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2012年9月16日

気温25℃の朝が暑かったり涼しかったりする理由

 熱帯夜を明けた朝の気温が25℃もある。良くあることだ。
 真夏の朝の25℃はとても暑く感じた。朝っぱらから暑い……と思った。

 9月に入り,朝晩はめっきり涼しくなったという声が聞こえてくるし,自分でもそんな気がする。
 しかし,9月に入ってからも熱帯夜は比較的続いていて,最低気温が25℃を下回って,熱帯夜を回避できた日のほうが少ないぐらいだ。

 でも,同じ気温25℃の朝でも,なんとなく真夏とは違うように感じる。
 それはなぜだろうかと考えてみた。

 9月になったという言葉のイメージのせい? それは大きいかもしれない。
 夏は朝っぱらからアブラゼミやミンミンゼミが鳴いていたけど,少し秋の虫が鳴き出したから……。もちろんそれもありそう。

 でもあまり科学的じゃない気がする。

 人間の皮膚は,外部環境との熱のやりとりを,空気との熱伝導,熱伝達(対流),発汗(気化熱),そして輻射で行っている。でも,同じ25℃ならば,熱伝導や熱伝達(対流)は変わらないはず。

 となると,輻射の違いが気になってくる。気温は同じでも,周囲の道路やコンクリートの温度が違っていれば,身体の周囲にある物質との輻射熱が違ってきて,それが体感の差になるんじゃないだろうか……と考えてみる。

120905071511

 夏は日中の太陽光も強く,周囲の道路やコンクリートがたくさん熱を吸収し,夜が明けた後の朝も,まだ熱を持っていて26℃あると仮定する。
 9月になると,太陽光は徐々に弱まり,朝の道路や周囲のコンクリートが少し冷えて24℃になっていると仮定する。この場合,周囲とやりとりする輻射熱がどのぐらい違うのか,簡単に計算してみる。

 まず計算が簡単になるように,人間の身体を単純な形状,球と見なす。
 人間の身体の表面積は,1.6m^2あるから,
 球の表面積 S=4*pi*r^2 に入力して,WolframAlphaに計算をお願いすると,

Photo

 球の半径 r=0.36[m]と出てきた。こんな簡単な算数にもWolframAlphaを使いたくなるのは,エンジニアとしてどうなんだろうという気はするが,Twitterの自己紹介にも書いているように,私はダメ社会人なので,楽できるときには楽をする主義なのである。
 半径0.36[m],つまり直径72[cm]の球体は,人間の身体と同じ表面積をもつことになる。まぁ,だいたいそのぐらいだろう。

 人間の身体の発熱量Qは,いろいろな計算方法があるけど,一般的には一人 100[W]と見積もられている。
 そこで人間の身体を,100[W]の発熱量をもつ直径72[cm]の完全黒体とする。

 とりあえず,まったくの無風でも身体の周囲に発生する自然対流の計算はとても難しいので,とりあえず空気との熱のやりとりは置いといて,シュテファン=ボルツマンの法則を持ってくる(強引?)。

 Q = ε1* ε2 * S * σ * f * (T1^4 - T2^4)
  ε1,ε2:物質表面の赤外放射率
  S:表面積
  σ:シュテファン=ボルツマン係数=5.67 * 10^-8
  f:形態係数(ある面からある面が見える割合)
 真空中で向かい合うT1[K(ケルビン)]とT2[K]の物体の間では,Q[W]の熱がやりとりされるという式である。

 さて,周囲の温度がt=25℃,赤外放射率ε=0.9,の空間に形態係数(ある面からある面が見える割合)f=0.8ぐらいで置かれているとすると,

 100 = 0.9 * 4 * pi * 0.36 ^2 * 5.67 * 10^-8 * 0.8 * ((t+273.15)^4 - (25.0+273.15)^4), t>0

Photo_2

 WolframAlphaに計算をお願いすると,人間を模した完全黒体の温度は t=38.3℃となった。

 人間の普通の体温は36.5℃ぐらいなので,そこそこ近い値になった。

 実際には風がまったく無くても,身体の発熱によって対流が生じるわけで,身体の表面から空気への熱伝導,熱伝達(対流)によって熱が出入りするけどそれは置いといて,仮の値0.8とした形態係数を修正してみる。

 形態係数を変数にして,体温を36.5℃と置き,再びWolframAlphaに計算をお願いすると,
 100 = 0.9 * 4 * pi * 0.36 ^2 * 5.67 * 10^-8 * x * ((36.5+273.15)^4 - (25.0+273.15)^4)

Photo_3

x=0.93となった。もちろん形態係数は0.93とする。

 そこで,まず周囲が26.0℃道路やコンクリートで囲まれていた場合に,周囲とやりとりする熱量をqとして,人間の発熱量100[W]に加えてやり,再びWolframAlphaに問いかける。

 100 + q = 0.9 * 4 * pi * 0.36 ^2 * 5.67 * 10^-8 * 0.93 * ((36.5+273.15)^4 - (26.0+273.15)^4)

84w365

 q=-8.4[W]と出た。8.4[W]ほど周囲に逃げていく熱量が少ないことになる。

 8.4[W]の熱が逃げていかないとすると,体温36.5℃が維持できなくなる。

 100 = 0.9 * 4 * pi * 0.36 ^2 * 5.67 * 10^-8 * 0.93 * ((t+273.15)^4 - (26.0+273.15)^4)
 t=37.4℃
と体温が上がってしまうのだ。

 同様に計算すると,周囲が24.0℃の場合は,q=8.0[W]となり,マイナス記号は付かない。8.0[W]も逃げていく熱量が多くなる。

 8.0[W]余分に逃げていく分を補わないと,

 100 = 0.9 * 4 * pi * 0.36 ^2 * 5.67 * 10^-8 * 0.93 * ((t+273.15)^4 - (24.0+273.15)^4)
 t=35.6℃
と体温が下がってしまう。

 実際は,人間の身体が発汗量を調整したりして体温を一定に調節してくれるし,それが難しそうなときは,服装を変えたり,シャツのボタン外したりして調整するので,体温が変わることはない。また,風が吹いているか,止まっているかの影響は,たぶん輻射熱なんかよりも大きく感じるだろう。

 しかし,同じ25℃という気温でも,その周囲のアスファルトやコンクリートや植物の温度が26℃なのか,24℃なのかでは,体感温度に10[W]弱の輻射熱の変化があるとしたら,人間はその違いに気付くに違いない……というのをここでの結論としたい。


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