« 理想のカメラに近づいてきた | トップページ | 3月16日に東急東横線渋谷~代官山間が地下化 »

2013年3月 3日

デザインに対するAppleの拘泥ぶりが恐ろしい

 アルミ合金切削加工のユニボディなど,Apple製品の金属加工へのこだわりは,どうでもいい人にはどうでもいいことではあるが,電子機器や精密機械の製造技術,加工技術にかかわったことのある人は畏れを感じているに違いない。CNCによる切削加工だけでなく,レーザードリルやEDM(放電加工)がそこかしこに使われているのだ。

 ぜひとも見ていただきたいのは,ShimoKen Worksという個人ブログの『アップルで金属加工部品を堪能する』という2008年の記事。MacBookとMacBook Proに採用されたユニボディの試作品の写真がどっさり。これを見て興奮しないメカエンジニアがいたとしたら,深刻な不感症だと思う。

スピーカーグリルは執念のレーザー加工
 スピーカーグリルのレーザー穴開け加工の精度が恐ろしい。普通に考えれば,大きく四角形に抜いて,網状もしくは穴の開いたプラスチックパーツを填め込みたくなるところだ。
 ものづくり技術立国と言われる国の製造現場にこの図面を持って行ったら,たぶん2週間は口をきいてもらえないと思う。ユニボディというのは,それほど突拍子もない加工方法だと思う。

 そして,昨年登場したiPhone 5。

iPhone 5に機種変更

 iPhone 4のステンレス切削フレームから,iPhone 5ではアルミ合金の切削加工ハウジングに変更になった。軽量化の意味(ステンレス鋼の比重は約7.8,アルミ合金の比重は約2.7)もあるだろうが,さすがに難削材のステンレス鋼を切削加工で大量生産するのは大変だったと思われる。また,今後の多色展開を考えると,塗装やめっきに向かないステンレス鋼より,着色が容易なアルマイト処理がはるかに優位ということもあるだろう。

フレームの面取りは専用エンドミル
 iPhone 5のハウジング周囲のエッジの面取りを,iPhone 5専用のエンドミルで一気に加工している。一般的な汎用45°面取り用エンドミルではなく「iPhone 5専用のエンドミル」で,上下の面取りを一度の加工で行っているのだ。これを「こだわり」といわなくて何という……

Apple iPhone 5
 iPhone 5の背面を見ると,FCCマーク(米連邦通信委員会の認可取得),CEマーク(EU加盟国の情報通信機器の認証マークで,0682はCETECOMドイツを意味するらしい)等の他に,FCCの認証ナンバー,カナダ工業規格IC (Industry Canada)の識別番号,そして驚くべきことに,端末毎に固有の識別番号IMEI (International Mobile Equipment Identity)までもがレーザー刻印されている。
 全品同じ内容のレーザー刻印なら,それほど驚くことではない。が,一台一台全部異なる,いわゆる製造番号(シリアル番号)であるIMEIをレーザー刻印するなんて,恐るべきこだわりではないか。

 比較のために,身近な製品の製造番号を見てみる。

Docomo N-04Bガラケー
 Docomoの携帯電話N-04Bの製造番号は,シールに印刷されている。

Panasonic LUMIX DMC-GX1
 PanasonicのデジカメLUMIX DMC-GX1の製造番号もシールだ。やっぱり,こんなところにレーザー刻印するなんて無駄無駄,という感じだろうか。

USBカードリーダー
 BUFFALOのUSBカードリーダーなんかは紙のシールだ。まぁ,値段を考えれば当然だろう。

 話は変わって,昨年,Appleがリキッドメタル・テクノロジ社から電化製品での独占使用権を購入したことで話題になった「リキッドメタル」。

 名前から連想するところは,「非晶質のガラスは液体」だという一種の詭弁から,「非晶質のアモルファスは液体」になり,何らかの金属のアモルファスのことをリキッドメタルと呼ぶのだということはわかる。
 しかし,通常のアモルファスが高温の液体を急冷する方法(リボンのようなアモルファスをつくるシーンで有名),スパッタリングやCVD(化学気相蒸着)のような薄膜レベルの製造方法なのに対して,このリキッドメタルの最大の特徴は,射出成形ができることだ。しかも,従来の金属粉末射出成形やチクソモールドに比べると,成形収縮率が小さく,iPhoneのバックシェルハウジングのような大きなパーツにも向いているという。

 リキッドメタルは,ジルコニウム,ニッケル,チタン,ベリリウムの合金で,密度や線膨張係数はアルミ合金60材とSUSの中間でチタン合金のTi-6Al-4Vと同程度。破壊強度や降伏強度はTi-6Al-4Vの2倍近くあり,さらに弾性率が驚異的に高い。
 弾性率が高いというのは,アルミ合金のようにぶつけたときにグチャッとつぶれるように変形するのでもなく,ガラスのように変形せずにパリッと割れることもなく,ビヨ〜ンと跳ね返るイメージである。硬度はSUSより上なので,ゴムのような感じではない。
 たしかにiPhoneのような携帯機器のハウジングには非常に適した物性を持っている。コストは不明だが(安くはないだろう),射出成形ができることから大量生産品にも向く。

 ただ,Appleお得意のユニボディのような切削加工にはまったく向かない素材だ。切削加工ではなく,射出成形でハウジングを作ることになるため,iPhone 4やiPhone 5のようなエッジの立ったデザインは難しいだろう。最近話題のiWatch,あるいは新デザインのiPhone miniなどに使用されることになるのかもしれない。

|

« 理想のカメラに近づいてきた | トップページ | 3月16日に東急東横線渋谷~代官山間が地下化 »

雑記」カテゴリの記事

Gadget」カテゴリの記事

科学・技術」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: デザインに対するAppleの拘泥ぶりが恐ろしい:

« 理想のカメラに近づいてきた | トップページ | 3月16日に東急東横線渋谷~代官山間が地下化 »