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2010年12月20日

若き廃墟写真家の存在が消されようとしている

「棄景」丸田祥三

 丸田祥三氏の写真集「棄景」との出会いは衝撃的だった。たしか1990年代の半ば,写真集が出て間もない頃だったと思う。
 それまでも,香港の九龍城の写真集や,長崎の軍艦島(端島)の写真集が出ていて,私の別ブログ『写真撮っけど,さすけねがい?』を見ていただいている人ならば,私がそれらの写真集に共感を覚えるであろうことは容易に想像が付くはず。

 しかし,丸田祥三氏の「棄景」には,それらとは明らかに違う“何か”が感じられたのだ。その“何か”が,上手く説明できなくてもどかしい……。
 当時は,堀淳一氏の「地図を歩く」「地図の楽しみ」などの影響で,廃線跡歩きをしていたことや,廃止と直面しながら走るローカル私鉄や路面電車に惹かれる気持ちが,どこかで「棄景」に通底していたのかもしれない。

 2000年以降の大波のようなレトロ・ブームや廃墟趣味ブームとは違って,1980〜90年頃のレトロ・ブームは,まだ弱々しいマイナーなものだったと記憶している。そんな中で,世の中から完全に捨てられ,忘れ去られようとしている廃校や廃線,廃駅,廃車両,鉱山跡……,それらを実に丁寧に丁寧に撮影してきたのが丸田祥三氏である。
 彼がこの分野の先駆者であったことは間違いないのだ。

 ところが1990年代の末から2000年以降になって,事情が変わってきた。丸田氏の写真集に酷似した廃墟写真集が書店に並びはじめたからである。それが,小林伸一郎氏の「DEATHTOPIA 廃墟遊戯」や「廃墟漂流」である。
 どのように事情が変わったのかはまったく把握できず,単に,大きなレトロ・ブームが類似写真集を生み出したものだと思っていた。素人がパラパラと写真集をめくった程度では,写真に盗作があるかどうかなんて簡単には判別できないし,同じような場所を撮った写真も,ひょっとしたら丸田氏のアドバイスを元にして撮影したんじゃないかとさえ思っていた。何しろ,丸田氏の写真のほうが素人目にも良くできていて,小林氏の方がベテラン写真家だということを知ったのは,この件が裁判沙汰になってからのことなのだ。

 盗作疑惑発覚から裁判までの流れは,すばらしく良くまとめられたサイトがいくつもあるので,そちらを見てほしい。
 なぜ,先駆的な良い写真が世の中から消し去ろうとされ,つまらない写真が残ろうとしているのか。和解交渉の場で出された条件ですら,もはや盗作云々の次元を越え,丸田祥三という若き写真家,そして彼が残した作品までも無かったことにしようという出版社ぐるみの意図がみえてくる恐ろしい状況を,ぜひとも多くの人に知ってもらいたい。

風景剽窃裁判/写真家・小林伸一郎氏を盗作で提訴いたしました(丸田氏のブログ)
小林伸一郎盗作廃墟写真疑惑/アサヒカメラ記事捏造事件(まとめサイト)
丸田祥三氏『棄景』剽窃被害について思う・1(切通理作の社会に斬られる)
小林伸一郎氏 盗作・盗用検証サイト
「盗作かもしれない」前編(丸田祥三、切通理作、枡野浩一)【USTREAM】
「盗作かもしれない」後編(丸田祥三、切通理作、枡野浩一)【USTREAM】
(丸田氏が愚直で嘘のつけない人であることは,最後のUSTREAMを見ればよくわかる)


 テレビ報道「【小林伸一郎氏】盗作疑惑報道(前半)fujimusume1980さんの動画」



 テレビ報道「【小林伸一郎氏】盗作疑惑報道(後半)fujimusume1980さんの動画」

 とまあ,こんな具合である。みなさんはどう感じただろうか。
 個人的には,写真を比べてみれば,オリジナルな丸田氏の写真に魅力を感じる。憤りを込めれば,同じパクるなら,もっと上手くパクれ。これじゃ劣化コピーじゃないか……と言いたい気分だ。

 明日12月21日火曜日は,丸田氏が小林伸一郎氏を訴えた「盗作かもしれない」裁判の判決日である。裁判所が“同じ富士山を撮ったらパクリなのか”というような考え方をした場合,ひょっとしたら不幸な判決になってしまうかもしれない。心を落ち着けて判決を待ちたい。

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コメント

>先駆的な良い写真が世の中から消し去ろうとされ,つまらない写真が残ろうとしているのか。

良い写真か詰まらない写真家は、見たその個人が決める事なので、こういう場で書いてしまうのは、このブログの浅はかさを出したものだと思います。

投稿: 任意 | 2010年12月20日 18時53分

 個人の浅はかな見た目の話を書いても良いのがブログだと思ってますので,ご心配には及びません。「かすかだんでねぇ!」のひと言でOKです。

投稿: 三日画師 | 2010年12月20日 19時02分

私も同じことを思っていました。(ここまでキッチリと纏まっては居ませんでしたが。)
廃虚がブームになったから、後追いが一杯でてきた、と。会社の近くの本屋で写真集を見てそう思ったのを今でも覚えています。
それが、後追いはありとしても、先駆者を無かったことにするというのは恐ろしい話しです。大上段に振りかぶった話しではなく、あんまりじゃないか?というのが、当方の意見です。個人的な意見をコメントしてしまい、「浅はか」で申し訳ありません。

投稿: あかぐま | 2010年12月20日 19時15分

 そうですよね……。本屋で廃墟関係の写真集を見てた人なら,そういう印象ですよね。

 後追い自体には特に問題はないと,私も思います。
(引用の条件を満たせば)法律でも引用は認められた行為ですし,引用元を明記するなり,インスパイアされました等の文言があれば……という話だと思います。
 浅はかなコメントしかできなくて申し訳ありません。

投稿: 三日画師 | 2010年12月20日 22時12分

 19世紀から廃墟写真なんてごまんとあるのに自らが廃墟写真の先駆者のように言える自信がすごい。せめて中興の祖というのならかわいいのだけれど。丸田さんは写真はよいのに心が狭いのが残念。芸術家の宿命かな。

投稿: せき | 2012年10月17日 11時37分

 19世紀から廃墟写真集が「ごまんとある」状態だった記憶が,残念ながらありません。日本の書店では,せいぜい軍艦島の写真集と,九龍城(こちらは廃墟と言えるかどうか微妙ですが)の写真集が眼に付いた程度のでした。当時,どのような写真集が出ていたか,タイトルや作者の名前などがわかりましたら,教えていただけると幸いです。

 なお,この記事で丸田さんを「廃墟写真の先駆者」のように言っているのは,私(三日画師)です。丸田さん本人ではありませんので,その点をご理解ください。

投稿: 三日画師 | 2012年10月24日 01時46分

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