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2010年4月15日

東北新幹線青森延伸のジレンマ

 JRが青森駅近くにも商業施設(青森新聞)

 12月の東北新幹線の全線開業に向け、JR東日本は6日、JR青森駅近くの青森港敷地内に、りんごをテーマにした商業複合施設を開発する、と発表した。同社は新幹線の新駅となる新青森駅内にも商業施設を造る予定だが、「青森駅周辺のにぎわい作りに行政が苦労しており、協力したい」として計画を立てたという。(別宮潤一)


 東北新幹線の青森延伸工事は順調に進んでおり,「今年12月に開業する東北新幹線八戸―新青森駅間(約82キロ)で13日、新幹線車両による試験走行が始まった(読売新聞)」。試験走行をするイースト・アイ(検査車両)の姿はテレビ中継もされた。

 ただ,東北新幹線および並行在来線の八戸以北のことを考えると,「みんなが望んだフル規格新幹線」がちっとも夢を感じさせてくれないし,実際に駅や街の状況を見ると暗澹たる気持になる。

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 ひょっとしたら,10年以上も前から三沢駅周辺などに掲げられていた「ミニ新幹線歓迎」のように,フル規格にこだわらず,ミニ新幹線にしておいたほうが青森県の各地にはメリットが多かったんじゃないかと思う。ミニ新幹線ならば,新幹線は現在の青森駅まで乗り入れることができるのだ。
 そう感じるほど,東北新幹線の八戸以北はスジの悪い路線になっているように思う。

【青森駅周辺の東北本線の変遷】
 まず,青森駅および青森駅周辺の東北本線経路の推移を見てみたい。ここは,国内でも有数の経路変更があったところで,その路線の変化を見ると,そこにドラマを感じるとともに,青森市の運の悪さを感じざるを得ない。

Photo
 [現在のGoogleマップに,路線の変更がわかるように線路跡を追加してみた]
 赤丸:青森駅(現行駅)
 緑丸:新青森駅(東北新幹線の駅と奥羽本線が交叉することになる)
 赤線:初代東北本線跡地で,現在の「旧線路通り」。当時の東北本線は単線。
    1926年(大正15年)青森操車場完成に伴う東北本線のルート変更
    に伴い黄線ルートに移設した。
 黄線:合浦公園に近い浪内(なみうち)駅,平和公園付近の浦町駅があった。
    列車が青森市内に入って,家々の間を浪内・浦町と走る姿は,旅人に
    郷愁をもたらすものだったそうだが,複線化用地の買収の困難さから,
    1968年(昭和43年)当時はほとんど建物が建っていなかった青線の
    ルートに移設することになった。
 青線:現在の東北本線のルート。青森市内の南側を大回りしている。
    敷設当時は市街地のはるか南を通るルートだったが,現在の姿を
    Googleマップの航空写真で見ると,住宅地は東北本線の南側まで
    広がっており,青森自動車道付近に達している。

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 [5万分の1地形図(昭和37年修正)「青森東部」:堀淳一著『地図を歩く』]
 昭和37年には東北本線が青線のルートを走っていることになっているが,まだ編集が追いついていないらしく,この地図には黄線ルートの浪内・浦町を走る東北本線の姿が記録されている。浦町の南側にはまだ広大な田んぼが残っていることがわかる。

【新青森駅決定の背景】
 古くから東北本線の南側には基本的に田んぼが広がっており,昭和37年の段階で,都市部分は東北本線の北側にまとまっている。
 青森市は,市街地の南端にあった東北本線を少しずつ南側に押し出しながら,市街地を拡大していった。さらに,マイカー時代となって,住宅地は東北本線の南側にまで大きく広がり,現在では青森自動車道付近にまで拡大している。一部では青森自動車道よりもさらに南側に住宅地ができていることがわかる。


 [Googleマップ]

 東北新幹線の北海道への延伸を考慮すると現青森駅に新幹線の駅を持ってゆくのは難しいというのが,国鉄時代からの説明だった。
 私は,なんとか現在のJR青森車両センター付近や,東北本線と奥羽本線の短絡線あたりに駅を持って来れなかったものか……と思っていたのだが,青森自動車道付近にまで広がった市街地(Googleマップ参照)を見ると,そこを突っ切って新幹線の線路を造るには,膨大な用地買収費用がかかり,現実的ではないと理解した。
 結局,新幹線は青森の市街地南部を迂回して,新青森駅に至る経路となった。

【コンパクトシティ青森との矛盾】
 現時点で商業施設等のない奥羽本線新青森駅に東北新幹線の駅を作ると言うことは,駅周辺を再開発すると言うことになる。大きな駐車場は必要だし,ショッピングモールもできるに違いない。
 青森市が行ったアンケート結果を見ても,県民が望んでいるのは現青森駅経由の交通(鉄道・バス)ではなく,新青森駅までを直接結ぶ交通である。
 地図を見ると,もう既に多くの区画整理事業が始まっているようだ。近くには東北自動車道の青森ICがあり,国道7号バイパスとのジャンクションもある。新青森駅が青森市の新たな核になることは間違いない。

 さて,青森市といえば「コンパクトシティ」である。郊外に散らばってしまいがちな,病院や市役所,県庁,裁判所などを商店街のある市の中心部に集中して配置し,公共交通機関と徒歩で買い物から各種手続きまでができるようにすることを目指した取り組みだ。富山市もコンパクトシティ化に力を入れていることはよく知られている。
 数年前に青森の商店街を歩いたときには,シャッター通りが消えて,街に賑わいが戻ったと言うところまでは行っていなかったが,今後の成功には期待している。

