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2010年12月18日

鉄より強いプラスチック!……の懐かしさ

# 今年の春に入力だけして,公開してないエントリーを偶然発見。既に賞味期限切れだが,臆面もなく公開する。ひょっとしたら,言いたいことが上手くまとまらないので,当時はボツにしていただけかもしれない。

 鉄より強いプラスチックを開発 広島大グループ (2010/04/19 47NEWS)

 鉄鋼の2~5倍の強度を持つプラスチックのシートを開発したと、広島大の彦坂正道特任教授(高分子物理学)らのグループが19日、発表した。

 厚さ10分の数ミリ。透明で成形しやすく、自動車の車体やガラスの代用品などとして応用が見込める。通常のプラスチックとほぼ同じ値段ででき、不純物がないためリサイクルしやすい利点もあり、新素材として普及を目指す。まずは食品容器での実用化を検討している。

 キャッチーな見出しの記事だけど,どこか懐かしさを感じる……。

 なぜなら,デュポンが戦前だったか戦後だったかに(いずれにしろ昔の話),ストッキング用のナイロン66を売り出したときのキャッチフレーズが,確か「蜘蛛の糸よりも細く,鋼鉄より強い」だったと思うから。

 だから,この記事を読んで,ものすごく強い強度のプラスチックが開発されたというふうに受け取ってしまうと,それはそれでちょっと違うと思う。何をもって「強い」というのか,ちゃんと基準を決めて比較しないと,単にデュポンのキャッチフレーズ(しかも半世紀も前)のパクリになってしまう。

 記事には,従来のポリプロピレンより,引張強度が7倍以上の230MPa(メガパスカル)に増していて,この強度は同じ重さの鉄鋼の2〜5倍だという。

 ここがもう怪しい……というか,自動車の車体の代用品として応用が見込めると書いてあるわりには,自動車の車体に使われる材料の引張強度が書いていない。一般的な自動車の車体に使われる高張力鋼の引張強度は800MPaぐらいあって,今回のプラスチックの230MPaよりも非常に大きな値を持っているのだ。そのまま同じ形状のサンプルを使って引張強度試験をしても,今回のプラスチックは高張力鋼に勝てない。

 要は「同じ重さの鉄鋼の2〜5倍」の強度というところがミソなのだ。
 プラスチックの比重が1.00前後(水と同じぐらい)なのに比べると,鉄鋼の非常は8ぐらいあるので,プラスチックの試験編を8倍の厚さにして,引張試験をすれば,230×8=1840となって,800MPaの鉄鋼を上回る(同じ重さの鉄鋼の2〜5倍)ということになる。

 まあ,ようはプラスチックでも使いようってことかな。

 どんな世界でも,プラスチックは弱いもんだというという偏見があるので,このぐらいキャッチーな見出しでも良いのかもしれない。

 この記事で取り上げているのは,純粋なプラスチック素材の強度についてだが,世の中で使われているプラスチックには,繊維強化プラスチック(FRP : Fiber Reinforced Plastics)というものも多く,ケブラー繊維で強化したKFRP,ガラス繊維で強化したGFRP,カーボン繊維で強化したCFRPなどがあって,これらは軽くて高強度という特徴がある。

 少し脱線気味になると,昔,カメラのシャッター幕に何が使われるかが興味の対象になった時期がある。いや,昔と言っても10年ぐらいまでだが(金属ボディ派はまだ多いかな),高級機に使われていたチタンシャッター幕が最高だとする考え方が広く残っていた。

 たとえば,NikonのFM2というカメラには,初期のボディにはエッチングでハニカム加工を施したチタン合金製のシャッター幕が使用されていて,1/4000秒の高速シャッターを実現するためには「チタン」の採用が決め手だと言われていた。ところが,後期のFM2のシャッターは,アルミ合金製のシャッター幕になり,同じ1/4000秒のシャッター速度も実現したわけだが,同じ性能のカメラにかかわらず,中古品市場では初期のチタン合金製のシャッター幕が使われたボディのほうが高値で取引されるという状況が続いた。

 それほどまでに,金属カメラ信仰のような中で「チタン最高」的な意見は多かったように思う。

Nikon F5 のシャッター幕
 シャッター幕にプラスチック(CFRP)を使用した当時の最上位カメラNikon F5

 でも,その後のNikonのカメラがF4〜F5と進化して,1/8000秒のシャッター速度が普通になってくると,事態は変わってくる。金属カメラ信仰の方たちは,あまりAFフィルムカメラに興味を持っていないようだったが,シャッター機構はどんどん進化し,高速で静かに動作するシャッター幕の研究が進み,結局Nikon F5のシャッター幕にはカーボン繊維強化プラスチック(いわゆるCFRP)が使われている。
 ちょっと無神経だったと今になって反省しているが,チタンシャッター幕が最高というひとに,アルミ合金でも同性能が出ているし,さらに高性能なカメラではプラスチックが使われてますよと進言して,顰蹙をかった記憶が今でも残っている(NIFTY-Serveの某フォーラムだったかな)。

 話が逸れまくり,しかも何が言いたいのかがわからない記事になってしまった。
 まとめれば,鉄より強いプラスチックは昔からあるので,その点を含めた記事にしないと,この広島大のプラスチックの成果は上手く伝わらないってことかな。

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