するか否か』が話題になっている。
 コンパクトシティ(正確にはコンパクトなまちづくり)を進めている富山市が郊外へのショッピングモールを出店させなかったため,富山市に隣接する砺波市に「イオンモール砺波」,射水市に「コストコ射水」,小矢部市に「三井アウトレットパーク北陸小矢部」が2015年夏に相次いでオープンするのだという。また,今春開業する北陸新幹線新高岡駅の前には,2002年にオープンしたイオンモールがある。

 このままじゃ富山市あぶねぇんじゃね?
 コンパクトシティ政策は正しいのか?

……という内容だ。

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〔富山地鉄都心線を走るセントラム〕

 コンパクトシティの定義にはいろいろあるが,大まかに言えば「都市を郊外にどんどん拡大するよりも,都市内の公共交通の拠点から歩いて生活できる程度に市街地の拡大を抑え,郊外のインフラの維持や整備に伴うコストを削減しましょう」ということだと考えている。

 コンパクトシティを進めている都市の例として富山市とともに挙げられる青森市は,郊外の拡大に伴って除雪の負担が大きいことが問題になっていた。
 要するに,このまま都市が広く薄く拡大すると,将来はそれが維持できずに財政破綻まっしぐらだから,「コンパクトシティ」を進めるしかない状況になっているのだ。

 仮に富山市内の郊外にショッピングセンターを誘致できたとしても,道路整備までショッピングセンターがやってくれるわけではないから,その周辺道路が混雑すれば道路インフラを整備せざるを得ないし,防犯やらなにやらコストを掛けなければならなくなる。行政としては苦渋の選択だったはずだ。
(富山市を擁護したいだけのように読めるかもしれないが,たとえば北陸新幹線開業に併せて行われた富山駅の高架化工事などは無駄だったと思っている)

 富山市は平成の大合併で巨大な面積となったが,それ以前から,都市人口に比べて比較的市街地が大きく(富山地鉄と路面電車の影響が大きいかも),市街地の人口密度は低かった。北陸地方は持ち家志向が非常に高く,しかも世帯当たりの自家用車台数も多い。もともと富山市はコンパクトシティとは正反対の都市構造を持っていたと言える。

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〔総曲輪フェリオ横のグランドプラザ〕

 そのような富山市でコンパクトシティ政策(富山市によれば「コンパクトなまちづくり」)が成功するかどうか,それはよくわからない。

 ただ,富山県内の各都市を見て回った印象をもって言えば,富山市の買い物客が隣接市町村に流れたとしても,富山県内における富山市の影響力は小さくならないだろう。むしろ富山県における富山市のプライメイトシティ化が進むと思う。
 新しいショッピングセンターに流れる客は,現時点で既に富山市の商店街では買い物をしていないんじゃないだろうか。商店街は今でも非常に厳しい状況だ。

 3月14日,北陸新幹線が金沢まで延伸開業し,高岡市では既存のイオンモール高岡の近くに新高岡駅ができる。富山市とを結ぶ道路も整備され,富山市からの買い物客が増えて,富山県西部の核となる高岡市は安泰かと言えば,そうはならないと私は考える。高岡市はさらに衰退し,現在はかろうじて昼夜間人口比率が100%を越えているが,100%を切ることになるだろう。すなわち,高岡市は富山市のベッドタウンとなる。

 今年の夏にショッピングセンターができるという砺波市や射水市は,既に昼夜間人口比率が100%を切っている。両市は既に富山市のベッドタウンとなっており,それは今後も変わることはないだろう。

 富山市の衰退が問題になるとき,同時に全国の県庁所在地・中核都市の衰退は深刻になっているはずだ。富山市よりも先に衰退している都市が,全国にたくさんある。あくまで個人的な印象だが,前橋,秋田,福島,郡山,津,岐阜,和歌山……。それらの都市と比較しなければ,富山市の状況は把握できない。

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〔コンパクトシティの失敗例としてあげられる青森市の「アウガ」〕

 最後に,「コンパクトシティ」政策の成功例ではないが,地形的な制約によって都市の郊外化が阻害され,結果として都市人口のわりにコンパクトで高密度な市街地を持ち,現在でも比較的市街地に賑わいが感じられる街として,長崎市と高知市の例を挙げたい。どちらの都市にも,路面電車が残っていることも興味深い。

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〔長崎市の「浜んまち商店街」〕

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〔長崎電鉄の思案橋電停〕

長崎市北部の住吉商店街
〔長崎市街地北端近い住吉電停のサンモール住吉商店街〕

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〔高知市の帯屋町商店街〕

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〔高知市の京町商店街と土佐電鉄〕

 長崎市は人口が大きく減少しているじゃないか,という声があるかもしれない。たしかにWikipediaの「長崎市」の項目を見れば,1975年に505,835人だった人口が,2014年12月1日現在では433,294人になっている。市街地周辺の急傾斜地にびっしり密集する家屋は,高齢化社会に適応できず,人口が減るのも仕方がないように感じる。

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〔長崎市の住宅地〕

 しかし,Wikipediaにおける長崎市の人口の推移のグラフは,あくまで「長崎市に相当する地域」の人口であり,軍艦島で知られる端島の高島町や池島炭鉱のあった外海町,同じく炭鉱の街として栄えた伊王島町を含んでいる。これらの町が大きく人口を減らし,それが合併後の長崎市の人口推移のグラフに現れている。旧長崎市内の人口は増加はしていないが大幅に減少したわけではない。

 まぁ,長崎市の地図を見ると,北部の長与町の山の中まで住宅地が広がっていて,ちょっと唖然とするけど…

富山市の「コンパクトなまちづくり」は失敗したのか ── その2〔参考資料編〕 に続く…

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コメント

民放三局しか造れない経済圏の富山県、すでに集客力を失った県都が出店規制をすれば富山市に隣接する自治体に包囲網を構築されるのは予想される事なのに間抜けとしか思えませんね…
関東広域放送圏に人口が集中するのもその利便性なのに…補助金目当ての富山県の体質を表すよい事例だと思いますよ。

投稿: 元富山県民 | 2015年8月22日 23時15分

ごく一部の住民や店舗の利便性を上げる為に税金を投入するのには違和感があります。
私は以前富山市長に対して環状線の構築を提案した事がありましたが、完全に無視されました。富山市街周辺をグルリと回る環状道路に路面電車を敷設する事で街の活性化に役立つと言う趣旨の提案でした。
環状線沿線には大学、高校、ショッピングセーター、大中小企業が多数存在します。
通勤通学ショッピングに電車を利用する事で車が不要になり、脱Co2にも貢献できます。
さらには車の運転が不要になり、会社帰りに居酒屋でちょっと一杯と言った楽しみも可能になります。以前大阪や東京で勤務した経験がありますが、殆ど毎日の様に会社帰りに居酒屋で一杯を楽しむ人が大変多い事に驚きました。一つ税金を使うにしてもどうすれば街が賑わいを取り戻すかを考えるべきであり、
只単に見てくれだけを良くして県外や国外にアピールする事ばかりに力を注ぐ市長の姿勢はちぐはぐに感じてしまいます。


投稿: やっさん | 2018年1月27日 11時20分

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