 ただ,今回,新青森駅が青森市の郊外にでき(できることは国鉄時代から決まっていたわけだが),新たな核になるということは,コンパクトシティの動きからは完全に外れてしまっている。どういう対策を採っていくのかが興味深い。
 JR東日本が現青森駅近くの青森港敷地に商業施設を作るという冒頭のニュースは,その対策の一環と言えるだろう。
 現在は,八戸から青森を経由して函館方面を結ぶ特急列車や,弘前方面から青森を経由して八戸を結ぶ特急列車が頻繁に発着する青森駅だが,東北新幹線の新青森駅が開業するとそのほとんどは消滅することになる。青函連絡船が無くなって急に賑わいが無くなった青森駅が,さらなる試練を受ける。

 ついでに言えば,青森−八戸間の並行在来線。ここが丸ごと第三セクターの青い森鉄道の運営になるわけだが,途中駅に野辺地町(人口1万4千人),東北町(1万9千人),三沢市(4万2千人),おいらせ町(2万4千人)ぐらいしかなく,JR貨物の通行量が頼りの路線になりそうだという心配がある。

 八戸−新青森をイースト・アイが試験走行をしたというニュースの日に,暗い話題になってしまった……。北海道新幹線は,新青森だけじゃなくて新函館も新小樽も,そして青函トンネルも,筋が悪いというか,上手くやらないと市民が喜べない新幹線になりそうな予感がするんだよねぇ……。

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コメント

4月18日には、試験の為に入線したE926形(East-i)が、電気系統のトラブルにより、新青森駅至近の下り本線上で長時間にわたって立往生したとか。なんだか本当に幸先悪い感じで嫌ですね。

新青森駅の位置に関しては、対北海道方面への延伸を考慮した場合、止むを得ない立地と考えなければなりませんが、それならそれで、何故に建設の初期段階から現行の青森駅及び青森市街地との連絡方法を具体的に詰めてこなかったのでしょうかね?取って付けた様な列車交換設備しかない在来線新青森駅と単線の奥羽本線、青森駅を介した津軽海峡線とのスイッチバック接続…新幹線接続の青函連絡特急だけでも捌ききれるのか?と、正直心配になってきます。

経営分離され、「青い森鉄道」に移管される東北本線八戸~青森の区間の先行きも心配です。いっそのこと、奥羽本線の弘前~青森、津軽線の青森~中小国(三厩)といった区間も「青い森鉄道」に移管し、新幹線から青森市街、弘前市街へのフィーダー輸送を全面的に同社に任せてしまった方がすっきりするし、経営健全化に繋がるのでは?などと考えてしまいます。

投稿: もりあき | 2010年4月22日 16時00分

 おっしゃる通りですね。
 在来線側は新青森駅を1面2線にしただけなんですよね。青函連絡特急を弘前−新青森(新青森始発もあり?)−青森−函館のようにスイッチバックさせるしかなさそうですけど,今から心配です。
 青森−新青森(津軽新城?)のシャトル列車……じゃ,乗り換え回数が増えて,不便すぎますよね。

 新青森駅の北側に新幹線の車両基地が作られるようなんですけど,その北端が津軽線に接してます。ちょっと妄想が入りますが,車両基地への線路を三線軌条にすると,津軽線から新青森まで線路を延ばすことができそうです。青函連絡特急は新青森から津軽線に乗り入れる……なんてのは青森市・市民が許しませんね。ダメですねぇ。

投稿: 三日画師 | 2010年4月22日 23時25分

全くです。コンパクトシティ構想の先駆事例として全国の地方都市の注目を集めている青森市の事だけに、なぜこんな肝心な所が片手落ちなの?という疑問が拭えません。新青森駅~青森市街地間のLRT構想でも俎上に上っていれば拍手モノだっただけに、残念です。

新函館駅(現・渡島大野駅)から函館市街地へのフィーダー輸送構想に関しても、恒久的な設備として新函館~函館間の標準軌乗り入れ軌道が実現したとしてもおかしくない、と、思うのですがね。

あくまで東京~札幌を最短経路で目指す北海道新幹線の構想を私は支持する立場ですが、函館~札幌、函館~東京という輸送軸線は、かなりな輸送量を見込めると想定できるものだし、主要な構想の一部として、是非具体化してもらいたいものだと考えております。

投稿: もりあき | 2010年4月23日 18時15分

 青森市のサイトの「青森市のまちづくり>くるぞ新幹線!活かすぞチャンス」の中をちょっとだけ探してみたのですが,新青森へのアクセスについての記述が見あたらないですね。青い森鉄道の新青森乗り入れとか,当然要望があっても良さそうですけど,裏では決まってるんですかねぇ。

 青森市のコンパクトシティ構想には青森市営バスが欠かせないはずなので,現行の青森駅始発のバスを,新青森から青森駅を経由して市内各地に向かうように変更するのも有効かと思ったりもするのですが,青森市がどう考えているのかが不明です。

 函館市内へのアクセスも気になりますね。「新函館」駅という名称自体でゴタゴタしている(渡島大野駅のある北斗市が「北斗」駅を主張しているそうですね)という話を聞くと,暗い気分になります。

投稿: 三日画師 | 2010年4月23日 20時42分

1968年(昭和33年)当時はほとんど建物が建っていなかった青線の・・・

和暦は(昭和43年)が正解です。
複線電化直後に新青森駅で下車して歩きましたが、確かに人家は少なかったです。
新青森駅構内のレールに1968の浮彫があるのを今月見ました。

投稿: 佐野 哲男 | 2014年9月18日 09時20分

 ありがとうございます。昭和43年に直しました。

投稿: 三日画師 | 2014年9月18日 18時02分

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