« PANGAEA / MILES DAVIS | トップページ | DIALOGUE / Bobby Hutcherson »

2005年2月26日

PIKE'S PEAK / The Dave Pike Quartet

pikes_peakm
PIKE'S PEAK / The Dave Pike Quartet

 ヴァイブラホンのデイヴ・パイク,渾身の一作である。録音は1961年11月。CDが発売されるまでは復刻盤のレコードが発売されず,長い間幻の名盤として有名だったアルバムだ。友人の兄貴が持っているレコードを聴かせてもらって虜になっていた私は,このレコードを捜して中古レコード屋をあさりまくった時期がある ──結局バカ高いオリジナル盤以外にお目にかかることはなかったが──。そんなこともあってCDが発売されたときには大感激だった。
 人気のピアニスト,ビル・エヴァンスが加わっていることもあって,デイヴ・パイクの生涯最高──アルバム名の通り生涯のピーク──のアルバムと言われることが多い。ジャズファンにはPIKE'S PEAKのみの一発屋と思われがちだが,若い人にはジャズ・ロック系のユニット,Dave Pike Setの「Noisy Silence - Gentle Noise」のほうがなじみがあるかもしれない。
 ちなみに,PIKE'S PEAKはロッキー山脈の名峰であり,4000mを越える山頂まで登山鉄道で登ることができることで有名だ。その昔,西部開拓時代に何とかパイクという人が見つけた山ということで,PIKE'S PEAKという名前が付いたそうだが,まことに尊大でイヤな話である。

 さて,1曲目のWhy Notは急速調で緊張感のあるドラムとベースの4ビートで始まる。ウォルター・パーキンスのリムショットが印象的だ。そして,デイヴ・パイクのバイブがテーマを叩き,すぐにビル・エヴァンスがそれに絡んでくる。このピアノの絡み方がまことに見事だ。ビル・エヴァンスというピアニストは,いわゆる「甘いメロディアスな演奏」「オシャレなBGMとしてのジャズ」の象徴のような存在であり,ピアノ・トリオの演奏は大人気である。個人的にはジャズがオシャレな音楽だとは思えないこともあって,今ひとつ魅力を感じないピアニストなのだが,このアルバムやマイルス・デイヴィスの「Kind of Blue」のように,脇役として加わったアルバムでの演奏は,かなり硬派な印象があって大好きである。あらためて彼のピアノ・トリオの演奏を聴き直してみれば,単にメロディアスなピアニストでないことはわかるのだが,すでにちまたで形成された印象をぬぐい去るまでに至らないのが残念かもしれない。
 Why Notは作曲がデイヴ・パイクとクレジットされているが,ジョン・コルトレーンのImpressionsとメロディが同じことはよく知られている。また,同じWhy Notというピート・ラロッカの曲が『幻のテナー』ロッキー・ボイドの「Ease It」というアルバムに入っていて(私は未聴),これもImpressionsと同じメロディになっているらしい。いずれも録音年が1961年であり,どういう事情なのかは不明である。

 2曲目はエリントンの名曲,In A Sentimental Moodである。Why Notが急速調だったためスローなテンポに感じるが,案外ミディアムなテンポである。テーマをデイヴ・パイクが演奏し,そのままアドリブに入るパターンは1曲目と同じ。ここまで聴くと,気になる人は気になるのがデイヴ・パイクの唸り声。国内版のCDには「メロディをハミングしながらバイブを叩く」というふうに柔らかな書き方をしているが,どう聴いても唸り声である。演奏しているデイヴ・パイクの情感が伝わってくる感じがして,個人的には唸り声は大好きである。

 4曲目は,超有名なラテン・ナンバーであるBesame Mucho(ベサメ・ムーチョ)。Besame Muchoといえばアート・ペッパーの演奏があまりに有名であるが,このアルバムの演奏はそれに勝るとも劣らない名演である。哀愁のあるメロディが心に染み渡る。デイヴ・パイクの唸り声を絞り上げるようなアドリブを聴いていると,思わず涙腺が弛んでしまうので電車の中など他人の目があるところで聴くときには気をつけなければならない。それにしても,デイヴ・パイクもビル・エヴァンスも,アドリブで魅力的なフレーズが湯水のように出てくるのだから恐れ入る。

# 蛇足だが,Amazonのサイトではアルバム名が「デイヴ・パイク・カルテット with ビル・エヴァンス」となっているが,ビル・エヴァンスはカルテットの一員なので,「with」というのは変だ。ビル・エヴァンスは有名だからということで,売りたいがためにその名前を利用しようとするメーカーの嫌らしい魂胆を感じる。ま,CDショップによっては,このアルバムがビル・エヴァンスのコーナーに入っていることもあるぐらいだから,仕方ないか……


PIKE'S PEAK / The Dave Pike Quartet

Dave Pike, vibraphone; Bill Evans, piano; Herbie Lewis, bass; Walter Perkins, drums
1. Why Not
2. In A Sentimental Mood
3. Vierd Blues
4. Besame Mucho
5. Wild Is The Wind
Recorded on November, 1961, NewYork

【参考】

Noisy Silence - Gentle Noise / The Dave Pike Set

|

« PANGAEA / MILES DAVIS | トップページ | DIALOGUE / Bobby Hutcherson »

音楽」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: PIKE'S PEAK / The Dave Pike Quartet:

« PANGAEA / MILES DAVIS | トップページ | DIALOGUE / Bobby Hutcherson »