« 「のこぎり屋根は桐生市が日本一」説が覆る? | トップページ | 豪徳寺駅前に招き猫像が »

2010年6月10日

Apple iPhone 4 びっくり仰天のハードウェア

 Apple が WWDC 2010 で iPhone 4 を発表したことは,既に各種メディアで報道されている。若干Appleらしくない外観だという気がしないでもないが,手に取ってみなくても質感の良さは手に取るようにわかる(変な日本語だ)。まぁ,今までiPhone 3Gのままで我慢し続けてきた私は,ここで勝ち組になった気がした(もちろん,iPhone 4 を買うつもりは満々だ)。

Iphone_4

 機能や性能については,あちこちに既にたくさん書かれているので,それを見ることにして,あまり書かれていない機械的なところに注目してみようと思う。

 Appleのサイトの「iPhone_4のビデオを見る(英語)」を見ると,iPhone 4 が,日本の電機メーカーの常識ではほとんど考えられなかった作り方をしているのがわかる。これは,MacBookが“ユニボディ”と呼ばれる製造方法で,大量生産を続けてきたことによる技術の蓄積の賜物だと思われる。

Apple iPhone 4 びっくり仰天のハードウェア
 ステンレス製(SUS) のフレームの周囲をマシニングで加工している。簡単な治具で2段重ねで加工しているが,二つのエンドミルで2台同時に加工している。このペースで加工するとしたら,いったい何台のマシニングセンターが必要になるんだろう(もちろんそれを用意するのはEMSであってAppleじゃないけど)。

 一般的な他社製品に使用されている,プラスチックやステンレス板金プレス加工品,アルミやマグネシウム合金のダイキャストフレームの場合は,いずれも高価で精密な金型を製作し(この精密金型製造技術は日本の製造業のお家芸的なところがあったのだが,海外への流出は問題になっている),たとえば10個取りの金型にフレームの材料を押し込むことによって,ポン・ポン・ポン……と,10個ずつのフレームを大量生産することによって,低コストを実現してきた。高価な金型の製造に数週間から数ヶ月かかったとしても,金型さえできてしまえば,鯛焼きを作るように同じものを大量生産できるわけだ。

 しかし,MacBookで採用した「ユニボディ」では,マシニングセンタを使ってアルミ合金の固まりを切削し,フレームを削り出すという,従来の考え方からすれば大量生産には絶対に不適当な方法を採用したAppleである。
 iPhone 4 のフレームの周囲を2台ずつ治具で固定して削るとしても,金型プレスと違って,1000台分作るならば,500台分の加工時間がかかる。百万台なら五十万台分の加工時間……。さらに,ステンレスは一般的に加工しにくいネバい材料で,加工精度には細心の注意が必要だし,高価なマシニングセンターは占有してしまうし,とにかく大量生産には向かない製造方法なのだ。
 たぶん,国内メーカーの製造現場にこのフレームの図面を持っていったら,「大量生産品でSUSを削れと言うのか? おめえは,ちゃんと頭を使って設計しとんのか?」とだめ出しを喰らいそうな予感がする。

Apple iPhone 4 びっくり仰天のハードウェア
 マシニングセンターのエンドミルで加工できない部分は(壁に近い穴,アンダーカット……側面の穴),お得意のレーザー加工を使用している。

Apple iPhone 4 びっくり仰天のハードウェア
 iPhone 4のステンレスフレーム。細かなところにネジ止め用にボスが設けられている。Appleと同じ図面で,自社の工場や社外の加工会社にこのステンレスフレームの見積もりを依頼したら,3万円……ヘタすると10万円を超える見積もりが出てきそうだ。

 私が関わっている分野では量産という考えがほとんどないため,機器のフレームはアルミ合金の削り出しで作っている。ブロックを削るので,ブロックの9割方は削り屑になってしまうような状況だ。極限までの軽量化と高剛性を両立するのに適した方法ではあると思う。しかし,今の時代に削り出しのフレームのコストは大問題になっており,何らかの代替方法を検討している状況である。特殊なダイキャストやら何やら……。

