« バス<非共通>カード | トップページ | iPod nanoがやってきた »

2005年9月 4日

COLTRANE "LIVE" AT THE VILLAGE VANGUARD

Coltrane
COLTRANE "LIVE" AT THE VILLAGE VANGUARD

 コルトレーンのアルバムを1枚選ぶとなると,やっぱり強烈なライブ盤『COLTRANE"LIVE" AT THE VILLAGE VANGUARD/ライブ・アット・ヴィレッジ・ヴァンガード』は外せない。名盤といえば『A Love Supreme/至上の愛』が圧倒的だし,一般的な人気ではスタンダード・ナンバーばかりで構成されている『Ballads/バラード』が一番だが,前者はスピーカーの前で正座して聴かなくちゃならないような雰囲気があるし,後者は甘口過ぎてちょっと口に合わない。

 マイルス・デイヴィスのバンドでモード・ジャスを学んだコルトレーンは,独立して作った自己のバンドでもモード・ジャスの表現を突き詰めていった。マイルスが音をどんどん少なくし,音と音の間に何かを表現する方向に進んだのに対して,コルトレーンは音と音の間に音を詰め込む(いわゆるシーツ・オブ・サウンドである)という正反対の方向に進んだことは非常に興味深い。アルバム『Giant Steps』でモード・ジャズのひとつの頂点を作り上げたコルトレーンは,その後フリー・ジャズの世界に突入していくのだが,この『"LIVE" AT THE VILLAGE VANGUARD』はその転換点を記録したアルバムである。

 まず1曲目のSpiritualは,タイトルそのままに黒人霊歌的な祈るような曲だ。かといって『A Love Supreme』のような,ピーンと張りつめた緊張感で息が詰まるような音楽ではない。ゆったりとしたリズム(エルヴィン・ジョーンズの粘るようなノリのドラムがたまらない)に乗ったコルトレーンのサックスは意外なほどにメロディアスであり,ところどころにフリー・ジャズ風のアバンギャルドなフレーズが混じる。
 続いて登場するのがエリック・ドルフィーのバス・クラリネット。ドルフィーのアバンギャルドな演奏はコルトレーンより先を行っているように聞こえる。馬のいななきのような独特のフレーズは手癖のようになっていて,「また出た」感がしないでもないが,ある意味でそれがドルフィーを特徴づけている。
 マッコイ・タイナーのピアノ・ソロの後,コルトレーンはソプラノ・サックスに持ち替えて再登場する。1960年以前のジャズではソプラノ・サックスはあまり一般的な楽器ではなく,演奏者といえばシドニー・ベシェぐらいしか思い浮かばないのだが,コルトレーンが『My Favorite Things』でソプラノ・サックスを使ってからはテナーの持ち替え楽器として一般化したように思う。

 2曲目はSoftly As In A Morning Sunrise。邦題は「朝日のようにさわやかに(朝日の如くさわやかに)」である。古いミュージカルの挿入歌で,MJQ(The Modern Jazz Quartet)の『Concorde』やWynton Kellyの『KELLY BLUE』,Sonny Rollinsの『A night at the "Village Vanguard"/ヴィレッジ・ヴァンガードの夜』などの演奏でも有名だ。
 演奏はマッコイ・タイナーのピアノによるテーマ演奏で始まる。ドラムのエルヴィン・ジョーンズはスティックからブラシに持ち替え,レジー・ワークマンはしっかりしたウォーキング・ベースでサポートする。
 このままピアノ・トリオの演奏で終わるのかと思い始めたところで,やっとコルトレーンのソプラノ・サックスが出てくる。このソロが凄い。コルトレーンは,あっち(フリー)の世界へ行きそうになりつつ寸前で踏みとどまる。伝統的ジャズしか認めないファンからは「ちっとも『さわやか』じゃない」と非難され,フリー・ジャズの側からは「中途半端」と非難されそうな微妙な位置が,個人的にはとても気持ちいい。

 そして3曲目,Chasin' The Trane。LPだとB面全体をこの一曲が占める。マッコイ・タイナーが抜けたピアノ・レス・トリオでの演奏で,最初から最後までコルトレーンがテナーを吹きまくる。録音技師のルディ・ヴァン・ゲルダーがマイクを持って,ライブ中にテナーを吹きながら歩き回るコルトレーンを追いかけたことからこの曲名が付いたそうだが,あまりの激しい演奏にコルトレーンの汗が飛び散ってきそうな迫力である。
 実はまだ若かった頃はこの演奏があまり好きではなく,いつもA面ばかり聴いていたのだった。ジャズ評論誌を読むと圧倒的にChasin' The Traneの評価が高く,それが不思議でたまらなかったのだが,最近はなんとなくその理由がわかってきたような気がする。

COLTRANE "LIVE" AT THE VILLAGE VANGUARD / John Coltrane (Impulse! A-10)
John Coltrane, tenor sax, soprano sax; Eric Dolphy, Alto sax, bass clarinet; McCoy Tyner, piano; Reggie Workman, bass; Elvin Jones, drums
1. Spiritual
2. Softly As In A Morning Sunrise(朝日のようにさわやかに)
3. Chasin' The Trane
Recorded at The Village Vanguard, NewYork on November, 1961

【参考】

A Love Supreme/至上の愛
Recorded on December 9, 1964


Ballads / John Coltrane
Recorded between December 21, 1961 and November 13, 1962


Concorde / the Modern Jazz Quartet
Recorded in 1955


KELLY BLUE / WYNTON KELLY
Recorded in New York on February 19, 1959


Night At The Village Vanguard / Sonny Rollins
Recorded on December 16, 1956

|

« バス<非共通>カード | トップページ | iPod nanoがやってきた »

音楽」カテゴリの記事

コメント

なかなかえらく面白い感じの人にぶち当たった感じです。(;一_一)

写真MLでお世話になってます。
専門的なブログですね。
よろしく。

投稿: moko | 2005年9月 9日 14時13分

 mokoさん,コメントありがとうございます。
 興味の対象が普通の人と違っていると,ぜんぜん専門的じゃないのに「専門的」に見えるようです。
 MLでもよろしく願いします。

投稿: 三日画師 | 2005年9月10日 21時50分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: COLTRANE "LIVE" AT THE VILLAGE VANGUARD:

» Jhon Coltraine『Live At The Village Vanguard』 [kumac's Jazz]
 ジョン・コルトレーンのインパルス移籍後の初ライブアルバムがこの『ライブ・アット・ヴィレッジ・バンガード』である。自己の表現方法を追求し、なおかつバンド音楽性を高めている過程の中で、エリック・ドルフィーという天才に曲のアレンジなどをまかせ、コルトレーンは大いな... [続きを読む]

受信: 2005年9月30日 07時12分

« バス<非共通>カード | トップページ | iPod nanoがやってきた »