 そんな中,Appleが切削加工でステンレスフレームを実現し,数万円の機器に使用してしまうのだから,私も含めて,大きな発想の転換が必要になっているに違いない。「ユニボディ」に次ぐ衝撃である。

 また,電気伝導率(熱伝導率も)の低いステンレスをアンテナに使う構造になっているらしい。これまた意表を突かれた。アンテナの効率はアンテナ部材の電気伝導率や導体(筐体)の幅,厚みに依存する。ステンレスをアンテナに使えば,明らかに導体損が大きくてアンテナ効率が悪そうだ。
 これは,電波が届きにくいという問題の他に,バッテリ消費を早くする原因にもなる。何かうまいアイデアがあるのかもしれない。
 Appleとしても,当初はユニボディで実績のあったアルミ合金フレームを考えたが,強度的な問題でも生じて,ステンレスを使うように仕様変更したのだろうか。

 中身にはそれほど大きな変更の無かったiPhone 4だが(通信規格も未標準化の4Gでも,中途半端な3.9Gでもなかった),メカ系のガジェット好きには堪らない魅力をかもしている。後は現在のiPhone 3Gを,具体的にどのようにiPhone 4に切り替えるかが最大の問題かな。料金プランとか,何とか割引とか,まーーーったくわかってないので。

 それから,今までカバーやケースに入れない裸のiPhone 3Gを,いつもGパンの尻ポケットに入れて持ち歩いていた。特に傷も付かないし,まったく頑丈にできていて感心する。しかし,今回のiPhone 4 は表裏両面がガラスになるという。後ろポケットに入れたまま,固いところに座ったりすると,結構あっさりひびが入ってしまうかもしれない。これはちょっと怖い。

 iPhone 3Gと併用しているDoCoMoのPROSOLID μは,実は筐体の多くの部分にステンレスを使用している。ただし,いわゆる大量生産に合わせたステンレス板金のプレス加工で,しかもその表面にあまり意味のあるとは思えない塗装を施しているため,iPhone 3Gと同様にGパンの尻ポケットに入れっぱなしにしていたら,塗装が剥がれてボロボロの外観になってしまった。
 ステンレスへの塗装は,表面に不動態皮膜がある(そのため錆びにくい)反面,塗膜の密着性に問題が生じやすい。さらに,製造現場では塗料のロット管理,塗料と溶剤の混合比率の管理,塗料を空中に出してから使い切るまでの時間の管理,使用後の溶剤の廃棄処理……等,塗料(と接着剤)は非常に嫌われる工程だ。
 Appleの最近の製品に,塗装がほとんど使われていない(と私は思う)のは,そのへんの問題点も十分に考慮した結果と言えるだろう。

Apple iPhone 4 びっくり仰天のハードウェア
 iPhone 3Gと併用して,ボロボロになったDoCoMoのPROSOLID μの外観。

Apple iPhone 4 びっくり仰天のハードウェア
 2008年8月に買ったiPhone 3G。ポケットに入れて,ほとんど肌身離さず使っているが,さすがにガラスに擦り傷が入るようなこともない。液晶保護用のフィルム(たぶん材質はPET)を貼ったりすると,ガラスよりもはるかに簡単に傷が入るので,長く使っていると細かな傷がたくさん入った見づらい液晶(もちろん液晶自体は綺麗なままだが)を見る羽目になる。昔は,液晶ディスプレイの表面にガラスや硬質のアクリルを使ったものが少なくて,すぐに傷だらけになったもんだ……(遠い目)。

Apple iPhone 4 びっくり仰天のハードウェア
 iPhone 3Gの背面のプラスチックカバーは,何やらコーティング処理がなされているようで,拡大すると細かな傷が入っているのが見える程度のヤレ具合だ。

|

« 「のこぎり屋根は桐生市が日本一」説が覆る? | トップページ | 豪徳寺駅前に招き猫像が »

ネット」カテゴリの記事

Gadget」カテゴリの記事

科学・技術」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: Apple iPhone 4 びっくり仰天のハードウェア:

« 「のこぎり屋根は桐生市が日本一」説が覆る? | トップページ | 豪徳寺駅前に招き猫像が »